近所にお住まいで、毎日のように「 ぷかぷかさんのお昼ごはん」にごはんを食べに来るオジサンがいます。オジサンさんは数年前に奥さんを亡くし、子どももいないので一人暮らし。訪ねてくる友だちもいなくて、家にこもっていると、ひとこともしゃべらない日もあるそうです。そんなオジサンにとって、「 ぷかぷかさんのお昼ごはん」はいろんな人とおしゃべりできる貴重な場所のようです。
わりと面倒くさがりのようで、ここ1年くらい庭がほったらかしで、ジャングルのようになっているそうです。手がつけられない状態なので、業者に頼んできれいにしてもらうとおっしゃってました。いくらかかるんですか?と聞くと12万円もかかるとか。年金暮らしのオジサンにとっては大金なので、食費を削って払います、と笑いながら話していました。
「たかが草刈りに12万円も支払うなんてばかばかしいですよ。なんでしたらぷかぷかさん達といっしょにオジサンちまで行って、草刈りやりますよ。」
「ジャングルになっているので無理ですよ」
「家の庭でしょ、どの程度のジャングルか、一度見せて下さい、自分たちでできるかどうか確かめますよ」
「そこまで言うのでしたら、どうぞ見に来て下さい」
という話をしたのが木曜日。
で、金曜日もオジサン、ごはん食べに来たので、一緒に食べながら
「晩ご飯はどうしてるんですか?自分で何か作るんですか?」
「コーヒーカップに納豆と卵を入れて、電子レンジでチンするだけ」
「それだけですか?」
「それだけです」
「なんか淋しくないですか?」
「いや、別に。もうごはん食べたいと思わないんです」
「ごはん食べないと死んでしまいますよ」
「いつ死んでもいいんですよ。もう人生に未練もないし…」
奥さんを亡くし、子どももいないとこうなってしまうのかと、他人事ながらなんだか淋しい気持ちになりました。放っておくと、そのままオジサンの人生がフェードアウトするように思いました。
「あのー、とにかく庭を見せて下さい』
と、オジサンちに庭を見に行きました。
オジサンは1年ぐらい手入れしていない、とおっしゃってましたが、庭を見る限り、何年も人が住んでいないような雰囲気でした。蚊がものすごくたくさんいました。これでは近所から苦情が出ます。
かなり手強い感じがしましたが、庭をいくつかに区切って、一日ひと区画と決めてやっていけば、なんとかなると思いました。
「大丈夫、なんとかします!」
「そうですか、じゃぁ、お願いしようかな。」
「来週、もう一回若いスタッフに見せて下さい」
「はい、いいですよ、どうぞ」
ということで別れました。
20分くらいしてスタッフの携帯にオジサンから電話が入りました。業者の方は断りました、と。それと携帯は持ち歩いていないので、そちらからかけてもつながらないかも、といってました。
携帯を持ち歩いていても、かけてくる人がいないんだと思いました。かける相手も。
郵便受けは、入り口ではなく、ずっと奥に入り込んだところにあって、名前も書いてありませんでした。手紙なども来ないのかな、と思いました。
オジサンの家のエリアは、毎月「ぷかぷかしんぶん」を配布しているのですが、郵便受けがなかったので、しんぶんを入れたことがなかったとスタッフは言ってました。入って行くのがためらわれるくらい、入り口は寂れていました。
ここは絶対にぷかぷかさんと一緒に来て草刈りやろうと思いました。なんかもうほっとけない感じがしたのです。
庭をきれいにすれば、気分がすっきりします。きれいになった庭を眺めながら飲むお茶はすごくおいしいと思います。お茶飲みながら、生きてるっていいな、ってちょっとでも思ってくれればと思います。
それと気が向けば、ぷかぷかさんと一緒に草刈りをやって欲しい。ぷかぷかさんと楽しい話をして欲しい。もうそれだけで元気が出ます。
どちらかといえば、草刈りよりも、おしゃべりする時間の方をたくさんとりたい。オジサンにとっては、そっちの方が大事な気がします。
ぷかぷかさんのチカラが、こういうときこそ発揮できます。地域の一人暮らしのお年寄りを元気にします。ぷかぷかさん達の、ぷかぷかさんにしかできない新しい仕事が始まるかも知れません。