ぷかぷか日記

できないことがあるからこそ、できることがある。

 ぷかぷかのメンバーさんは、一人ではいろいろできないことがあります。でも、できないことがあるからこそ、できることがある、ことがだんだんわかってきました。

 つい先日、「ぷかぷかしんぶん」を配っていたメンバーさんが迷子になりました。迷子になったメンバーさんは、帰り道がわからなくなり、近くにいた地域の方に、帰り道がわからなくなって困っていることを伝えました。その方は時々ぷかぷかのパンを買いに来られる方で、「ぷかぷかしんぶん」も読んでいる方でした。その方はすぐパン屋に電話を入れてくれ、スタッフが迎えに行きました。迎えに行くまで、その方が、迷子になって不安になっているメンバーさんの側についていてくれました。

 今日もその方が、迷子になった方は大丈夫でしたか?と心配してくださいました。

 メンバーさんがみんなしっかりしていて、迷子にならなかったら、こんな「物語」は生まれなかったと思います。できないことがあるからこそできたことだと思います。

 

 先日ケンさんが作った郵便局の人たちとの楽しい関係を紹介しましたが、ケンさんがいろいろできないことがあるからこそできた関係です。ケンさんが普通の人だったら、お互い

「いいとも!」

なんて言い合う楽しい時間は作れなかったと思います。ケンさんのおかげで郵便局のおねぇさんたちが一瞬自由になれた、ともいえると思います。仕事中に「いいとも!」なんて、普通は言いません。言えません、といった方がいいでしょう。でも、ケンさんがいたことで、一瞬でもそういうことが言い合えた、そういう和やかな雰囲気ができたというのは、やはりすごいことだと思うのです。

 ぷかぷかでいろんな物語が生まれたのも、メンバーさんのおかげです。メンバーさんがいなければ、ただのパン屋で、いろんな楽しい物語は生まれなかったと思います。ホームページにいろんな物語がぎっしり詰まっているのも、彼らのおかげです。

 そういったことを考えていくと、支えられているのは実は私たちの方だとあらためて思います。

 いろんなことができないからこそ、いろんな人が、そのできないところを補い、そのことで新しい関係が生まれ、新しい物語が生まれたんだと思います。

 

 もう30年くらい前、なおちゃんというかわいい女の子がいました。なおちゃんには障がいがありました。お母さんはなおちゃんが小さな頃から、将来生きていく場を作る準備を仲間のお母さんたちといっしょに始めました。バザーを何度もやっていく中で地域に少しずつ応援する人たちも増え、そんな関係の中で小さな作業所がスタートしました。毎年行われるお祭りには地域のたくさんの人たちがやってきて、作業所を支えている人たちの層の厚さがそのまま出ているようでした。作業所はやがて社会福祉法人になり、今は大きな福祉事業所になっています。なおちゃんというかわいい女の子から始まった小さな物語が、こんな大きな福祉事業所に発展したのです。

 できないことはだめ、みたいな風潮がありますが、でも、できない人がいることで、新しいつながりができ、それがどんどん広がって、大きな福祉事業所に発展することもあるのです。

 できないことは、ですから、侮れないのです。

 

 

米寿のプレゼント

  母が米寿を迎え、何かプレゼントしようと、ネットでいろいろ調べました。一番多いのがなぜか黄色いちゃんちゃんこだそうで、こんなものプレゼントしても何の意味もないなと思いました。で、いろいろ考え、パソコンをプレゼントすることにしました。今までパソコンはさわったこともありません。ですからインターネットの世界も全く知らなくて、私が作っているぷかぷかのホームページも見たことがありません。

 88歳で足下もおぼつかないような状態なので、パソコンに挑戦するのは本当に大冒険です。でも、インターネットの世界と出会い、自分の世界がぐ〜んと広がるなら、88歳にして人生が更に前向きになります。

 で、今日、母の部屋(介護付き老人ホームにいます)でインターネットの設定をしてきました。パソコンはMacです。電源を入れ、Safariを立ち上げるだけなのですが、マウスでSafariをクリックする、というたったそれだけのことが母にとっては実に大変なことであることが実際にやってみてよくわかりました。それでも1時間くらいマウスをさわっていると、だんだん要領がわかってきたようでした。

 母は棟方志功の版画が好きです。Yahooの検索ページで「棟方志功」と入れると、版画がたくさん出てきました。リンクの張ってある版画をクリックすると、また新しい版画がずらずらっと出てきました。そのことに本当に驚いたようでした。

 部屋には棟方志功の分厚い版画集があるのですが、その何倍も広がる世界を見て、本当にびっくりしたようでした。新しい世界との出会いを感じました。

 88歳にして、更にわくわくするようなものが見つかるなら、黄色いちゃんちゃんこよりはるかに意味のあるプレゼントになると思いました。

いいとも!

 毎朝、お天気ボードを描いているケンさんといっしょに、カフェにお天気ボードを届け、写真を撮ったあと、郵便局に売上金を入金に行きます。

 ケンさんは郵便局に着くと大きな声で

「おはようございます!」

と、あいさつします。はじめはみんなびっくりして、ちょっと引いた感じがあったのですが、毎日あいさつを繰り返しているうちに、ケンさんはこういう人なんだということがだんだんわかってきて、笑顔で対応してくれます。こういう変化がいいなと思いました。

 同じ地域の中で、「ぷかぷか」の事業拡大計画に、障害者施設が広がっていくことが「不気味だ」といった人がいて、かなりがっかりしたことがあるのですが、郵便局の人たちの変化を見ていると、また希望が持てます。

 この間なんかケンさんが

「いいとも!」

って、手を振り上げると、窓口の女性もいっしょに

「いいとも!」

って、手を振り上げてくれて、本当にうれしく思いました。こういう関係をちょっとずつ広げていきたいと思いました。

お茶とバームクーヘンと「力」

 ありがとうカードにお茶とバームクーヘンと「力」の文字を書いた人がいました。どういう意味が聞いても、よくわかりませんでした。うまく説明できなくても、彼の中にはお茶とバームクーヘンと「力」の文字を結ぶ物語があったのだと思います。どんな物語なんだろうと想像するのが楽しいですね。

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タイタニック号

  もっちゃんがまたまたすごい絵を描いてくれました。タイタニック号の船室です。なぜか日本郵船になっています。船室を見ていくと「西洋客室」「中華客室」「和風客室」「1等客室」〜4等客室」とあり、個室には名前が入っています。「映画室」「職員室」「分煙室」それに「乾燥室」というのもあります。なぜか「調理室」の隣には「山寺」があります。

 どんな物語を作りながらこの絵を描いたんだろう、と思います。

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ある日こんな絵が壁に

 ある日気がつくとこんな楽しい絵が壁に貼ってありました。

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こんな絵も貼ってありました。

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笠地蔵の大行進の絵も貼ってありました。

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 お地蔵さんの大行列のそばをトラックが走っている、というレイアウトがなんとも楽しいです。

 本人はそれほど意識もせず、チャッチャッと貼り付けたのだと思うのですが、意識もせずにこういう絵を壁に貼り付けるセンスがすばらしいと思うのです。

 こんな絵の貼ってある部屋で仕事ができる幸せを思います。

パン職人募集!

パンの増産に伴い、パン職人を募集します。

・パンを作ることに情熱を傾けられる方。

・天然酵母、国産小麦のパンに興味のある方。

・ここにしかないオリジナリティあふれるパンの開発にトライしてみようと思われる方。

・「ぷかぷか」では障がいのある方たちが働いています。彼らといっしょに働いてみようと思われる方。

★「ぷかぷか」での仕事は、自分の人生を賭けられるくらいおもしろい仕事です。賭けるに値する仕事です。志のある方、ぜひおいでください。

勤務は朝6時(注文が多いときは4時か5時)から午後3時、日曜日、祝日、第1,第3土曜日休みですから、パン屋としてはかなり楽な職場だと思います。

★経験のある方、優遇します。

 

 問い合わせ:メール pukapuka@ked.biglobe.ne.jp

                        電話 045-453-8511   高崎、富永

 

      ホームページは

       http://pukapuka-pan.xsrv.jp

 

履歴書送り先:横浜市緑区霧が丘4丁目17-3 NPO法人ぷかぷか

 

      

ああ、あの陶芸作品を作ってる人たちとやるのね

 障がいのある人たちを対象にした陶芸教室を久しぶりにやりました。

 陶芸教室を始めたのは10年ほど前。陶芸作品を通して、地域にこんなすてきな作品を作る人がいるんですよ、こんな人とはいっしょに生きていった方がいいですよ、という思いを伝えたかったからです。駅前の大きな花屋さんの一角を借りて、陶芸作品を展示させていただき、ご希望の方にはほとんど実費で販売しました。それほど売れたわけではありませんが、1週間ごとに作品を入れ替えたので、新しい作品を見るのを楽しみにしている人がかなりいたようです。

 毎年秋に行われる街のお祭りには優先的に場所を貸してもらい、陶芸作品の販売をしました。

「花屋さんでいつも楽しませてもらっていますよ」

と言ってくれるお客さんも何人かいて、とてもうれしく思いました。地域の人たちはしっかり見てるんだなぁと思いました。

 ぷかぷかを始めるとき、あちこちあいさつに行ったのですが、

「ああ、あの陶芸作品を作ってる人たちとやるのね」

と、どんな人たちとやるのか、いちいち説明しなくてすむことがたびたびありました。彼らのことを言葉で説明するのは、すごく難しいので、陶芸作品から彼らのことをイメージしてくれたことは本当に助かりました。彼らの作品が、言葉を超えるメッセージをきちんと伝えてくれてたんだなぁ、と作品の持っている力をあらためて思ったものでした。

 陶芸作品は、私の予想を遙かに超えて、街の人たちのなかに広がり、メッセージを伝え、人のつながりを作っていたようでした。

 

 

物語を生み、6ヶ月持つ人形

 6月から始める演劇ワークショップの打ち合わせをしました。デフパペットシアター(ろう者と聴者が共に創る人形劇団)の役者、制作担当、元黒テントの役者、プロのピアニスト、それに私を入れて7名で打ち合わせをやりました。

 『森は生きている』に出てくる12月(つき)の神様の人形作りを出発点に、楽しい、奇想天外な物語を作っていく予定です。

 人形作りはデフパペットシアターの人たちが進行役を引き受けるのですが、簡単で、それでいて物語が自然に生まれてくるような人形を作ります。問題は、その人形がワークショップを続ける6ヶ月の間、壊れずに持つかどうかです。

 ワークショップは月一回のペースで6ヶ月続けます。一回ごとに最後は作った物語をみんなの前で発表します。ただその物語は、一ヶ月、間が開くと、みんな忘れてしまい、再度立ち上げるのは至難の業。そのときに手がかりになるのが人形です。人形が壊れると、物語も壊れてしまいます。

 といってデフパペットシアターが舞台で使っているようなしっかりした人形は、作るのに時間がかかります。ワークショップのなかで人形作りに使えるのは、全体のスケジュールから考えて2時間ぐらい。そのくらいの時間で作れて、物語が生まれ、6ヶ月持つような人形をデフパペットシアターに提案してもらうことにしました。

 次回の打ち合わせでは、その提案に沿って実際に人形を作ってみることになりました。なんだかもうこれだけでわくわくします。

 

 ワークショップの日程、参加者募集のお知らせは近々ぷかぷかのホームページで発表します。

 

 

 

 

ぷかぷかは障がい者差別と闘っているのか、ということ

 先日、サッカーのサポーターが掲げた差別的な横断幕が問題になり、「差別と闘う」「差別を撲滅する」といった勇ましく、ちょっと懐かしい言葉が1日マスコミをにぎわせました。

 「ぷかぷか」であれば、さしずめ「障がい者差別と闘う」と言ったところになるのでしょうか。でも、あまりそんな風には考えていません。

 ぷかぷかの事業を拡大する案に「そんなふうに障がい者施設が広がっていくことに“不気味さ”を覚える」と言った方がいましたが、その言葉は、社会が障がいのある人たちをどんな風に見ているか、を象徴していると思います。

 その言葉にどう答えていくのか。それは、この社会のなかで自分はどう生きるのか、といったことを問い続けていくことだと思います。私はどこまでも彼らといっしょに生きていこうと思っています。「不気味だ」などと失礼なことを言われる彼らの側に、私は断固として立ちたいと思うのです。

 そんなことをいわれて「くやしいから」という思いもありますが、それ以上に、彼らにとことん惚れ込んでしまったからです。彼らといっしょに生きていった方が、人生が豊かになると思うからです。

 私は彼らのおかげで自分自身を縛っていた「規範」というものから自由になれました。そのおかげで生きることがとても楽になりました。楽になることで、人生が本当に楽しくなった気がしています。

 彼らの自由きわまる発想、自由奔放な表現に出会い、こんなすてきな人たちとはいっしょに生きていった方が絶対に「得!」だと思うようになりました。すばらしく豊かなものに出会った気がしたからです。

 「不気味だ」などといって、彼らを社会から排除していくとき、社会は徐々にやせこけていくように思います。社会のなかで許容できる幅が狭まり、お互いが生き辛くなります。

 だから「障がいのある人たちとはいっしょに生きていった方がいいよ」と言っているのです。そう言い続け、それを実践することが、「不気味だ」という言葉に対する私の答えです。

 

 

 

 

 

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