ぷかぷか日記

まーさんの物語

  • 参加者それぞれが自分の希望、夢に向かって歩き始めます。
     デフパペットシアターひとみの公演の舞台に立つためのワークショップをやりました。  なんでも希望が叶うという魔法の卵を欲の深い人間が取り合っているうちに卵が割れてしまいます。絶望の中で、ジュジュマンはよろよろと、でも自分の足でしっかり前に向かって歩き始めます。希望は自分が前に歩み出すことでしか作り出せません。  前に向かって歩く。希望に向かって歩く。それが生きるということ。  参加者はジュジュマンと一緒に歩き始めます。それぞれの希望に向かって…    ジュジュマンの、膝を折り、肩を落とす歩き方がみなさん、結構むつかしかったようです。 鏡を見ながら歩き方を覚えます。 久しぶりにまーさんがきました。まーさんは3年前、長野でやっただけあって、いい感じでやっていました。 www.youtube.com やなせさんの特訓です。 www.youtube.com   当日は白い衣装を着て、白いドーランを塗ります。 ジュジュマンが歩き始めるまで、みんなは後ろで倒れています。   そしてみんなで歩き始めます。 www.youtube.com   11月25日(土)午後2時開演です。
  • デフパペットシアターひとみの舞台に一緒に立つワークショップをやります。
     デフパペットシアターひとみの『森と夜と世界の果てへの旅』の公演が11月25日(土)午後2時からみどりアートパークホールであります。それに先駆けて11月4日(土)午前10時からワークショップをやります。25日の本番舞台に一緒に立ちます。  このワークショップは「人生おもしろいことなんかないから死にたい死にたい」と毎日のように口にし、医者から「死にたい病」の病名をつけられたまーさんが長野まで出かけて参加し、デフパペの舞台に一緒に立った感動的な物語を生み出しました。 pukapuka-pan.hatenablog.com pukapuka-pan.hatenablog.com    今回も25日の本番の舞台の最後のシーンで出演します。すばらしい体験になると思います。  ワークショップの申込は直接みどりアートパークへお願いします。045−986−2441
  • 「生きる」ということを深く感じる時間でした。
     6月17日(土)みどりアートパークで第一期と第三期演劇ワークショップの記録映画と、ぷかぷかのプロモーションビデオを上映します。  第一期みんなでワークショップの記録映画を見た人たちの感想がすごくいいので紹介します。     ・映画はぷかぷかのパンのようにほっこりあたたかくて、胸にしみいるような作品でした。 ・心がほっこりしました。演劇としてとか、メッセージとか関係なく、みんなといるだけで、そのままで、なんだか癒やされる感じがしました。 ・とてもよかったです。出演者全員のファンになりました。まーさんがデフパペットシアターひとみの舞台にチャレンジしたシーンはなぜだか感動して涙が出ました。 ・本当にステキだった!自分がいつも「こうしなくちゃ」「こうあるべき」「こんなふうにできない自分」にしょんぼり、とか感じてたこと、ここのみんなは全く思ってなくて、私もみんなみたいに自由になりたいな〜、って本当にまぶしく感じました。うまれながら自分にぐるぐるからみついていたロープを少しずつほどいていきたい!!と思いました。ぷかぷかいいね!!! ・そのままでいることが豊かな人生の基本ですね。自然体の彼らがとてもよかったです。 ・心が温まり、元気が出ました。 ・なぜ彼らといる時に、ゆるっと心地よいのか、わかった気がします。 ・まーさんの姿に明日からも生きていく力をもらいました。感動しました。どの人にもまーさんのようなオリジナルで個性的なドラマがあるのだろうなと思いました。 ・ちょっとできないことが多かったり、時間がかかったりするだけなのに、生きづらい世の中におかれている。私は心の底から、彼らは社会の子、社会の宝として、社会のど真ん中にいるべきだと思っています。彼らからもらえるものが本当にたくさんあるなとあらためて感じました。彼らが生きやすい世の中になれば、すべての人に幸せな世の中になるのにとつくづく思いました。 ・私事ですが、昨日は自殺した友人のお葬式でした。心の整理がつかないまま、今日、こちらに伺い、「生きる」ということを深く感じる時間でした。みなさんの豊かな表情は、本当に心にしみました。こちらに足を運んで本当によかったです。 ・一緒に生きていくことが自分を豊かにする。ジーンときました。とても素敵な時間でした。 ・言葉にするのがもったいないくらいすばらしかった。涙が出ました。やっぱり心が洗われる!!わくわくする!! ・こんな風に一緒に社会で生きていけると楽しいよなー自然だよなーと改めて感じました。      中に友人が自殺し、心の整理ができないまま映画を見て 《 「生きる」ということを深く感じる時間でした。 》 と書いた方がいました。  そんなことまで考えたワークショップではありませんが、みんなが生き生きと生きる舞台は、生きることの意味がぐらついてしまうほどの経験した人の心にもしっかりと届くメッセージを含んでいたのだと思います。  障がいのある人がどうとかこうとかいった議論をはるかに超えた、人が生きる上でもっと大事なものを作りだしていたのかも知れません。  どうしてそんな舞台ができたのか、映画はしっかりと見せてくれます。  第一期演劇ワークショップの記録映画は朝10時からです。ぜひおいで下さい。    
  • マッキー、本当にありがとう!
     昨日、デフパペットシアターひとみのマッキーがガンのため亡くなりました(ちょうどみどりアートパークの舞台で「はこ」をやっているときでした)。いちばんパワーのある役者でした。マッキーのパワーあふれるパフォ−マンスに心惹かれた「ぷかぷかさん」がいました。まーさんです。  まーさんは鬱病を持った方です。いつも暗い顔して「人生、楽しいことなんかない」「死にたい」「死にたい」と毎日のように言っていました。それでもある日  「デフパペのマッキーのパフォーマンスがかっこよかった」 と、ぽろっと言ったことがありました。ぷかぷかの4周年のイベントでデフパペットシアターひとみの人にきてもらってパフォーマンスをやってもらったことがあって、それがかっこよかったというのです。はじめてと言っていいくらいの前向きの言葉でした。そのあこがれのマッキーがワークショップに来るので、まーさんを誘いました。  まーさんはマッキーと一緒に人形を作りました。  作りながらいろいろお話をし、稽古場に来ていいよ、といわれました。  7月17日、汗だくになりながら電車、バスを乗り継いでデフパペットシアターの稽古場まで行きました。生きてて楽しいことなんかない、というまーさんにとっては、汗だくになってでも出かけたいところがあった、というのは大変な出来事でした。  『森と夜と世界の果てへの旅』の稽古をやっていました。すぐそばで見るとすごい迫力でした。まーさんも初めて見る舞台稽古の迫力にびっくりしたようでした。   8月に長野県の飯田でデフパペットシアターの舞台に立つワークショップの企画がありました。ワークショップの一週間後、デフパペの舞台に一緒に立つというすごい企画です。  「まーさん、飯田に行こう!」 と、大きな声で誘いました。まーさんはにたにた笑っているだけでした。でも、まーさんのこれからの人生がかかっている気がして、なんとしてもまーさんを飯田まで連れて行きたいと思いました。  1時間ほど見て、そろそろ引き上げようかなと思っていると、マッキーがまーさんを舞台に呼び、本番で使う人形を持たせてくれました。ジュジュマンという物語の主人公の人形です。マッキーはどうやったら人形が生きてくるのか、丁寧にアドバイスしていました。マッキーに手伝ってもらって実際に人形も動かしました。  これが効いたのかどうか、1週間後、 「飯田まで行くのにいくらぐらいかかりますか?」 と聞いてきました。  新幹線とローカル線を乗り継いで飯田まで片道4時間、交通費は往復で18,000円くらいかかります。まーさんにとっては大変な額です。それでも「いいです、それで行きます」と言ったのです。  いつも暗い話ばかりで、毎週のように「もう仕事やめます」「なんの希望もないので、もう死にます」と言っていたまーさんが、18,000円も払って、4時間もかけて長野の飯田まで行くと言い出したのです。  飯田でのワークショップはひたすら歩く練習でした。「森と夜と世界の果てへの旅」のラストシーンで、倒れ込んだ主人公ジュジュマンと一緒に再生に向けてアフリカの太鼓のリズムで歩くのです。  舞台の後ろで横たわっているところから始まって、ジュジュマンと一緒に歩き、お客さんにあいさつして終わるまで、時間にしてわずか1分20秒です。その1分20秒のシーンを作るために3時間のワークショップがあったのですが、その1分20秒の舞台に立つために、まーさんは次の週、本番に向けて、また長野まで出かけたのでした。  今まで何度も、 「もうなんの希望もありません、生きててもつまらないので、もう死にます」 と言っていたまーさんが、まさかここまで来るとは思ってもみませんでした。ワークショップの持つ力というのは本当にすごいと思いました。それとまーさんが動き出すきっかけを作ったマッキーのパワーあふれるパフォーマンス。それがなければ、そもそもこの物語は始まりませんでした。  そして1週間後の本番の舞台。前日は緊張のあまりほとんど眠れなかったといってましたが、振り付け師によるリハーサルのあと、いよいよ本番。    緊張した舞台もあっという間に終わり、最後にあこがれのマッキーと写真を撮りました。  舞台のあとの心のほてりがそのまま出ているような写真です。この1枚の写真を撮るために飯田まで行ったんだなと思います。      マッキーのパワーあふれるパフォーマンスが、この素敵な物語を作りました。感謝と、そして合掌。マッキー、本当にありがとう!  
  • 飯田でのあの熱い時間を思い出したのかも
     まーさん連れて「デフパペットシアターひとみ」まで行ってきました。  (まーさんのこと知らない方はこちらをお読み下さい。   まーさんの物語 - ぷかぷかパンの店『カフェベーカリーぷかぷか』 ) まーさんがデフパペに関心を持つきっかけを作ってくれた役者のマッキーが病気になって「表現の市場」の舞台に立てないかも知れないと聞き、なんとか元気になって欲しいと思いました。まーさんに事情を話し、マッキーといっしょに舞台に立ってみないか、と誘いました。  「元気になって下さい」なんて月並みなメールをしても、元気になんかなれないので、「いっしょに舞台に立ちませんか?」という提案をマッキーにしてみたら、と話しました。役者なら絶対に元気になります。前はマッキーに支えてもらったので、今回はまーさんがマッキーを支えようというわけです。マッキーはかなり具合が悪そうで、舞台に立つにしてもほんの短い時間かも知れません。それでも、その短い時間でもいい、「いっしょに舞台に立ちませんか」というまーさんからの提案はマッキーを絶対に元気にすると思ったのです。  まーさんは最近幻聴がひどく、いつも悪口を言われている、とぷかぷかには来なくなりました。ワークショップにも来てないので、舞台に立つ予定は全くありませんでした。「マッキーといっしょに舞台に立ってみないか」という提案にはちょっと驚いたようでした。「でもマッキーのおかげで飯田まででかけることができたのだし、表現の市場の舞台もマッキーのおかげでまーさんはあんなに活躍できたんだよ、そのマッキーが大変な病気なんだから、何とか元気になれるようにまーさんがんばってよ」と時間をかけて話しました。 (飯田での熱い舞台のあとで)   まーさん、かなり悩んでいたようですが、一晩考えたあと、「いっしょに舞台に立ちます」と連絡をくれました。飯田でのあの熱い時間を思い出したのかも知れません。そのあとマッキーにその旨を知らせるメールを送ったようで、マッキーはすごく喜んでいましたよ、と関係者から聞きました。    で、昨日、表現の市場に出す作品の稽古をしますから来て下さい、という連絡がデフパペから入り、稽古場まで出かけたというわけです。ちょい役かと思いきや、マッキーが抜けたあとをそのまま補うような大変な役です。  「のはらうた」を手話と人形と面白いパフォーマンスで表現します。 チョウチョを飛ばします。 カマキリになります。やなせさんが演技指導。 演技指導にも気合いが入ります。 まーさん、だんだん集中してきました。  マッキーにカードの表示の仕方を教わります。 ここでちょっと止める、と微妙な動きをマッキーは教えてくれます。    デフパペの人たちの熱心さに、なんだか感動してしまいました。マッキーはまーさんにいろいろ教えるとき、本当にうれしそうでした。まーさんも久しぶりに笑顔がこぼれました。二人が支え合って舞台に立てるといいなと思いました。 2月14日(日)「表現の市場」で発表します。ぜひ見に来て下さい。 大きなチラシ http://www.tokyuensen.com/resource/event/img/2016/1601_042.jpg      
  • デフパペットシアターといっしょに舞台に立つ
     デフパペットシアターといっしょに舞台に立つワークショップをやりました。  みどりアートパークの配慮で、いきなり舞台の上でのワークショップになりました。   ジュジュマンを支える歩き方を演習   なんでも願いをかなえるというこの卵   この卵が爆発。世界がめちゃくちゃに。   それでもジュジュマンはゆっくり前に向かって歩き始まる。   それをワークショップ参加者が支える。   最終打ち合わせ。このあと衣装を着て本番。   舞台裏でのアナウンスを麻野さんに頼みました。表現の市場でのすばらしい実績を買っての話です。そばに座っているのは手話通訳をするデフパペットシアター制作の大里さん。本番直前に練習していました。   衣装を着けます。   ちょっとメイクもします。   舞台袖、上手側と下手側に別れます。   舞台の袖で出番を待ちます。   出番直前。役者さんが走り回るそばで横たわります。   卵が爆発   ゆっくり立ち上がります。   みんなで歩きます。   無事終わり、お客さんにあいさつ。   みんなが退場したあと、麻野さんがお礼のアナウンス。それを手話通訳。 みんなが退場したあとの舞台にはまだ熱気が残っています。   舞台が終わってロビーへ。みんないい顔していましたね。   子どもは骸骨の人形(死に神)がこわいんだけど、興味津々。   みんなで記念写真   時間にすればほんの1分半ほど。それでも舞台に立ったあと、みなさんの顔がほてっていて、ステキでした。舞台って、そういう輝くような時間をプレゼントしてくれます。   まーさんは久しぶりにデフパペットのメンバーに会い、本当にうれしそうでした。マッキーとは今度じっくり話をする約束をしていました。ほとんど同じ年なので、話が合うようです。
  • 第二期みんなでワークショップ参加者募集
     9月19日(土)から始まる「第二期みんなでワークショップ」の参加者募集のチラシができました。デザインは「アート屋わんど」のKONさんです。   ワークショップの時間は朝9時15分から、夕方の4時頃までです。日によっては5時頃までやるときもあります。   昨年のワークショップの記録映画を見た方で    第1期ワークショップの映画を拝見して、ぷかぷかさんの大ファンになりました。 その時の感想にもかかせていただいたのですが、まーさんが舞台にチャレンジするシーンに心が震えました。演技することは苦手なのですが、自分もまーさんみたいに 勇気を出して一歩踏み出すことで、新たな世界や感動を味わってみたいと思ってワークショップの参加を決めました。     とメールを送ってくれた方がいました。  ワークショップは新しい世界へ踏み出す一歩になります。ぜひチャレンジしてみてください。  すでにかなりの方が申し込みされていますので、あと10名ほど募集します。  参加を希望される方はメールでも申し込みができます。pukapuka@ked.biglobe.ne.jp   第2期ワークショップやります。 - ぷかぷか日記pukapuka-pan.hatenablog.com  
  • どこかで必死になる部分が…
     昨年、まーさん連れて飯田までワークショップをやりに行くきっかけを作ったのがこのチラシ。    デフパペットシアターひとみの稽古場にまーさん連れて行った時に、このチラシを見てしまったのです。それが物語のはじまりでした。  ワークショップやって、本番の舞台にデフパペの人たちと一緒に立つ、という企画です。もう血が騒ぎましたね。だからまーさんと一緒に飯田までいけたんだと思います。  もちろんまーさんをなんとかしたい、という思いはありました。でも、そういう思いと一緒に、私自身の中に「血が騒ぐ」ようなものがあったからこそ、一緒に舞台に立てたんだと思います。   「舞台に立つ」って、そういうことだと思います。どこかで必死になる部分が自分の中にあること。舞台って、だから好きです。      
  • 『森と夜と世界の果てへの旅』の舞台に立つワークショップ
     9月13日(日)にみどりアートパークでデフパペットシアターひとみの『森と夜と世界の果てへの旅』の公演をおこないます。昨年夏、まーさん連れて飯田まで行き、ワークショップをやって、本番舞台に立った作品です。  10日ほど前に、ふとそのことを思い出し、北海道に公演に行っているデフパペの制作の方に、 「今回は飯田のようなワークショップやらないんですか?」 って聞いたところ、 「ぜひやりましょう!」 という返事をいただいたので、すぐにアートパークに連絡を取りました。ところが、ワークショップのできる「リハーサル室」は8月9月は全部ふさがっていて、これは地区センターの会議室でも取るしかないか、と思っていました。  ところが今日の夜になってみどりアートパークから電話があり、公演の前日のホールの夜の枠があいていたので、そこで公演の仕込みをやってしまい、当日の朝10時からワークショップを舞台でやろう、というわけです。すばらしいアイデアだと思いました。アートパーク、またまた見直しましたね。「やろう!」という気持ちがあればここまでできちゃうんですね。   デフパペットシアターの『森と夜と世界の果てへの旅』はジュジュマンという飲んべえが椰子酒を求めて世界の果てまで旅をし、いろいろひどい目に遭います。最後はなんでも願いが叶う卵が割れて、世界の終わり、といった感じになります。その中でなおもジュジュマンが自分の足で前に向かってぎこちなく歩き始めます。アフリカの太鼓のリズムでぎこちなく歩き始めるジュジュマンの姿には、どんなの辛い中でも自分の足で歩いて行く、という希望があります。そのジュジュマンを支えるように、みんなで歩くのです。  去年の夏、まーさんがデフパペの舞台に立ったときの話です。 まーさん、ついにデフパペットシアターの舞台に立つ - ぷかぷか日記pukapuka-pan.hatenablog.com    このわずか1分20秒ほどの舞台のために3時間のワークショップをやりました。今回は10時から12時までの2時間ですから、ちょっと駆け足のワークショップになるのかも知れません。  問題は、舞台に立つ人は『森と夜と世界の果てへの旅』の舞台を見られない、ということです。多分事前に『森と夜と世界の果てへの旅』のDVDを見ることになると思いますが、舞台を見るのとは全く違います。  飯田では自分の出番まで、というより、出番は一番最後のシーンなので、はじめから最後まで、舞台の袖でじっと待っていました。デフパペの役者たちが汗だくになって走り回っている側で、じっと待っているというのは、結構つらいものがありました。  でも『森と夜と世界の果てへの旅』を舞台裏から見られたことは、普通はあり得ないことなので、とても面白い体験でした。  なによりもデフパペの本番舞台に一緒に立てる、というのは、滅多にない貴重な機会なので、舞台を見る以上の価値はあると思います。  ワークショップの参加者募集については後日お知らせします。楽しみにしていてください。
  • 「死にたい」が口癖の人と一緒に舞台に立つ
     9月から始まる演劇ワークショップにかかる費用の助成金がうまく集められなくて困っています。あちこち助成金の申請をしているのですが、パソコンとかミシンといった「もの」ではなく、ワークショップといういわば抽象的なものはなかなか相手に伝わらなくて、むつかしいですね。NHK障害福祉賞というのを友人が紹介してくれたので、トライすることにしました。1等賞は50万円です。サッカー日本代表のように、優勝しか考えていません。締め切りは今月末。まだ手直しする時間があります。ここはこう直した方がいいとか、優勝するにはこういう書き方した方がいいとか、いろいろアドバイスなどいただければうれしいです。     「死にたい」が口癖の人と一緒に舞台に立つ    まーさんは鬱病と知的障がいを持っています。いつも暗い顔をし、一週間に一回は「もう死にます」なんて言ってきます。人生に絶望したというわけでもなく、些細なことで落ち込み、「やっぱり死にます」なんて言って来ます。  鬱病なので、万一のことも考えて、医者と連絡取り合いながら対応するのですが、そんなに深刻そうでないときは 「首をつると息ができなくなってものすごく苦しいし、高いところから飛び降りると大けがして痛いし、やめた方がいいと思うよ」とか「富士山の裾野の原生林は自殺する人が多いらしいから、死ぬんならあそこがいいんじゃないかな。一度一緒に見に行かない?せっかく富士山の裾野まで行くんなら、死ぬ前に富士山にも登った方がいいよ。山登りは絶対に楽しいし、もう死ぬのやめようって思うかも」とかなんとか話してると、途中で笑い出したりして、たいていは収まります。  数年前、妹さんが亡くなっているため、その妹のところへ行きます、というときもあります。妹の後を追う話だけは、妙にリアリティがあるので、やっぱりほうっておけません。心配なので、そんなときはすぐに心療内科の先生に電話して連れて行きます。  「下北半島の恐山に死んだ人の霊と話のできる人がいるから、先生と一緒に行って亡くなった妹さんと話をしてこない?」 といった話を30分ぐらいすると大概すっきりします。  画用紙に「つらい、苦しい、死にたい…」と殴り書き、おいおい泣き出したこともあります。そのときもすぐ病院に連れていたのですが、画用紙を見た先生曰く 「あのねぇ、本当に死にたい人は小さな字で書くんだよ。こんな大きな字で書く人は絶対に死なないよ」 と実にうまい返し方をしてくれ、まーさん、つい笑ってしまい、一件落着でした。    「気持ちが前向きになる薬を飲んだのですが、全然前向きになりません。ですからやっぱり死ぬしかありません」 といってきたこともあります。薬で人生が前向きになるとはとうてい思えません。もっと違う方法で人生前向きになって欲しいと思うのです。  まーさんには趣味というものがありません。自分のやりたいことも特にありません。テレビを見る楽しみもないので、晩ご飯食べて、お風呂に入ったらすぐに寝てしまうような生活です。  生きていてもおもしろいことなんかない、とよく言うのですが、そう結論づけるほどに人生でいろいろやったのかというと、そんなことは全くありません。自分のやりたいことも見つけようとせず、それでいて何かおもしろくないことがあると、すぐに「仕事やめます」「死にます」というふうになってしまいます。   「あっ、楽しい!って思ったことないの?」 「ないです」 「自分でやりたいと思っていることないの?」 「ないです」 「夢は?」 「ないです」 いつもこんな調子で、全くとりつく島がありません。  そんなまーさんが、珍しく前向きなことを言ったことがありました。 「マッキー、かっこよかったね」  ぷかぷか4周年の記念イベントで、デフパペットシアターひとみのマキノさんがパフォーマンスをやってくれました。それがかっこよかったといったのです。あんなふうに自分もやってみたい、と。 「マッキーに弟子入りする?」 「はい、したいです」 「じゃあ、マッキーが進行役をやっている演劇ワークショップに来てみる?」 「はい、行きます」 というわけで、ぷかぷかのメンバーさんと地域の人たちがいっしょにやっている演劇ワークショップに参加したのでした。  最初は暗い顔して隅っこにうずくまっていましたが、マッキーに声をかけられ、一緒に人形作りをし、その人形を持って舞台に立つところまでやりました。  マッキーの稽古場に行く約束もしました。  デフパペットシアターひとみの稽古場に行ったのは夏の暑い日でした。二人で汗だくになって電車、バスを乗り継ぐこと1時間半。ふだんのまーさんからは考えられない行動でした。  『森と夜と世界の果てへの旅』の稽古をやっていました。すぐそばで見ると、すごい迫力でした。ちょっとした動き、間合いを何度も何度もやり直します。まーさんも初めて見る舞台稽古の迫力にびっくりしたようでした。  真剣に見入っていたので、これはもう本番を見せるしかないと思い、一番近い公演は岐阜だと聞いたので、  「よし、まーさん、岐阜まで追いかけていこう!」 と突然思い立って言ったのですが、まーさんは 「お金がないです」 と、またいつもの調子で消え入りそうな雰囲気。 「お金なんてなんとかなるよ。行こう!」 とか何とか言っているうちに、長野県の飯田では8月3日(日)にワークショップをやり、8月10日(日) 『森と夜と世界の果てへの旅』の舞台の最後のシーンに出演できる話を聞きました。舞台を見るだけより、舞台に立った方が絶対におもしろいと 「まーさん、飯田に行こう!」 と、大きな声で誘ったのでした。  飯田は横浜から行くにはかなり不便なところにあり、まーさんを説得するのは至難の業。でも、まーさんのこれから先の人生がかかっている気がして、なんとしてもまーさんを飯田まで連れて行こうと思いました。  1時間ほど見て、そろそろ引き上げようかなと思っていると、マキノさんがまーさんを舞台に呼び、本番で使う人形を持たせてくれました。ジュジュマンという物語の主人公の人形です。  音楽担当のやなせさんが「左手」を担当し、まーさんが「右手」をやると、とたんにジュジュマンが舞台を生き始めました。マキノさんがどんなふうに動かしたら人形が生きてくるのかアドバイスしていました。  マキノさんは女性の人形を持つときは歩き方も変えるんだとまーさんに教えてくれました。恐ろしい魚の人形の持ち方も、どうやったら恐ろしく見えるかを説明しながら教えてくれました。骸骨の人形は胴体がありません。その使い方も丁寧に教えてくれました。  実際に人形を持ってのレッスンはまーさんにとっては初めての体験であり、すごく楽しかったようでした。この体験がまーさんの気持ちを動かしたようでした。  ワークショップをやる飯田は長野県にあります。 「え〜っ、長野?そんな遠いところまで行けません!」 と最初言っていたのが、レッスンの数日後、 「飯田まで行くのにいくらくらいかかりますか?」 と聞いてきたのでした。バスを使うと安いのですが、片道5時間もかかり、新幹線と飯田線を使うことにしました。往復で約24,000円。今までのまーさんなら絶対に乗ってこない金額です。のるかそるかの提案でした。でも 「いいです、それで行きます」 と言ったのでした。  いつも暗い話ばかりで、毎週のように、もう仕事やめます、なんの希望もないので、もう死にます、と言っていたまーさんが、24,000円も払って長野の飯田まで行くといいだしたのです。    朝、7時に新横浜で待ち合わせし、飯田まで行きました。デフパペットシアターの舞台になる会場までタクシーで乗り付け、ワークショップに参加。心と体をほぐしたあと、本番舞台で使う3拍子の歩き方の練習。  デフパペットシアターの『森と夜と世界の果てへの旅』はジュジュマンという飲んべえが椰子酒を求めて世界の果てまで旅をし、ひどい目に遭い、最後はなんでも願いが叶う卵が割れて、世界の終わり、といった感じになります。その中でなおもジュジュマンが自分の足で前に向かってぎこちなく歩き始めます。アフリカの太鼓のリズムでぎこちなく歩き始めるジュジュマンの姿には、どんなの辛い中でも自分の足で歩いて行く、という希望があります。そのジュジュマンを支えるように、みんなで歩くのです。  ワークショップでは、その歩き方を何度も何度も練習しました。一緒に歩きながら、まーさんが、ぎこちなくとも、自分で前に向かって歩き出してくれれば、と思いました。  このときの映像が後日、デフパペットシアターから送られてきました。 『森と夜と世界の果てへの旅』のラストシーン、まーさんが横たわっているところから映像が始まり、アフリカの太鼓のリズムの中でゆっくり起き上がり、ひょこたんひょこたんと三拍子で歩き、あいさつして退場するまで、わずか1分20秒でした。  この1分20秒のシーンを作るために3時間のワークショップがあったのですが、そのわずか1分20秒の舞台に立つために、まーさんはまた長野の飯田まで横浜から3時間半も電車に乗ってでかけようというのです。  今まで何度も、 「もうなんの希望もありません、生きててもつまらないので、もう死にます。」 と言っていたまーさんが、まさかここまで来るとは思ってもみませんでした。  舞台の持つ力というのは本当にすごいと思いました。デフパペの舞台を見るだけでは、多分ここまで変わらなかったと思います。  私自身にとってはちょっと物足りないくらいの舞台でしたが、まーさんにとっては、また新幹線に乗って出かけるに値する舞台だったようです。  ワークショップから1週間後の公演の日、11時からのリハーサルに間に合うように、朝5時50分に駅でまーさんと待ち合わせして出かけました。輝くような1分20秒の舞台のために。    いよいよ本番の舞台。まーさんは緊張で前日眠れなかったといってました。  白い衣装を着てリハーサル。大音響と煙の中でのリハーサルは、ピーンと張り詰めた緊張感があり、まーさんも必死に動き回っていました。ふだんの生活では絶対に味わえないこの緊張感、こんなにも密度の濃い時間をまーさんにしっかり味わって欲しいと思いました。  そして本番。『森と夜と世界の果てへの旅』のラストシーンを舞台裏でじっと待ちました。汗だくになった役者たちが走り回っているそのすぐ側でじっと待ちました。  合図で舞台の後ろに横たわります。希望をかなえる卵が破裂すると、大音響と共に、照明が落ちます。目くらましのライトが客席に向かってつき、煙がもうもうと立ち上がって、すごい迫力。倒れたジュジュマンがゆっくり立ち上がって歩き始める気配を感じながら、まーさんたちもゆっくり立ち上がり、歩き始めます。傷ついても傷ついても、人はまたその傷ついた体で歩き始めるしかないというメッセージ。  「まーさん、こうやって歩くんだよ、つらくても、苦しくても、歩き始めるんだよ」って、祈るような思いでまーさんの後ろを私は歩きました。  今までにない、にぎやかな、すばらしいラストシーンだったと思います。    まーさんの1分20秒の舞台は終わりました。ものすごく緊張して、ものすごく楽しい舞台だったように思います。  この舞台で感じた「心のほてり」が、これからのまーさんの人生にどんな影響を与えるのか、全くわかりません。またいつものように暗いまーさんに戻るのか、それとも少し違ったまーさんになるのか。  帰りの電車の中であこがれのマッキーと撮った写真を見せてくれました。舞台のあとの心のほてりがそのまま出ているような写真です。この1枚の写真を撮るために飯田まで行ったんだなと思います。
  • 最近の日記
    カテゴリ
    タグ
    月別アーカイブ