ぷかぷか日記

川野さんとの物語

  • 甘夏パン!
    天草から届いた甘夏を使った甘夏パンができました。フランスパンの生地で作っています。  甘夏を作っているのは、もう30年近いおつきあいのある川野美和さん。少し前ですが「あめつうしん」に載っていた「耕す日々」と題した日記にステキな話があったので紹介します。  円(まどか 小2)が夏休みで悲しかったことは子牛が死んだことだよ、という。そうだった。8月20日の夜、私たちがバンビと呼んでいる母牛が予定より二日早く産気づいた(川野さんは牛を育てています)。彼女は今まで二度とも安産だったが、様子がおかしいので見ると、子牛の尻尾が出かかっている。逆子だ。これは大変とすぐTさんを呼ぶ。Tさんは以前にも、逆子を難なく胎内でひっくり返し、無事産ませてくれた受精師、博労、30才。90キロのTさん。大きな手をすぐに胎内に入れて 「う〜ん、これは難しい。破水して水がなくなっとる。ひっくり返らんぞ。もう少しだ、しんぼうしろよ」 とバンビに声をかける間も、水や血が吹き出てくる。バンビもTさんも必死の形相であった。彼の体力と技がなければできないことであった。ようやくのことで引っ張り出す。ぐったりしている。Tさんがすぐに逆さづりにする。息をしているように見える。藁の上に横にして、 「藁で全身をこすれ!」 とTさんが言う。子どもら全員、藁をつかみ、たわしにして頭からお腹、背中、手足、全身をこする。やわらかく、ほかほかと暖かく、つい今まで胎内で動いていた命のぬくもりが切ない。目や口が鼻が足が、今にもピクリと動きそうな気がして、みんな一心にこする。  しかし、ついに動かなかった。その時母牛についていたTさんが、疲れた声を振り絞って 「もう一頭、はいっとる」 という。えっ、双子。悲しみと光がぶつかり合う。今度は引っ張り出して元気だ。逆子の子は小屋の外に出す。子らはこすり続ける。バンビは元気な子をなめ始めている。Tさんが逆子の舌を引っぱる。だらんと伸びて口の中に返らない。 「だめ、親に見せんようにして。資料袋に入れて」 と、厳しい声のTさん。子どもらはバンビに見えないように背で垣を作る。円もそうっと頭を入れる手伝いをする。  黒く大きく立派で目にはまだ光が残っているいのちを袋に入れる。やわらかな黒い毛のあたたかさが手のひらに残る。翌日、元(げん)と畑の隅のもちの木の下に穴を掘り埋葬した。  むき出しのいのちが、ここにはあります。子ども達(三人います)は、ものすごくいい経験したなと思います。  川野さんの作った甘夏がたっぷり入った甘夏パンです。ぜひお試し下さい。川野さんの優しい日々が伝わってきます。
  • だって障子があるもん
     天草から送ってきたミカンの箱に「天草みかん山だより」という手書きの通信が入っていて、中にこんな話がありました。   影絵遊び  孫の子守に影絵遊びをした。電灯をつけた障子の向こうの部屋からナベやフライパンやカボチャやピーマンや、そこら辺にあるものを写して、適当にお話を作った。影は不思議だ。ものをより鮮明にし、何かを期待させ迫ってくる。孫(小5のケイタと5才のアヤナ)の二人も喜んだ。  アヤナが演じる。「タマネギの皮をむきまーす」むかれた皮がひらひらと影に舞う。電灯を消したこちら側の部屋で観客のケイタが「あっ、花びらが舞っている!」と叫ぶ。次々に舞い散る花びら。「うわぁ、ほんとだ、花びらだ!すばらしい!」と私も叫ぶ。障子の向こうでアヤナが主張する。「いいえ、花びらではありません!タマネギの皮です」と。  そして帰りにアヤナが言う。「ばあちゃんの家はいいなぁ」「えっ、どうして?」「だって障子があるもん」パパとママに影絵を見せてやりたいのに、アパートには障子がないというのだった。                                川野美和 ●●●    なんて豊かな世界なんだと、ほのぼのとあたたかな気持ちになりました。  昔子どもを連れて川野さんの家に遊びに行ったことがあって、障子のある部屋を思い出します。  川野さんとはこの「天草みかん山だより」を読んだことがきっかけでつながり、川野さんを通して障がいのある子どもも一緒に育てる横浜の「土と愛子どものいえ保育園」(川野さんはこの保育園の創設にかかわっています)とつながり、その保育園の食育の影響で子どもは25年後、淡路島で農業を始めました。 takasakiaki.hatenablog.com    川野さんから届いたミカンを使ってお惣菜ではオレンジチキン、ミカンのフルーツサラダ、ミカンゼリーを、パン屋ではミカンタルトを作る予定です。  2月には甘夏が届きます。甘夏パン、来年は作ります。楽しみにしていて下さい。  
  • たくさんの人とつながっているんだなぁ
     天草の川野さんから送られてきた河内晩柑の箱の中に入っていた「天草みかん山だより」に熊本地震のことが書いてありました。  天草では震度6だったそうです。  ●●  たくさんのみなさまからご心配のお電話やお手紙いただきました。みかんでつながっている、お会いしたことのない方がほとんどです。本当にありがとうございます。  「あ〜、元気な声が聞けてほんとによかった」とみなさんが言ってくださいました。  ふだんはほとんど人と出会うことのない山の暮らしです。「一人じゃないんだなぁ、たくさんの人とつながっているんだなぁ、しっかり生きていこう」と、しみじみと、あらためて思いました。  若葉が陽に輝き、空には鳥、田植えの終わった田に蛙がにぎやかです。  ●●  みかんは、ただ食べるだけではなく、こうやって人と人をつなぎます。パン屋で販売中の「晩柑ブレッド」には、川野さんの思いがいっぱい詰まっています。  「あ、おいしい!」って思われたら、ぜひお手紙書いてあげてください。   〒863-2114 熊本県天草市五和町城河原2-2133 川野美和  
  • 河内晩柑が届きました。
      川野さんの河内晩柑が届きました。見かけは悪いですが、本当においしいです。  見かけのいいミカンは様々な薬を使っているせいです。私は川野さんの見かけの悪いミカンを見るとなんだか安心します。そしておいしそうって思ってしまいます。20年ほど前、始めて川野さんの作った温州ミカンを食べて、そのコクのある味に感動したことがあります。以来、見かけの悪いミカンを見ると、おいしそうって思うようになりました。知り合いの自然食品店では「川野さんのミカン」はブランド品で、「川野さんのミカン」というだけで値段が高いそうです。ぷかぷかの甘夏パンは、その「川野さんのミカン」の皮を使って作っています。安心でおいしいです。  あの人が作っているから安心、あの人が食べるから安全でおいしいものを作ろう、ってお互いが思う関係をしっかり作っていきたいと思っています。   川野さんの甘夏については下記のブログに書いています。 pukapuka-pan.hatenablog.com
  • 自家製甘夏ジャムと自家製ヨーグルト
     天草の川野さんから無農薬の甘夏を送ってきたので、それを使って家で甘夏ジャムを作りました。普通甘夏は2月の終わり頃収穫するのですが、川野さんの甘夏は木になったままなので、今の時期でも収穫できます。もうそろそろおしまいですが…  甘夏を真横に半分に切り、ジュースを絞って、皮を薄く切ります。二度ほど煮こぼしてにがみを取り、あとはきび砂糖を入れてコトコト煮るだけ。  この自家製の甘夏ジャムを自家製のヨーグルトに入れて食べるのが私は大好きです。自家製のヨーグルトは牛乳に市販のプレーンなヨーグルトを入れてほうっておくと、夏の時期なら1日でできあがります。  市販のヨーグルトは増粘材と呼ばれる糊が入っているので、食感がいやだなと思っています。自家製ヨーグルトのスタートは市販のヨーグルトを大さじいっぱいくらい使いますが、何度も引き継いでいく中で、糊を感じない、さっぱりしたヨーグルトになります。  保温器も何も使いません。瓶に入れて、室内にほうっておくだけです。夏は1日、冬でも3〜4日でさっぱりしたヨーグルトができます。この自家製ヨーグルトになれてから、市販のヨーグルトに入っている「糊」がいやだなと思うようになりました。  ほうっておくだけでできる手抜き自家製ヨーグルトと、コトコト煮るだけでできる簡単ジャムを組み合わせるだけで、毎朝幸せな時を味わうことができます。  ぜひお試し下さい。  甘夏ジャムはぷかぷかでも販売しています。
  • 川野さんの甘夏
     20年ほど前、友人が発行しているガリ版刷りの通信紙「あめつうしん」に川野みわさんという方が天草で甘夏を作っている話を書いていていました。甘夏作りに込めた思いが天草のミカン畑の風景の話といっしょにじんわり伝わってきて、ミカン作りながらこんな生き方をしている人がいるんだと、新鮮な思いで読んだことを今も覚えています。ぜひお会いしたいと思い、天草まで出かけました。  年末に子ども二人連れて行ったのですが、一人はまだ8ヶ月になったばかりで、川野さんの家に着くなりうんこを漏らしてしまいました。川野さんは横浜にある「土と愛子どもの家保育園」(40年ほど前、障がいのある子どもたちも普通の子どもたちといっしょに育てていこう、というところでスタートしました。当時はそんな保育園はなく、全国から設立のカンパが集まったそうです)を創設したグループの一人で、子どもがうんこを漏らしたぐらいで慌てるような人ではなく、すぐにお風呂場を貸してくれ、子どものおしりを洗わせてもらいました。  お会いしてあいさつもしないうちにそんなハプニングもあって、川野さんとすぐに打ち解け、ミカンの話から保育園、障がいのある子どもたちの話まで大いに盛り上がりました。その間、子どもたちは山盛りにおいてあったミカンをとにかく食べまくっていました。以来、子どもたちは「ミカンは食い放題」だと思い込んでいるようで、10キロ入りの箱単位で買う川野さんのミカンが届くと、ミカンが山ほどあった川野さんの家にいるような気分で食べまくっています。川野さんのミカンはこくがあって本当においしいです。ミカンを育てる川野さんの思いが凝縮しているようです。あの「こく」は川野さんの思いそのものなんだと思います。  自然食のお店をやっている友人の話だと「川野さんのミカン」はひとつのブランドになっていて、それだけでほかのミカンより高く売れるそうです。温州ミカンだけでなく、ネーブルや河内晩柑、甘夏もおいしいです。  牛も飼っていました。ちょうど獣医が来ていて、何をするのかと思っていたら、突然牛が「ムギャ!」と短い叫び声を上げました。獣医が側にいた犬に向かって卵よりやや小さい丸い球を投げました。犬は待っていたように、その球をしっかり口で受け止め、ガッガッと三口くらいで食べてしまいました。牛はちょっと痛そうに足踏みしていましたが、それもすぐに収まり、何事もなかったかのように元ののどかな風景に変わりました。あっけない牛の去勢でしたが、私にとってはそのあっけなさが未だに強烈な印象として残っています。麻酔もしなかったので牛は痛かっただろうなと思います。足踏みしていた牛の姿を今でも思い出します。  牛は肉牛で、ときどき保育園の仲間と一頭買いをしていたのですが、本当においしいお肉でした。牛といっしょに、「この牛は目がかわいい牛でした」とか「おっとりした牛でした」とか、ちょっとしたエピソードを書いた紙が入っていて、かわいがっていた牛を出荷するときは辛かったんだろうな、と思いました。その分食べるときも時々ちょっと辛い気がしました。  川野さんの甘夏は全くの無農薬なので、皮も安心して使えます。ぷかぷかの甘夏パン、甘夏ジャムは、こんな人のつながりの中で作っています。「あの人が作るから安心」「あの人が食べるから安心できる、おいしいものを作ろう」そんなおつきあいを大切にしたいと思っています。       
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