ぷかぷか日記

第3期演劇ワークショップ

  • とけたひもを引きずるように
    10月15日(土)第三期第3回目のワークショップがありました。今回はデフパペットシアターひとみの人たちに第一回表現の市場でやった「雨にも負けず」の朗読をしてもらいました。エノさんの手話がとても力強かったですね。賢治の人形の存在感。やなせさんの音が入ると、とたんに舞台の世界がグンと深くなったように感じました。 www.youtube.com 「風ニモマケズ」を体でやってみました。  ネコのシーンは原作では「インドの虎刈り」という音楽なのですが、「アルゴリズム体操」をやってみよう、ということになり、まずは「東北楽天のみなさんと一緒に」のYouTubeを見て振り付けの研究。 なかなか楽しい振り付けになりました。 様々な動物が訪ねてきてプレゼントを渡し、「アルゴリズム体操」をリクエストします。  今回はネコのシーンとカッコウのシーンをやったのですが、最終的にどういうまとめ方をするかが議論になりました。ゴーシュが練習に練習を重ね、最後の演奏会が大成功で終わった、というのでは単なる努力成功物語になって面白くありません。  最初の練習のシーン。ゴーシュは「セロが合わない」「とけたひもを引きずって…」と楽長にしかられます。みんなと合わせろ、もたもたするな、というわけです。「ぷかぷかさん」たちがふだん言われていることです。  でもねぇ、「みんなとあわなくてもいいじゃん」「とけたひもを引きずるように、もたもたしててもいいじゃん」と思うのです。そしてそういうメッセージこそ出したい、と。  相模原障害者殺傷事件の背景には効率,生産性を求める社会にあって、障がいのある人たちは役に立たない、社会の負担、だからいない方がいい、といった論理があったように思います。  ぷかぷかはふだんの活動で、それをひっくり返すような事実を作ってきました。役に立たないどころか、ぷかぷかは彼らが支えています。そしてぷかぷかは地域社会を支えています。ぷかぷかがなかったら、霧ヶ丘はとてもさびしい街になります。社会の負担どころか、彼らは日々地域社会を耕し、社会を豊かにしています。彼らにかかっているお金以上のものを彼らは生み出しているのです。  そういったことを『セロ弾きのゴーシュ』という物語の中で、どんな風に語っていけるのか、ということです。ものすごく大変なテーマですが、こういうものこそ面白いですね。昨年もむっつり大王をどうやって超えていくのか、ものすごく悩みましたが、最終的には彼らが救ってくれました。今年も多分ぎりぎりのところで彼らが救ってくれるのではないかと密かに期待したりするのですが、彼らに寄りかかってはだめですね。自分たちで悩み抜くしかないです。ま、楽しみにしていてください。発表は来年1月29日(日)みどりアートパークのホールです。
  • 最初のシーンを作りました。
      2016年9月17日、第3期みんなでワークショップの第二回目がありました。今期は『セロ弾きのゴーシュ』がテーマです。どうやって『セロ弾きのゴーシュ』の物語をみんなの中に降ろすかが今回のテーマでした。  『セロ弾きのゴーシュ』は金星音楽団が練習しているとき、いつもゴーシュのセロが遅れ、楽長がだめ出しをするところから物語が始まります。 《 にわかにぱたっと楽長が両手を鳴らしました。みんなぴたりと曲をやめてしんとしました。楽長がどなりました。 「セロがおくれた。トォテテ テテテイ、ここからやり直し。はいっ。」 》 という具合です。そこで、この楽長がだめ出しするところの言葉をみんなで言い合う「だめ出し合戦」をやりました。人間、大きな声を出すと、自然にテンションが上がります。相手に向かって大声を出し、相手はそれに負けずに更に大声を出します。相手がいる、ということはすごく大事です。 手をパン!パン!パン!と三つたたき、この台詞を相手に向かって大声で言います。相手は同じ台詞を更に大きな声で投げ返します。  こうやって体が熱くなったところで、三つのグループに分かれて、練習中にゴーシュがだめ出しをされるシーン、叱られたゴーシュが壁に向かって涙をこぼしながら一人静かに練習をするシーン、夜、川端にあるこわれた水車小屋の家に帰り、椅子に座って練習するシーンを作りました。  オペラシアターこんにゃく座のオペラ『セロ弾きのゴーシュ』で歌われている歌を使ってシーンを作っていきます。  だめ出しの言葉を言ったあと、みんなが歌で支えます。  ゴーシュをのぞく楽団員が退場したあと、ゴーシュは一人残って練習します。  ここはゴーシュ役のサイトウさんが、すばらしい演技を見せてくれました。後ろ姿がすごくよかったですね。みんなが歌で支えます。 《 その晩遅おそくゴーシュは何か巨おおきな黒いものをしょってじぶんの家へ帰ってきました。家といってもそれは町はずれの川ばたにあるこわれた水車小屋…  ゴーシュがうちへ入ってあかりをつけるとさっきの黒い包みをあけました。それは何でもない、あの夕方のごつごつしたセロでした。ゴーシュはそれを床ゆかの上にそっと置くと、いきなり棚たなからコップをとってバケツの水をごくごくのみました。  それから頭を一つふって椅子いすへかけるとまるで虎とらみたいな勢いきおいでひるの譜を弾きはじめました。》  体でゴーシュの家を作ります。そこへゴーシュがセロを担いで帰ってきます。先日日本フィルハーモニーのチェロ奏者江原さんもリュックのようにチェロを背中に担いでやってきました。  セロを床に置き、棚からコップを採ってバケツの水を飲みます。それから頭を一つ振って、椅子にかけるとまるで虎みたいな勢いでセロを弾き始めます。  サイトウさんのこの熱演ぶり。♪譜をめくりながら 弾いては考え、考えては弾き…  ほかの二グル−プとも、こんなふうにして最初のシーンを作りました。デフパペットシアターひとみの役者エノモトさんが作った水車がすばらしかったですね。エノモトさんは聴覚障害者。言葉を使わずに体だけで様々なものを表現する活動をやっています。一声かけただけで、すばらしい水車を作ってくれました。   歌の力は大きかったですね。こんにゃく座のオペラの歌は原作の言葉をそのまま使っています。ですからオペラの歌を歌うと自然にそこのシーンが頭に浮かびます。『セロ弾きのゴーシュ』をみんなの中に降ろすのにとてもいい方法だと思いました。  終わってからの反省会、しょうへいさんはずっと黙ったままなので、今日は何も言わないのかと思っていたら 「実は小さな子どもが僕を好いてくれました。それがとてもよかったです」 と、ぼそっと言い、みんな笑ってしまいました。コミュニケーションゲームの中で、ピアノの役をやり、その中で子ども達がしょうへいさんのこと、とても気に入ったようでした。しょうへいさんは積極的に子ども達に関わるタイプではないのですが、内心すごくうれしかったんですね。  とりあえず最初のシーンができました。このあと動物たちが登場するシーンを作っていきます。どんなお芝居になるか、楽しみにしていてください。  できあがった芝居の発表は来年1月19日(日)の午後、みどりアートパークホールで予定している《表現の市場》でおこないます。
  • 第三期第一回目のワークショップ
     8月20日(土)、第三期目の「みんなでワークショップ」がスタートしました。第一期目は『森は生きている』、第二期目は『みんなの生きる』をテーマにしました。そして今期は『セロ弾きのゴーシュ』がテーマ、というか、それを元に芝居を作っていきます。  ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾く係です。「みんなより遅れる」「みんなと合わない」「表情がない」「とけたひもを引きずったような演奏」と楽長にしかられてばかりいます。ゴーシュは一人残って壁に向かって涙をこぼしながら練習します。  そんなゴーシュのところへ毎晩動物たちがやってきます。ネコ、カッコウ、タヌキ、ネズミです。最初は無愛想ですが、それでもゴーシュは彼らのためにセロを弾きます。セロを弾きながら動物たちとのいろんなやりとりがあります。  ゴーシュは毎晩必死になって練習し、そのためにうまくはなるのですが、この動物たちとのやりとりこそが、ゴーシュを成長させます。  その成長がいちばん見えるのが、演奏会の日、「第六交響曲」が大成功し、アンコールの中でゴーシュがたった一人でセロを演奏する場面です。ゴーシュは動物たちがやってきた夜のことを思い出し、すばらしい演奏をします。  オペラシアターこんにゃく座のオペラ『セロ弾きのゴーシュ』には、ゴーシュの成長ぶりがすばらしい音楽で表現されていて、ここは何度聞いてもぞくぞくするほどの場面になっています。  ここを芝居の形で表現できないか、というのか、今回のワークショップのテーマです。  ゴーシュは楽長をはじめ、みんなからいろいろ馬鹿にされるのですが、「みんなより遅れても」「みんなと合わなくても」「表情がなくても」「とけたひもを引きずってても」そんなだめなことがいっぱいあっても、「それでもゴーシュはいた方がいい」といえるようなものを動物たちとゴーシュのやりとりの中で見つけ、それを芝居に形にすることができないだろうか、と思うのです。  それはゴーシュと同じような理由で社会的疎外を受けているぷかぷかのメンバーさんたちからの大事なメッセージになります。「それでも社会にはゴーシュのような人間はいた方がいい」というメッセージ。彼らと一緒にワークショップをやれば、多分それは見つかるのではないかと思うのです。  相模原障害者殺傷事件の容疑者は「障害者は生きていても意味がない」などというめちゃくちゃなことを言っていますが、「それはちがう」ということを私たちは言い続ける必要があると思っています。それば容疑者だけでなく、社会全体が障がいのある人たちをまだまだほんとうに受け入れていないと考えるからです。出生前診断で染色体異常が確定した妊婦のうち94%が人工妊娠中絶を選択した、という現状は社会全体が障がいのある人たちをどんな風に受け止めているかをよく物語っています。  言葉で「それはちがう」というだけでなく、そのことを語る具体的な事実を作っていくことがなによりも大事だと考えています。「支援」などという、どこか他人事の、上から目線の関わりではなく、あくまで彼らの側に立ち、彼らと一緒に豊かなものを作り続けることです。「ぷかぷか」はそのことを地域の中でやってきました。そしてワークショップはまさに彼らと一緒に豊かな文化を創り出すものです。  話をワークショップに戻します。  第三期第一回目のワークショップの報告です。  コミュニケーションゲームの最後に、自分で身につけているものも使ってグループごとに、どこがいちばん長くできるかのゲームをしました。靴や靴下ハンカチ、タオルなども動員して、みんな必死になって腕や足を伸ばして挑戦しました。この必死になる感じがすごくよかったですね。適当にゲームを楽しむのではなく、必死になってゲームをやるとき、人は皮がちょっとだけむけて、ちょっとだけ自由になれます。こんな体験を積み重ねていって、ワークショップはあたらしいものを創り出すことができるのです。  コミュニケーションゲームのあと、オペラシアターこんにゃく座のオペラ『セロ弾きのゴーシュ』のDVDを見ました。原作は30年ほど前に初演され、今回見たDVDは10年前に上演されたときのもので、演出も歌役者もかなり変わっていましたが、それでもこんにゃく座のオペラってほんとうに楽しいとしみじみ思える作品でした。みんな集中して見てくれたので『セロ弾きのゴーシュ』がどういうお話かは十分伝わった気がしました。(DVD見たい方、高崎までメールください。お貸ししますよ。『セロ弾きのゴーシュ』という作品がこんにゃく座の手にかかってオペラになると10倍くらい楽しくなる、ということがよくわかります。pukapuka@ked.biglobe.ne.jp)  オペラ『セロ弾きのゴーシュ』でゴーシュが家(といっても川端にあるこわれた水車小屋)に帰って夜セロを練習するときに歌う歌「ふをめくりながら」と、タヌキが登場する場面で歌われる歌「てぃーちでぃーる」を練習しました。  ♪ 譜をめくりながら 弾いては考え、考えては弾き…♪  これは左手でチェロを持ち、右手で弦を持って弾くようにして歌うと、とても気分の出る歌です。養護学校で『セロ弾きのゴーシュ』をやったときは、これを真っ先に練習しました。  二曲ともピアニストのあみちゃんが一回歌っただけですぐにみんな歌えるようになり、その吸収力にちょっとびっくりでした。   午後はあみちゃんの紹介でオーケストラで演奏しているチェロ奏者江原さんがチェロの生演奏をしてくれました。そのときの雰囲気をちょっとだけ楽しんで下さい。 「白鳥」 www.youtube.com www.youtube.com   流れ星の音まで入った「上を向いて歩こう」。江原さんによるすばらしいアレンジ曲。 www.youtube.com 「ザッツ エンターテイメント」 www.youtube.com  なんとも贅沢な時間でした。  演奏の終わったあとはチェロやチェロを弾く指を触らせてもらいました。  『セロ弾きのゴーシュ』の発表会(来年1月29日)でもスケジュールが合えば来てもらえるかも知れません。  チェロの生演奏を聴いたあと、みんなでゴーシュの家を訪ねるいろんな動物になったり、ゴーシュに何を頼むかを考えたりしました。  なぜかイグアナが登場  そのイグアナグル−プがゴーシュの役をやり、そこへほかのグループが 「最近眠られないんです。どうしたらいいですか?」 と訪ねてきました。期せずしてツジさんが 「チャン、チャララララン…」 と「禁じられた遊び」を口ずさみ、眠られなくて困っていたグループの人たちが眠ってしまう、という即興の芝居ができました。  イグアナグル−プに入っていたチェロの演奏者江原さんは 「およそ生産性には興味のないまったりグループの中でどうなることかと思いましたが、禁じられた遊びが飛び出してきたときは、ほんとうにびっくりしました。すごい可能性のある人たちですね」 とおっしゃっていました。  こういう反応を積み重ねていくと、今までにない面白い『セロ弾きのゴーシュ』ができあがるのではないかと思います。  発表会は来年1月29日(日)の午後、みどりアートパークホールでおこなわれる『表現の市場』でおこないます。ひょっとしたら本物のチェロの演奏が聴けるかも知れません。
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