ぷかぷか日記

第5期演劇ワークショップ

  • タヌキの得意技はスカートめくり
      第五期の演劇ワークショップが始まりました。新しいひともたくさん加わり、にぎやかなワークショップになりました。  自分の名前をいいながらパフォーマンスをするのも、全員がやるとけっこうな時間がかかりました。  人間じゃんけんはグループに分かれ、体全部でじゃんけんをします。今回は単純に「グー、チョキ、パー」でやりましたが、次回は「サムソンとデライラ」という怪しげなじゃんけんをやります。  久しぶりにタカサキによるギブ・ミー・シェイプをやりました。場を熱くすること、お互いの関係を作ること、その場でお話を作って演じること、などを大事に、気合いを入れてやりました。  4グループに分かれ、体を使って舟を作ります。その舟を動かします。はじめは凪ぎ。風が吹いてきて、だんだん強くなり、嵐になり、木の葉のようにもみくちゃにされた舟はついに沈みます。それを体を使って表現します。  次はライオンを表現します。昼寝をしているライオンの前をナメクジがやってきます。ものすごく臭いおならをするナメクジとか、ちょっと色っぽい這い方をするナメクジとか、ナメクジの特徴を考えながら作ります。  ナメクジの特徴がはっきりしませんでしたが、みんなすごく楽しそうにやっていました。こういう盛り上がりがいいですね。こういうことを繰り返して、お話作りに慣れてもらえたら、と思っています。  30年ほど前、ワークショップの仲間で、街頭で台所のスポンジを使った人形で芝居を作ったことがあります。地域の子ども達と養護学校の生徒達でやったのですが、みんなワークショップで芝居作りに慣れていたせいか、あっという間に作ってしまいました。 今のワークショップ集団が、これくらい力をつけてくれるといいなと思っています。  『ほらクマ学校を卒業した三人』のイメージをますむらひろしさんのマンガで伝えました。「赤い手長のクモ」「銀色のナメクジ」「顔を洗ったことのないタヌキ」がどういうものなのかだけを伝え、そこを手がかりに三人のイメージを作っていこう、というわけです。  この絵の三人に 「なんでもいいから 一番にな〜れ」 と教えたほらクマ学校の教育理念そのものがおかしいのですが、そのおかしさをどう表現するか、というところが今回の勝負所です。  安見ちゃんのピアノで歌を歌いました。谷川俊太郎の詩『うんこ』にこんにゃく座の萩京子さんが曲をつけたものと、ほらクマ学校の校歌です。 はじめて歌ったので、まだまだという感じですが… www.youtube.com お昼を食べたあと、午後にやったデフパペットシアターひとみの善岡さんは「ほらクマ学校を卒業した三人」の特徴をみんなで考えるワークショップをやりました。 こんな特徴が出てきました。   得意技にスカートめくりが出てきたり、ナメクジはビールが好きなんじゃないか、といった意見が出たり、弱点は女の子、が出てきたり、楽しい特徴がたくさん出てきました。  これを元に、なんでもいいから一番になるために何をやったらいいか、をテーマに簡単なお芝居を作りました。  あるグループは、便秘を治す薬を売る、という提案をしました。1セット1万もする高価な薬でしたが、これでぼろもうけして一番になったとしても、あんまり豊かな気持ちにはなれないなぁ、という気がしました。  一番になって、なおかつ豊かな気持ちになれるものってなんなんだろう。  生産性の高さで競うのではなく、もっとちがう価値で競う。  ぷかぷかさんの一人がエアロビで一番を目指します、といってましたが、これは生産性とはちがう価値です。あるいは参加者の一人が、今まで一番になろう、なんて思ったことがなかったけれど、今度は一番になれるものを探したい、と発言された方がいました。今までそういった競争から外れてきた人もいたんですね。  「なんでもいいから 一番になーれ」 は、ちょっと角度を変えて考えてみると奥が深い言葉のように感じました。  今後の展開が楽しみです。  芝居の発表会は来年1月27日(日)です。
  • 「生産性」とはちがう評価軸を持った文化を創り出す
     8月18日(土)から第五期演劇ワークショップが始まります。  演劇ワークショップは障がいのある人たちと地域の人たちが一緒になって芝居を作る活動です。何かをやってあげる、という上から目線ではなく、どこまでも彼らとフラットな関係で、一緒に芝居を作ります。彼らと一緒に新しいものを創り出すのです。 「彼らがいないとできないもの」 「彼らがいてこそできるもの」 が見えてきます。これはそのまま彼ら、つまりは 「障がいのある人たちと一緒に生きる理由」 になります。  それはまた、新しい文化を生み出します。障がいのある人たちを排除する文化(たとえば「生産性」こそ一番、とするような文化)に対して、彼らを排除しない文化、彼らと一緒に生きていった方がいい、という文化を生み出します。「生産性」とはちがう評価軸を持った文化、といってもいいと思います。それは、障がいのある人たちはもちろん、みんなにとっても居心地のいい文化です。  「生産性」とはちがう評価軸を持った文化は、社会を豊かにします。何かと息苦しい社会にあって、それはとても大事な文化になります。  息苦しさを覚えながらも、じゃあそこをどうすればいいのかがなかなか見えない中で、彼らはそこを抜け出すヒントをくれるように思います。第五期の演劇ワークショップは、まさにそこをさぐります。 pukapuka-pan.hatenablog.com  演劇ワークショップをやるにはお金がかかります。進行役、ピアニストなどの講師料、会場費などで200万円を超えるお金がかかります。ヨコハマアートサイトから100万円の助成金をもらうことが決定していますが、残り100万を超える費用は助成金をもらうめどが立たず、今のところ自費で行う予定です。貧乏なぷかぷかにとって100万円は大変な額です。  表現の市場の舞台は入場料の取れるレベルだと思いますが、障がいのある人たちと全くおつきあいのない人たちにこそ見て欲しいので、入場料は無料にしています。  たとえ収益がなくても、この演劇ワークショップは続けなければならない事業だと思っています。演劇ワークショップが生み出す文化   「障がいのある人たちを排除しない文化」   「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がいい、という文化」   「〈生産性〉とはちがう評価軸を持った文化」 は、今社会にとってとても大事だと思うからです。  そういう思いを寄付の形で、ぜひ支えて下さい。  寄付は、お互いが気持ちよく暮らせる社会への〈投資〉です。自分が目指す社会を実現するために汗を流す一つの方法です。  ぷかぷかは横浜夢ファンドの登録団体になっています。夢ファンドに寄付をしていただくとぷかぷかにお金が入ります(寄付の申込書の希望する団体の欄に「NPO法人ぷかぷか」とお書きください)。税制上の優遇措置があります。詳しくは下記サイトをご覧下さい。 横浜夢ファンド 横浜市 市民活動推進基金とは   横浜市 寄附をお考えの方に ★寄付の申込書の希望する団体の欄に「NPO法人ぷかぷか」とお書きください。 横浜市 基金の活用 横浜市 税制上の優遇措置  集まった寄付の額を元に助成金の申請書を書きます。助成金申請書の締め切りは8月末ですので、寄付をお考えの方は、8月25日くらいまでにお願いします。  障がいのある人もない人もお互いが気持ちよく暮らせる社会を、一緒に作っていきましょう。
  • 〈なんでもいいから一番にな〜れ〉をさぐる
     8月18日(土)から第五期演劇ワークショップが始まります。今期は宮澤賢治作『ほらクマ学校を卒業した三人』(ぷかぷか版)を作ります。  原作は結構残酷というか、えぐい感じがするので、もう少し違う感じで、賢治が問いかけた問題をぷかぷからしく表現したいと思っています。  賢治は何を問いかけたか。それはほらクマ学校の校歌にあります。 ♪ カメはのろまに 歩いて見せた ウサギだまされ昼寝した   早いはえらい 大きいはえらい 勝てばそれまで だまされたが悪い  なんでもいいから 一番にな〜れ なんでもいいから 一番になれ   なんでもいいから 一番にな〜れ なんでもいいから 一番になれ  〈 早いはえらい 大きいはえらい 勝てばそれまで だまされたが悪い    なんでもいいから 一番にな〜れ なんでもいいから 一番になれ 〉 と、物語に出てくる〈赤い手長のクモ〉と〈銀色のナメクジ〉、それに〈顔を洗ったことのないタヌキ〉に競わせます。  クモとナメクジとタヌキの絵を描くとこうなります。この三人が、 〈 なんでもいいから一番にな〜れ 〉 と、ほらクマ学校で教え込まれ、卒業後、お互い相手を馬鹿にしながら競い合います。で、最後は三人とも惨めな死に方をします。ほらクマ先生は、三人とも賢い、いい子供らだったのに、実に残念だった、といいながら、大きなあくびをします。  みんなが一生懸命になってやってきたことが、大きなあくびをする程度のことに過ぎなかった、というわけです。  ワークショップではぷかぷかさん達と一緒にこの校歌を歌い、  〈 なんでもいいから一番にな〜れ 〉 の意味を探ります。  ぷかぷかさん達は、理屈っぽい話は苦手ですから、〈赤い手長のクモ〉と〈銀色のナメクジ〉〈顔を洗ったことないタヌキ〉は一番になるために何をやったのかをまず考えます。  簡単な物語を考え、芝居で発表します。それをお互い見せ合い、 〈 なんでもいいから一番にな〜れ 〉 の意味を探っていこうというわけです。 〈 なんでもいいから一番にな〜れ 〉  は、私たちが子どもの頃から何の疑いもなくやってきた考えのように思います。  〈一番になることがいい〉〈成績がいいことがとにかくいいことだ〉はからだに染みついていて、そういう視点で人を分けていきます。知らず知らずのうちに〈生産性〉があるかないかで人を評価してしまっています。  そういう視点は人を追い込み、息苦しい社会を作っていきます。  〈生産性〉の期待できない障がいのある人たちは社会から排除されていきます。  昔、養護学校の教員になって最初に受け持った子ども達はみんな重度の障がいを持った子ども達で、おしゃべりすることも、文字を書くことも、一人で着替えしたりトイレに行ったりすることもできない子ども達でした。 〈 なんでもいいから一番にな〜れ 〉 からもっとも外れる子ども達でした。じゃあ、その子達は全くだめな子ども達だったかというと、そうではなくて、今まで知らなかったなんともいえない人の魅力を持っていて、毎日おつきあいしているうちに、私は彼らに惚れ込んでしまったのです。  そばにいるだけで、心がほっこりあたたかくなる人なんて、それまで私のまわりにいた 〈 なんでもいいから一番にな〜れ 〉 とがんばっている人たちの中にはいませんでした。  〈 なんでもいいから一番にな〜れ 〉 で一生懸命やってきたのは、なんだったんだと思いました。おしゃべりすることも、文字を書くことも、一人で着替えしたりトイレに行ったりすることもできない子ども達が、 〈 それはちがう 〉 といっていたのだと思います。  ぷかぷかさんと一緒にワークショップをやることで、そういうことが見つかればいいな、と思っています。
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