ぷかぷか日記

1000万円を夢見て

  • 1000万円を夢見てーその3
    岩佐賞の資料。ぷかぷかは具体的にどんなことをやり、それがどのようにして持続可能な未来につながるのかの説明です。  ぷかぷかの法人理念は 1)障がいのある人たちといっしょに生きていく。 2)健康な命を未来に引き継ぐ。 の二つです。 1)障がいのある人たちといっしょに生きていく。  ぷかぷかは、何もしなければ取り残されたかも知れない障がいのある人達といっしょに街の中でお店をやり、社会を楽しく、豊かにするものをたくさん作ってきました。理屈っぽい話抜きに、彼らといっしょに生きていくと楽しいね、いっしょに生きていった方がいいね、と思う人がぷかぷかのまわりにどんどん増えてきました。持続可能な未来がここから見えてきます。(文中の「ぷかぷかさん」はぷかぷかで働く障がいのある人達のこと) ぷかぷか三軒⻑屋(右からパン屋、お惣菜屋、アートスタジオ) ●お客さんもぷかぷかさんとのおつきあいを楽しむ  パン屋の店先ではときどき畑班の作った大根などの野菜を販売しています。ある日、その大根のラベルに「たいこん」と書いてありました。ぷかぷかでは、これまちがってる、とはいいません。「あ、おもしろいじゃん、今日はこれで行こう」となります。    「大根下さい」とお客さんがきました。「すみません、今日はたいこんです」といいます。お客さんもよくわかっていて、ラベルを見て、「ああ、今日はたいこんね。じゃ、たいこんください」と楽しんでいます。お客さんとのそういう関係がぷかぷかにはあります。  こんなお惣菜が出ることもあります。  お客さんは一目で納得してこれを楽しんで買っていきます。  お客さん達は買い物をする中で、自然に彼らといっしょに生きていく楽しさを実感しています。  そんな関係がこんな笑顔を生みます。 子どもたちも笑顔になります。  子どもたちが大きくなって、社会を担うようになった時、どんな社会を作ってくれるのだろう、と楽しみです。持続可能な未来を子どもたちが作ってくれます。 ●小学校で人権研修会  近くの小学校から人権研修会を依頼された時は、芸達者なぷかぷかさんを三人ほど連れて行きました。太鼓の名人、ダンスの名人、暗算と記憶の名人の三人です。  太鼓の名人は日本フィルハーモニーのチェロ奏者と共演するほどの名人で、その日はソロの演奏でしたが、子どもたちを圧倒しました。      ダンスの名人は自分でダンスを踊ったあと、子どもたちも誘ってみんなで楽しくダンスをしました。  暗算の名人が登場した時は、暗算の得意な生徒と先生に5人ほど前に出てきてもらい、トレーに乗せた10個ほどのパンの値段をぷかぷかさんと競争で暗算してもらいました。スキャンするほどのスピードで暗算するぷかぷかさんの圧倒的勝利でした。  記憶の名人は、2年生の教科書に出てくる『ふきのとう』という作品を朗読しました。名人の年齢から計算すると30年ほど前にならった教科書です。それをついさっき習ったかのようにスラスラ朗読したのです。2年生の生徒はもちろん、先生も朗読なんかできないので、みんなほんとうにびっくりしていました。  障がいのある人たちはいろんなことができない、だから私たちが何かやってあげないといけない、といったイメージが一般的ですが、そんなマイナスのイメージを見事にひっくり返した人権研修会でした。  障がいのある人達との新しい関係がここから始まります。「取り残さない」といった関係ではなく、彼らからいろんなことを学ぶ関係です。持続可能な未来がここから見えてきます。 ●大学でワークショップ  ぷかぷかさん達と一緒にあちこちの大学に行ってワークショップをやることもあります。感性豊かな学生さんがどんどん変わってきます。  「こんなに自由に生きてていいんだ」と感想を書いた学生さんがいました。一緒に演劇ワークショップをやり、ぷかぷかさんの発想の豊かさに驚いた学生さんもたくさんいました。  障がいのある人たちといっしょに生きる意味がよくわかったと思います。何かを教えるというよりも、彼らから学んだことの方が多かったと思います。社会に出たあと、この体験が、障がいのある人達と一緒に持続可能な未来を作る上で、確実に役に立ちます。 ●パン教室  パン教室は楽しくパンを作りながらぷかぷかさんと出会います。  たくさんの子どもたち、大人達が、楽しいパン教室の中でぷかぷかさん達と出会いました。「ともに生きる社会を作ろう」とお題目を唱えるのではなく、こうやって具体的に出会う場を作ることこそが、持続可能な未来を確実に作っていきます。   ●区役所で人権研修会  あちこちの区役所で人権研修会を頼まれます。そんなときはぷかぷかさん達といっしょに行きます。人権に関する抽象的な話をするのではなく、人権がないがしろにされることの多い障がいのある人達としっかり出会う研修会です。 一緒に手をつないで走ること、それは誰にとっても楽しい時間です。たったそれだけでぷかぷかさんと出会うことができます。 思いっきり力を入れる中で、相手と出会います。 演劇ワークショップの中で、ぷかぷかさんの表現の豊かさに出会います。 ぷかぷかさん達のおかげで心と体がどんどん自由になっていきます。  参加した人達の感想 ・短い時間でしたが、一緒に泣いたり、笑ったり、とても楽しい時間でした。 ・みなさんの素直に自分を出す姿が、本当にキラキラしていました。 ・同じグループになった女性のメンバーに「区役所にも障害のある人はいるの?」「あなたはどんな障害があるの?」といきなり聞かれ、すごく新鮮でした。僕は歩行障害があるのですが、ダイレクトに聞かれることが年々減っていく中で、「おお!」という気持ちをもらいました。今度ぷかぷかに行ってみようと思いました。メンバーのみなさん、ありがとう! ・みなさんの屈託のない笑顔でほんわりとした気持ちになりました。 ・自由な開放された気分になる瞬間がありました。 ・ぷかぷかさん達の持っている想像力や素直さは自分もこれから見習っていこうと思いました。 ・人権についてぷかぷかさんとふれあうことで、より身近に深く考えることができました。 ・ぷかぷかさんとのワークショップが楽しかった。「いっしょにいた方がトク!」はその通りだと思った。 ・いっしょに生きる、暮らすことの大切さをあらためて感じました。 ・「関わってみると、世界観が広がってトク」という表現は、とてもよいと思いました。  得るものの多い人権研修会だったと思います。行政の人達が変わることは、持続可能な未来を作っていく上で、とても大事なことです。今回はとても手応えのある人権研修会だったように思います。 ●演劇ワークショップ  ぷかぷかさんと地域の人達で演劇ワークショップをやっています。6ヶ月かけて芝居を作り、大きなホールの舞台で発表します。一目で「障がいのある人たちとはいっしょに生きていった方がいいね」と思えるような舞台を作ります。 ●アートワークショップ  地域の子ども達や大人達と一緒にアートのワークショップを行います。アートを通して地域の人達がぷかぷかさんと出会います。彼らの持っている発想の豊かさ、自由さに出会います。彼らがいると、社会が豊かになることがリアルにわかります。 2)健康な命を未来に引き継ぐ。  ぷかぷかは、健康ないのちを未来に引き継ぐことを理念として掲げています。いのちが健康でなければ、健康な未来を描けないからです。  健康ないのちを未来に引き継いでこそ、持続可能な未来を描くことができます。健康ないのちは、健康な社会を作ります。未来を生きる子どもたちには、健康ないのちと、健康な社会を生きて欲しいと思っています。  そのためにぷかぷかは、パン屋、お惣菜屋、食堂では安心、安全な食材を使い、みんなのいのちを傷つけないように細心の注意を払っています。  福祉のお店によくある「障害者が作ったから買ってあげる」という関係ではなく、「おいしいから買う」という当たり前の関係をぷかぷかは作っています。「おいしい」というのは普遍的な価値であり、その価値こそが持続的な未来を作っていきます。 ●パン屋  パン屋では国産小麦、天然酵母でパンを作っています。天然酵母はあこ天然酵母と、干しぶどうを発酵させた自家製天然酵母を使っています。自家製天然酵母はハード系のパンを作ります。  塩は天日製塩で作ったものを使っています。添加物は一切使いません。生地には牛乳、たまご、バターなども使いません。アレルギーの子どもにも安心して食べて欲しいからです。材料で使う野菜は、農薬を使わないぷかぷか農園、でんぱたの畑、地域の農家さんが作っている野菜を使っています。  保育園に配達するロールパンは、小麦粉、酵母、塩、少量のきび糖、菜種油、水だけで作っています。甘いもので飾ったパンが多い中、子どもたちにはシンプルなロールパンで小麦粉そのもののおいしさを伝えたいと思っています。未来を作るのは子どもたちです。環境に負荷をかけないシンプルなパンこそ、持続可能な未来を作ります。       ●お惣菜屋  食材・調味料は、なるべく生活クラブのものを使用。  野菜に関しては、地場の野菜を使用するようにし、旬の恵みをいいただけるようにしています。でんぱた(ぷかぷかの運営する生活支援事業所。農業をやっている)、ぷかぷか農園、グリーン(農業をやっている生活支援事業所)さんのお野菜も利用しています。  召し上がっていただく方々の健康の安心としては、出汁(椎茸・昆布・鰹節)を丁寧に取ることで、調味料を少なく薄味に仕上げることが出来るように心がけています。  使用する味噌も惣菜で手作りをしています。  お弁当箱に関してもSDGsの精神の元、プラスチック容器から竹バガスや麦バガスを使用した地球に優しい容器に変更しています。 ●楽しいお弁当  たとえば高齢者の配食サービスに持っていくお弁当の帯はぷかぷかさん達(ぷかぷかで働く障がいのある人達)が絵を描いています。   こんな帯があると、お弁当の時間が楽しくなります。お弁当の時間が楽しくなるって、幸せなことだと思います。ぷかぷかさん達はその幸せな時間を高齢者の方達にプレゼントしているのです。  お弁当食べたあとも、この帯だけはちょっと捨てられないな、と思うくらい楽しい帯です。こんな絵を描く人は社会にいた方がいいよね、と素直に思えます。  たかが弁当の帯です。でも、この小さな帯が、障がいのある人達への偏見、思い込みをひっくり返してしまうほどのチカラを持っています。障がいのある人達を「取り残さない」ではなく、「いた方がいい」と思いが前向きになります。それは障がいのある人たちもいっしょに生きていく持続可能な未来を作るチカラだと思います。 ●焼き菓子  焼き菓子のラベルはぷかぷかさん達が作っています。これがあることで楽しい焼き菓子になっています。おやつの時間が楽しくなります。ここからこの社会を持続させていこう、という気持ちが生まれます。 ●区民祭り  区民祭りでは地産地消のブースを担当し、お惣菜部門で地場の材料を使っておから煮を作り、配布しました。ブース自体もぷかぷかさん達と一緒に楽しくデザイン。地場の材料を使うレストランの地図もぷかぷかさん達が製作し、ブースの横に展示しました。この地図は後日区役所のロビーに展示されました。  彼らといっしょに生きると楽しいね、というメッセージをこのブースを通して発信できました。何よりも、彼らがいると、暮らしが豊かになることが伝わったと思います。暮らしが豊かになることは、持続可能な未来を推し進めるいちばんの原動力 です。
  • 1,000万円を夢見てーその2
     1,000万円を夢見て岩佐賞にチャレンジ。 「混迷を極める現代社会、その困難な局面だからこそ、持続可能な未来を目指して果敢に取り組む人を応援したい」 という岩佐賞。こういうのは月並みな取り組みではダメです。オリジナリティーがあって、かつ元気な取り組みです。  ぷかぷかは持続可能な未来を目指して新電力に切り替えたり、お弁当のプラスチック容器を紙容器に変えたり、ナイロン製品に代わるヘチマを販売したりしていますが、もっと根本的な大きな取り組みはないものかといろいろ考え(1,000万円がかかっていると、いろいろ考えるものです)、出てきたのが前回のブログです。 www.pukapuka.or.jp   つまり、ぷかぷかの理念そのものが持続可能な社会を作り出している、ということです。  で、申請書にその取り組みの概要を書いてみました。  NPO法人ぷかぷかは知的障がいの人たちを対象にした就労支援の事業所です。ぷかぷかは創業者の高崎が養護学校の教員をやっている時に、知的障がいの子どもたちに惚れ込み、彼らといっしょに生きていきたいと、退職金をはたいて作った事業所です。  彼らと出会った経験を元に、 「障がいのある人たちとはいっしょに生きていった方がいいよ、その方がトク!」 と言い続けてきました。トク!というのは、彼らとおつきあいすると毎日が楽しく、人間の幅が広がり、人生が豊かになる、という意味です。  なので、お客さん達に彼らに出会って欲しいと、彼らの魅力を存分に発揮できるお店(パン屋、お惣菜屋、食堂、アートスタジオ)を作り、たくさんの素敵な出会いを作り出しました。「ぷかぷかさんが好き!」(ぷかぷかで働く障がいのある人達のことをぷかぷかさんと言います)というファンまで現れました。障害者はなんとなくいや、怖い、生産性が低い、と彼らを排除することの多い社会にあって、彼らのファンができたことは画期的なことだと思います。  お店以外の出会いの場も作ろうと、パン教室や、演劇ワークショップ、アートワークショップなど、一緒にクリエイティブな活動をする機会もたくさん作ってきました。演劇ワークショップでは、一目で「彼らとはいっしょに生きていった方がいいね」と思えるような舞台をたくさん作ってきました。  彼らは支援が必要な人ではなく、街を耕し、社会を豊かにするとても大事な存在です。  SDGsの理念に「誰一人取り残さない」というのがありますが、ぷかぷかは障がいのある人達を取り残さないだけでなく、彼らと一緒に社会を豊かにするものを作り続けてきました。それは「誰一人取り残さない」理由を明確に示すものであり、「誰一人取り残さない」の理念をもう一歩進めるものであると思います。  こんな楽しいラベルのついた商品ができること、それが彼らといっしょに生きること。   彼らがいないと、こんな楽しいラベルはできません。彼らは社会を楽しくする。楽しい社会こそ、持続可能な未来を作っていくのだと思う。
  • 1,000万円を夢見て
    「SDGs岩佐賞が、あなたの活動を応援します」と、先日大きく新聞広告が出ていました。ネットで見ると  新型コロナウイルスの感染拡大、そして先行きの見えないウクライナ情勢と、ますます混迷を極める現代社会。あと8年で期限を迎えるSDGs(持続可能な開発目標)の達成は、これまで以上に難しいものになりつつあると言えるでしょう。 そんな困難な局面だからこそ、持続可能な未来を目指して果敢に取り組む人を応援したい──。公益財団法人岩佐教育文化財団は、そんな思いから、2022年5月、「SDGs岩佐賞」を創設しました。〈医療〉〈教育〉〈福祉〉〈環境〉〈平和〉〈芸術〉〈農業〉の各分野で、SDGsの達成に向けてめざましい功績を残した団体・個人を選出し、支援します。  なんと団体に300万〜1,000万円も出すそうで、こりゃ応募しなきゃソン!と思いましたね。  SDGsの理念は「誰一人取り残さない」。その理念をどんな風に実現しているのか、ということなんだろうと思います。  ぷかぷかは、「障がいのある人たちとはいっしょに生きていった方がいいよ」「その方がトク!」と言い続けてきました。ぷかぷかの活動は、それをそのまま実践することでした。彼らといっしょに生きると社会が豊かになる、ということを目に見える形で表現してきました。  ヨッシーは「おひさまの台所」のメニューを毎日こんな風に描いてくれます。  いっしょに生きると、毎日こんな楽しいメニュー表が上がってくるのです。スタッフが描いたのではこんなメニュー表はできません。  テラちゃんは映画『梅切らぬバカ』の写真を元にこんな楽しい絵を描いてくれました。  絵を描いてくれたぷかぷかさん達と一緒に『梅切らぬバカ』の上映会をやります。映画を手がかりに「やまゆり園事件」についてみんなで話す集まりですが、私たちだけで事件について話をすると、どうしても重い雰囲気になってしまいます。でも、こんな絵を描いてくれる人たちといっしょに話すので、重い雰囲気になりようがなく、ひょっとしたら今までにない展望が開けるのではないかと思っています。  彼らは社会を豊かにする存在だとつくづく思うのです。  SDGsの理念は「誰一人取り残さない」ですが、ぷかぷかは、取り残さないだけでなく、いっしょに生きて社会を豊かにする、というところまでやっています。なので、SDGsの理念よりも、もう一歩先へ行ってる気がします。  そういったことを「SDGs岩佐賞」の応募用紙に書こうと思っています。1,000万円を夢見て。
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