たかが詩の朗読ですが…
昨日、区役所で精神障害の人達の集まりがあり、詩の朗読ワークショップをやりました。 統合失調症の方が多く、なんとなく重い雰囲気。場を盛り上げないと詩の朗読まで持って行けないので、「マルマルマル」と「雨の音楽」を歌いました。 「マルマルマル」はこんな風にして隣の人の膝に触れながら歌います。歌に併せて隣の人の肩に触れたり、自分の鼻と耳を同時にさわったりしているうちに心と体が自然にほぐれてきます。 みるみるこんな笑顔になります。 オペラシアターこんにゃく座の「雨の音楽」も歌いました。歌詞の合間に手拍子を入れ、みんなぐんぐん元気が出たようでした。 www.youtube.com 体と心が少しほぐれた後、いよいよ詩の朗読。長田弘さんの「ふろふきの食べ方」です。 自分の手で、 自分の 一日をつかむ。 新鮮な一日をつかむんだ。 スが入っていない一日だ。 手に持ってゆったりと重い いい大根のような一日がいい。 それから 確かな包丁で 一日をざっくりと厚く切るんだ。 日の皮はくるりと剥いて 面取りをして、そして一日の見えない部分に隠し刃をする。 火通りをよくしてやるんだ。 そうして深い鍋に放り込む。 底に夢を敷いておいて、 冷たい水をかぶるくらいさして、 弱火でコトコト煮込んでゆく。 自分の一日をやわらかに 静かに熱く煮込んでゆくんだ。 こころさむい時代だからなぁ。 自分の手で、自分の 一日をふろふきにして 熱く香ばしくして食べたいんだ。 熱い器でゆず味噌で ふうふういって。 この詩を模造紙に書いて壁に貼り、まずは全員で一人一行ずつ読みます。そのあと二グループに分かれ、今度は相手グループに向かって読みます。漠然と読むのではなく、目の前に言葉を届ける相手がいると、読む時の気持ちが変わってきます。ここが朗読のおもしろいところです。 「なんか、すっきりした」 と感想を言った方がいました。朗読する、つまり自分を表現することがどういうことなのか、をとてもうまく語っています。 誰かに向かって読む 2回ほどこの朗読を繰り返したあと、 「一人で読んでみたい方がいましたら手を上げて下さい」 というと、なんと4人もの人が手を上げてくれました。一人ずつ堂々とみんなの前で朗読しました。 統合失調症という大変な障害を抱え、週一回のこの集まりに出てくるだけで精一杯という人が多いと聞きました。なのに、ワークショップの最後、みんなの前で朗読する人が現れたのです。ちょっとびっくりでした。 たかが詩の朗読です。でも、それは人の心を揺り動かし、人生を少しだけ前に進めるほどのチカラがあるのだと思いました。 ※文中の写真は東洋英和女学院大学と創英大学でのぷかぷかのメンバーさんと学生さんとのワークショップの様子です。 ※文中の動画はオプラシアターこんにゃく座さんのものを許可をとり載せています