かずやさんが大学で授業やります。
知り合いの大学の先生が「ボランティアとNPO・NGO」という授業をやっていて、先日の入管法改悪の動きと市民による阻止行動など、社会運動についていろいろ話をしているようです。 その中で学生さんから、署名運動をいくらやっても社会はなかなか変わらない、といった社会に希望が持てないような感想がFacebookで紹介されていました。こりゃいかんなと思い、書き込みをしました。 「議論も大事ですが、まずは具体的に動いてみてはどうでしょうか。いろんなことが見えてくること間違いなしです。」 「抽象的な議論ではなく、具体的な問題に対し、どうしたらいいかをみんなで考え、それをとにかく実際にやってみる。たとえそれがうまくいかなくても、抽象的な議論よりははるかに収穫があるはず。」 この書き込みがきっかけで実際に大学で授業をやることになりました。かずやさんも参加し、友達大作戦をテーマにした授業をします。 かずやさんは昨年夏、施設を出て、アパートで自立生活を始めました。かずやさんはときどき大声を出します。二階に住んでいる方から、その大声に対して苦情が来ました。 介護者を派遣している事業所の方でとりあえず謝ったそうですが、かずやさんは 「大声を出さないで下さい」 といっても、 「はい、わかりました」 と聞いてくれる人ではありません。これからも大声を出します。 ならば大声と共存する方法を考えないと、この先、お互いが辛いことになります。そこでスタートしたのが「友達大作戦」。要は、ただ謝るだけでなく、 「友達になっちゃおう」 というわけです。 大声が聞こえて、 「うるさい!」 と怒鳴り込むのではなく、 「ったくしょーがねーなー」 とブツブツ言いながらも、なんとかそこで踏みとどまれる関係。 街で会えば 「よう、元気?」 って声をかけられるような関係。 「かずやんちカフェ」を開く時は、一緒においしいコーヒー飲みながら、いろんな話ができる関係。 餅つきをやる時は、かずやさんと一緒に餅つきを楽しんだりする関係。 そんな関係になるにはどうしたらいいかを考えるのが「友達大作戦」。 授業では実際にかずやさんの大声を聞いてもらい、どうしたらいいかを学生さんに考えてもらいます。そこで出てきたアイデアは、実際に現場で試してみます。うまくいくかどうかはやってみないとわかりません。 この「実際に現場で試す」というところが大事です。あーだこーだ言うだけで終わらないところが今回の授業。ほんの思いつきのアイデアであっても、それがおもしろいものであれば社会は反応します。 「自分の手で、社会が変えられるんだ」 って、そんなことに気づくかも知れません。 その気づきは、これから長い人生を生きていく上で大きな自信になります。社会に希望が持てます。若い人たちが社会に希望が持てるって、なんかすごいじゃないですか。 「友達大作戦」の対象は二階の人だけでなく、地域社会全体の人です。地域の人たちみんなといい関係を作ること、それが地域に暮らすことの意味だと思います。 街を歩くと、 「こんにちは」「元気?」 って、いろんな人から声をかけられる関係があることは、とても大事なことです。こういった関係がお互いを豊かにします。重度障害者の自立生活が地域社会を豊かにしていくのです。 問題は授業の時にかずやさんが大声を出してくれるかどうかわからない、ということです。先日もかずやさんの陶芸教室をテレビが取材に来たのですが、その日はかずやさん陶芸に全く乗ってこなくて、本当に困りました。そういうことが十分に予想されるのです。なので、アパートで大声出した時に映像で記録していただいて、一応それを持っていく予定でいます。 いずれにしても、そういうかずやさんのわからなさと、頭抱えながらつきあっていくところにこそ、かずやさんとのおつきあいの奥深さというか、面白さがあるような気がします。 6月14日(月)早稲田大学で授業をやります。どうなりますか。また報告します。 機嫌がいいと下の写真のような感じですが、授業の日、こんな顔をしてくれるかどうかは全くわかりません。そのわからなさの中での授業です。 友達大作戦はこちら www.pukapuka.or.jp