彼らがいることでみんなが生きやすい社会になります。それって、豊かで素敵なこと。
パン屋に古い新聞の切り抜きがはってあります。やまゆり園事件から1年目にぷかぷかを取材し、書かれたものです。とてもいい記事なので紹介します。 一線は越えないにせよ、事件前から社会の中に「障害者は負担だ、お荷物だ」という考え方や「なんとなく嫌」という風潮はあったと思います。たとえばバスの中で障害者と乗り合わせた時「こっちに来ないで欲しい」と感じてしまったことはありませんか。 小学校の時から、障害の有無でわけられることが当たり前になっています。何かの機会がなければ、障がいがある人とおつきあいすることはなく、彼らのことはわかりません。ただ「なんとなく嫌だな」というイメージだけが一人歩きします。 措置入院や優生思想に関する議論ももちろん大事です。でも、それらが私たちの普段の暮らしとどれだけ接点がある問題かというと、とたんにボヤッとして「私には関係ない話」で終わってしまいます。大切なのは、日々の生活の中で関係性を作っていくことだと思うのです。 2010年、横浜市緑区の団地の商店街にオープンした「ぷかぷか」では知的障がいの人たちが40人ほど働いています。お店の運営以外に地域の人とぷかぷかさんが一緒に楽しめるパン教室を開いたり、地域の人とぷかぷかさんが一緒になって芝居作りをする演劇ワークショップをやったりしています。 そこでは、支援する側・される側という立場の違いはありません。「障害者への理解を」といった目的もありません。純粋に人間同士、ただ一緒に何かをする中で関係性が育っていきます。 事件の被告はどうだったのでしょう。障がいのある人ときちんと「人として」おつきあいしていたのでしょうか。障がいのある人達のことをよく知らないまま、ふくらんだマイナスのイメージが爆発して事件に至ったのではないでしょうか。 「ぷかぷか」のブログには、事件について考える投稿がたくさんあります。事件には憤りを感じます。批判したいこともたくさんあります。でも、批判しているだけでは新しい一歩を踏み出せません。前に進む。それが生きているということだと思います。 いつも発信しているのは「障がいのある人たちとはいっしょに生きていった方がいいよ」というメッセージです。「共生すべき」「差別はいかん」みたいな堅苦しいものではなく、「いっしょに生きていく方が人生お得だよ、楽しいよ」という感じです。 うらやましいほど自由だったり、あっという間に人の気持ちをほぐしたり。彼らはそうやって街を耕しています。彼らがいることでみんなが生きやすい社会になります。それって、豊かで素敵なことだと思うのです。