昨日の瀬谷区役所での販売の売り上げは49,660円もありました。わずか1時間足らずでこれだけの売り上げがあったのです。福祉事業所の販売としては、もう、驚異的としか言いようがない気がします。
3年半前、「ぷかぷか」を始めた頃は、天然酵母、国産小麦のパンなのにどうして売れないんだろう、と頭を抱えてしまうくらい売れませんでした。それでもいつかきっと売れる!と思い続けてきたのですが、その思いは《あこ天然酵母》で作ったパンのおいしさに出会ったところから始まっています。本の原稿からその時のお話を書き出してみます。
パンを作る際に使用する天然酵母にもいろいろあって、どの酵母を使うか迷っていた頃、「あこ天然酵母」というすばらしい酵母に出会いました。
キューハンという業務用ガスオーブンのメーカーの主催するパン教室に行った時のことです。焼きあがった食パンが本当においしくて、ちょっと幸せな気分になるほどのおいしさでした。
そのおいしさをかみしめながら「これで勝負しよう」とはっきり思いました。「ほどほど売れればいい」ではなく、あくまで「勝負する」という緊張感を伴う判断でした。
「あこ天然酵母」はイーストに比べればはるかにコストはかかります。価格のみを考えると、天然酵母はイーストの2倍強です。発酵時間を考えると一次発酵はイースト1時間に対して、天然酵母は12時間。発酵器の電気代が12倍もかかることになります。当然パンの値段も張ることになります。そんな高いパンでやっていけるのかどうか。
全くわからない中で、それでもこの食パンの味で「勝負しよう」と私は思ったのです。そのくらいの決意がないと、前へ進めない気がしていました。
パンについては全くの素人でしたから、なにか一つくらい勝てるものがないと、やっぱり不安でした。「この味ならいける」という判断も素人の判断です。
それでもその判断に賭けるしかありませんでした。
ふつうの福祉事業所であれば、こんな素人判断で事業を始めたりしないでしょう。こういう素人判断こそが、「福祉起業家」の発想になるのだと思います。
ですから1年目、2年目と赤字が続いたときも、「いつか絶対に勝つ!」と密かに思っていました。そうでも思わないと自分を支えきれない感じでした。
そして、3年目。ようやくほんの少しですが黒字になったのでした。4年目の今、「おいしい」と言ってくれるお客さんがじわじわと増え、これからが本当に楽しみです。
瀬谷区役所での驚異的な売り上げは、あのときのどきどきしながらの判断が間違ってなかったと言うことでしょう。どこまでこれが伸びていくのか、毎週わくわくしながら外販部隊が帰ってくるのを待っています。