ぷかぷか日記

「しんごっち展」やります。その2

 7月11日(土)から7月17日(金)まで、ぷかぷかカフェで「しんごっち展」をやります。昨年5月に脳腫瘍で亡くなった安井伸吾さんの絵画展です。

 お母さんは今、横浜で「小児ホスピス」を立ち上げる活動のお手伝いをなさっています。「余命何ヶ月」と宣告された子どもが、それでも夢を追い続けられるような、そして家族も安心して過ごせるような、そんな「横浜小児ホスピス」を立ち上げるお手伝いをしたいとおっしゃっています。それは伸吾さんと最後の日々を過ごした経験から来ているように思いました。「子どもが最後まで夢を追い続けられるような」という言葉は、まさに伸吾さんの生き方そのものだったように思います。

 私は伸吾さんのお見舞いに行く中で、お母さんの思いにふれることができました。当時の日記を再度載せ、「子どもが最後まで夢を追い続けられるような」場所を作ることの意味を考えてみたいと思います。 

 

2014年3月9日

 昨日(救急搬送の翌々日)の夕方、伸吾さんのお見舞いに行きました。

 伸吾さんは眠っている感じでしたが、声をかけると、うっすらと目を開けました。

 「伸吾さん、タカサキだよ、わかる?伸吾さんの描いた電車でストラップ作ったよ、ちょっと見て」

 というと、

「う、う〜ん」

と、ちらっと見ましたが、また目を閉じてしまいました。

「ねぇ、伸吾さん、このストラップ、伸吾さんの描いた電車で作ったんだよ。ちょっと見てよ」

また、うっすらと目を開け、ストラップを見てくれました。

「すっごくいいストラップだよ、この電車、伸吾さんが描いたんだよ。覚えてる?」

「う、おぼえてる」

といったような気がしましたが、よく聞き取れませんでした。

 一緒に行ったぷかぷかの女性スタッフ二人に交代。

 今度は私の時より目を開けた感じがしましたが、しばらくしてまた目を閉じてしまいました。

 

 木曜日に病院に行き、この状態だと、あと一週間か十日ですね、といわれ、連れて帰る覚悟を決めた、とお母さんはおっしゃっていました。「覚悟」というのは、こういうときにこそ使う、自分にナイフを突きつけるほどの言葉なんだと思いました。

 入院してもいいよ、といわれ、最後の最後まで迷いましたが、自分で最期は家で看取ると決めていたので、連れて帰ってきました、とひとことひとこと噛みしめるようにおっしゃっていました。

 

 お母さんが伸吾さんを家に連れて帰る理由を、伸吾さんのお見舞いに行って、少し納得することができました。

 お母さんのピアノの教え子さんたちが3人ほど介護に入っていて、交代で声をかけたり、お茶飲んだり、おしゃべりしていたりしていて、深刻な雰囲気はありませんでした。私も一緒にお茶を飲み、お菓子をごちそうになってきました。病院に入院していたら、たぶんこんな風にはいかないだろうと思います。

 訪問看護と在宅医療が毎日入り、夜中でも対応してくれるそうです。

 いつもと変わらない温かな家庭的雰囲気の中に伸吾さんはいました。少しずつ元気をなくしてはいますが、温かな雰囲気は、伸吾さんをしっかり支えているように思いました。

 病院を退院してから、調子のいい日は「東急5050系4000番台」のNゲージの模型をバックに入れ、お母さんの友人といっしょにレンタルレイアウト(街の模型の中に鉄道模型を走らせることができるようにレールを設置し、それを時間貸ししている施設)に行き、自分の模型を走らせていたそうです。街の模型の中を自分の電車が走るなんて、すっごく楽しいだろうなと思います。「すごいよ、すごいよ」って伸吾さんの興奮気味の声が聞こえてきそうです。

 病院に入院したままだと、こんなことはできなかったと思います。お母さんはこんないい時間を伸吾さんに持たせたくて、延命のための治療を打ち切り、家に連れて帰ったんだと、あらためて納得したのでした。

  大雪の日、インターコンチネンタルホテルで撮った写真をメールで送ってくれました。その頃から少しずつ悪くなっていたようですが、それでもメールで届いた伸吾さんの表情は、いつもの調子で

「今、すっごく楽しいよ」

って、いってるようでした。ホテルの窓から撮った写真もメールで送ってきたくらいですから、そのときのわくわくした気持ちを伝えたかったんだと思います。これもお母さんが伸吾さんにプレゼントしたすばらしい時間だったんだなぁ、と今思います。

 今はベッドで携帯を持つことも難しい状態ですが、それでも力を振り絞って携帯で何かを撮ろうとしていました、とおばあちゃんが話してくれました。伸吾さんってすごいなぁと思いました。私も年とって動けなくなっても、最後までぷかぷか日記を書き続けようと、伸吾さんの話を聞きながら思いました。

 

 伸吾さんは予断の許さない状態が続いています。でも、みんなに囲まれ、温かな雰囲気の中で、いい時間を過ごしているように思います。  

 

                           (つづく)

 

 

 

 

 

 

  

 

11秒の動画に、人生の楽しみ方が…

 7月11日(土)から7月17日(金)、ぷかぷかカフェで「しんごっち展」をやるのですが、そのしんごっちが作った動画がお母さんから送られてきました。わずか11秒の動画です。わずか11秒ですが、しんごっちがどういう人生を生きていたのかがくっきりとわかる動画です。

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tube.com

 NHKの「ピタゴラスイッチ」はとても面白い番組です。でも、自分であの仕組みを作る人はまれです。「あっ、おもしろい!」と思うことと、「自分で作ってみよう」と思うこととの間には、なかなか越えられない壁があります。それをしんごっちは、いとも簡単に飛び越えます。

 おもしろい、と思うことは、とにかく自分でやってみる、ことがしんごっちの人生の楽しみ方。やってみるだけでなく、それを動画に撮り、自分で「ピタゴラスイッチ」というアナウンスまで入れています。

 ピタゴラスイッチは動くことが楽しいので、完成後、作ったものの記録として動画に撮る人は結構いるのかも知れません。でもそこに「ピタゴラスイッチ」と自分でアナウンスを入れる、というのは、作ったものの記録を一つの「作品」にし、それを楽しもう、という意思が感じられます。ビー玉が転がり、最後に「ピタゴラスイッチ」のアナウンスを入れる、というシナリオがあったのでしょう。これは考えただけでもわくわくするような企画です。

 シナリオがどの段階でできあがったのかは知る由もありません。ピタゴラスイッチを作る前からあったのか、それができてから、あ、こんな動画作ったらもっとおもしろい、と思ったのか。

 いずれにしても、ピタゴラスイッチを考える楽しさ、それを作る楽しさ、完成したものを動画に撮る楽しさ、最後にアナウンスを入れ、作品に仕上げる楽しさ、そしてそれを見る楽しさ、誰かに見せる楽しさ。

 わずか11秒の動画に、しんごっちの人生の楽しみ方が凝縮されているように思うのです。

 

ぷかぷかさんたちが街を耕し続けた結果

  自閉症の4歳の弟に心ない言葉を投げつけた小学生に6歳の兄がすばらしい言葉を投げ返した話がFacebookで流れてきました。

 http://buzz-media.net/moving/5237/

 

 障がいのある人たちは、やはりまわりの世界を豊かにしているのだと思います。だからわずか6歳のお兄ちゃんがこんなすてきな言葉を口にできたのだと思います。大人以上にしっかりこの世界を見ているように思いました。 

 

 ぷかぷかは障がいのある人たちと一緒に生きていきたいと思って始めたお店です。ただただ彼らの人としての魅力に惚れ込んだ、という単純な理由が発端です。でも、ぷかぷかの運営母体となるNPO法人ぷかぷかの設立目的には、そんなことは書けませんから、「障がいのある人たちの社会的生きにくさを解消する」という言葉を持ってきました。街の中にお店を作ることで、街の人たちと彼らとの出会いの機会を作る、というわけです。

 5年たった今、ぷかぷかは「彼らの社会的生きにくさを解消する」といったことだけでなく、何よりも「街の人たちを豊かにしている」ということに気がつきました。一番はっきりそれを思ったのは映画『ぷかぷか』の上映会での感想でした。

 

pukapuka-pan.hatenablog.com

 

 ぷかぷかが街にあることで街が豊かになるって、こんなことは設立当初、全く予想していませんでした。これこそぷかぷかさんたちが毎日ぷかぷかで働くことで街を耕し続けた結果だろうと思います。彼らにあらためて拍手!です。

 

 6歳のお兄ちゃんが発したような言葉を私たちも持ちたいと思うのです。みんながそんな言葉を自分のものにすれば、社会はもっともっとすてきになると思います。

 

歌のワークショップ やりました。

 オペラシアターこんにゃく座の歌役者井村タカオさん、飯野薫さん、ピアニストの湯田亜希さんをお招きして歌のワークショップをやりました。参加したのは地域の大人の方たちや子どもたち、それにぷかぷかのメンバーさん、総勢30人くらいでした。

 最初に井村さんと飯野さんが『僕たちのオペラハウス』を歌いました。舞台に立って歌っているのを聞くのと違って、リハーサル室という狭い部屋で聞くと、やっぱりすごい迫力でした。ピアノも前日の夜調律をやってもらったせいか、ものすごくきれいな音でした。なんといってもピアニストがすばらしくよかったです。7月19日の本番公演の時も同じピアニストが弾きます。

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 今まで書き忘れていましたが、こんにゃく座のオペラはピアノ一台で進行していきます。ピアノ一台でこれだけ多彩な世界を表現できるということです。うれしい時も哀しい時も、火事場の緊張感も、人々の安堵感も、未来への希望もすべてピアノ一台で表現します。

 

 オペラシアターこんにゃく座の由来でもある「こんにゃく体操」をみんなでやりました。硬くなった身体をやわらかくほぐしていきます。

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 オペラは台詞が歌になっています。こんにゃく座の初期の作品『あまんじゃくとうりこひめ』を使って、台詞でお話を進行した場合とそれを歌にした場合の違いを実際にやってもらいました。

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 歌で表現すると作品の肌触り、広がり、深さといったものが、台詞だけの場合と全く違っていて、こんにゃく座がオペラにこだわって作品を創り続けている理由が少し見えた気がしました。

 これに引き続いて、ちょっとした挨拶、自己紹介を歌でやってみる、というのをみんなでやりました。このあたりになるとぷかぷかのメンバーさんの独断場という感じでした。

 ふだんはおとなしいのぼさんはすばらしいバリトンで自己紹介しました。

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 タクミさんはどうしても一人でやりたいと一人でがんばっていました。

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 ヨッシーと辻さんは打ち合わせもほとんどなしで、どんどんお話と歌が出てくる感じでした。すばらしいクリエイターです。

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 テトのパン屋でパンを作っているところの歌です。

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 ここは鳴り物を鳴らしながらみんなで歌う予定でしたが、歌がちょっとむつかしいので、今回は手拍子だけでした。次回はぜひみんなでいっしょに歌いたいと思います。

 

 『ココのアリア』は飯野薫さんがソロを聴かせてくれました。心にしみる歌でした。次回はぜひみんなで歌いたいと思っています。

 

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 最後に『ロはロボットのロ』のテーマソングでもある『テトのパンは あ』をみんなで歌いました。これは次回のワークショップも入れてぜひみんなで覚えたい歌です。

www.youtube.com

 

 次回の「歌のワークショップ」は 7月4日(土)です。午後1時〜3時、みどりアートパークリハーサル室です。申し込みはpukapuka@ked.biglobe.ne.jp もしくは045-453-8511 NPO法人ぷかぷか事務所。

♪ ふんわりやわらかな白い生地のパン

 6月13日(土) 歌のワークショップではパン工場の歌を鳴り物を鳴らしながら歌役者さんといっしょに楽しく歌います。(午後1時〜3時、みどりアートパークリハーサル室)

 

ママモンロー  仕事はじめ(台詞)
              ふんわりやわらかな白い生地のパンはできたかい?
テト            はい、ママモンロー。ふんわりやわらかな白い生地のパンに
                くるみをたっぷりかけました。
ママモンロー   なんて香ばしい匂い。
パンロボたち    すっぱくて甘いクランベリーパン
                  紫色のブルーベリーパン
                  かりかり焦げた黒砂糖パン
                  はちみつパン ミルクパン コーンパン
                  ふんわりやわらかな白い生地のパンがパンパンできあがり

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 すっごく楽しい歌です。こんにゃく座のオペラがいっぺんに好きになります。

 歌のワークショップ、まだ少し空きがありますので、どうぞ来てください。鳴り物を持ってきてください。

 問い合わせ pukapuka@ked.biglobe.ne.jp     045-453-8511 NPO法人ぷかぷか事務所

 

 

しんごっち展やります

 昨年5月に脳腫瘍のため亡くなった「しんごっち」こと、安井伸吾さんの絵の展覧会をやります。期間は7月11日(土)〜7月17日(金)、会場は「ぷかぷかカフェ」です。

 今日、お母さんとお会いして、いろいろ打ち合わせしました。しんごっちが使っていたiphoneを持ってきて、中に残されている画像を見せてくれました。

 電車とか、食事とか、風景とか、いろいろあって、しばし思い出話にふけったのですが、びっくりするような動画がありました。

 何かが入っている箱を開けていく動画です。パッケージが少しずつほどかれて、何が出てくるんだろう、と見ている方がわくわくするような動画です。ところがこの動画、よく見ると、病院のベッドで撮ったものでした。しんごっちの足が少し写っていて、足首に病院のラベル(患者番号を書き込んだもの)が見えました。何のことはない、脳腫瘍の大手術を終え、まだ入院している頃に撮ったものでした。

 脳腫瘍は完全には取りきれず、多少余命が伸びた、という時期です。そんな状況に自分がおかれたら、精神的にかなり追い込まれ、何かをする気力があるだろうかと思ってしまうのですが、しんごっちは狭いベッドの上で動画を撮ったのです。しかも見る人がわくわくするような動画です。

 私なら、多分自分を保つのに精一杯になるだろうと思われる状況の中で、なおも生きる楽しさを見つけ、しかも人を喜ばせようとしているのですから、本当にびっくりしました。

 

 しんごっちは、生きる楽しさを、めいっぱい追い求めた人だと思っています。何度かブログに書きましたが、給料が出ると横浜川崎間の1区間だけのグリーン車の切符を買い、8分間の至福の旅を味わっていました。給料のほぼ十分の一を、その8分間のために使っていました。しんごっちの生きる美学のようなものを感じました。グリーン車ですから、さぞかし豪華な旅をするのかと思っていたら、テーブルの上にはコンビニで買ったおにぎりとお茶のペットボトルが置いてあって、実に慎ましい旅でした。そんな旅に大満足している自分を撮った動画もありました。

 しんごっちのiphoneには私の好きなジオラマの写真が入っています。バスと、人と、家。妙にリアルで、それでいて、これはうそだよ、っていってるような、実にうまい写真です。模型をどういう角度で撮ればこういい写真が撮れるかを計算し尽くしたような写真です。しかもこれをiphoneで撮ったというのですから、すごい!としか言いようがありません。

 家で作ったジオラマで、お母さんに言わせると、ものすごくちゃっちいジオラマだそうです。でもしんごっちの撮った写真には、わくわくするような物語があります。その、ちゃっちいジオラマにも、なおも楽しい物語を見つけ出し、それを写真に表現したしんごっちは、本当に生きる喜びを大切にした人だと思います。

 今度計画している「しんごっち展」は、ですから、ただ単に絵の展覧会ではなく、「重度知的障害者」と言われながらも、私たちの何倍も濃い時間を生き抜いた、しんごっちの生き方が感じられるような展覧会にしたいと思っています。とてもむつかしい企画ですが、しんごっちの生き方に少しでも近づきたくて、精一杯トライしたいと思います。

 

 

 

 

手話で「ぷかぷか」テロップ付き

 聾唖の方にも伝わるようにテロップが入りました。

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 手話で「ぷかぷか〜」ってやると、みんな笑顔になります。ぷかぷかさんの回りには笑顔がたくさん生まれるんだと思います。

 

 映画「ぷかぷか」の自主上映をお願いします。問い合わせは045-453-8511 NPO法人ぷかぷか 高崎まで

手話で「ぷかぷか」

 手話で「ぷかぷか」を表現した短い映画です。 宮沢あけみさんが作りました。

 「ぷかぷか」で働くメンバーさんとおつきあいしていると、「障害者」とはとても呼べません。じゃあ、どういういい方がいいのか、と考えて、「ぷかぷか」が出てきました。「障害者」ではなく「ぷかぷかさん」といういい方。

 「ぷかぷかさん」といういい方は、「ぷかぷかしんぶん」を配布している時に、団地の中で迷子になった方がいて、地域の方がそれを見つけ、「ぷかぷかさんが迷子になってますよ」って、パン屋に電話してくれたことがあります。相手に伝えるのに、一番手っ取り早い表現だったとは言え、「ぷかぷかさん」といういい方には、やさしい響きがあります。迷子になって困っている利用者さんに「ああ、ぷかぷかさんね」って声をかけ、電話してくれたのですが、自然に出たその言葉が、そのいい方が、すごくいいなと思いました。ぷかぷかが地域でこつこつ作ってきたおつきあいがそのまま出ていると思いました。

 この映画は、その「ぷかぷか」を手話で表現することで、この言葉が、あちこち楽しくひろがっていくといいな、という思いで作りました。「あ、おもしろそう!」って思ったら、ぜひ手話で「ぷかぷか」ってやってみてください。

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 映画「ぷかぷか」の自主上映をお願いします。問い合わせは045-453-8511 NPO法人ぷかぷか 高崎まで

 

 

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ココのアリアとパキスタンの少女

 先日池袋のアウルスポットまで『ロはロボットのロ』を見に行きました。帰りがけ、そういえば、とパキスタンの山間で、たった一人浪々と歌を歌っていた少女を思い出しました。

 

 40歳になった時、「人生40周年記念イベント」と称して、折りたたみ式の自転車担いでパキスタンまで行き、インダス川の源流地帯を700キロメートルくらい走ったことがあります。7000〜8000メートル級のカラコルム山脈の山間のがたがた道をひたすら自転車こいで走ったのでした。

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 1000メートル近いアップダウンの連続で、ものすごいハードな旅でしたが、アラスカのマッキンリーに登って以来の楽しい旅でした。

 からからに乾いた世界で、沢があると、そのたびに頭から水をかぶって走りました。ところがずぶ濡れになったシャツが30分もしないうちに、もうからからに乾くくらい乾燥した世界でした。

 そんな世界でもオアシスのような村には杏がたわわになっていて、木々の緑が目にしみました。

 村はずれの小高い丘を走っている時、どこからか歌声が聞こえてきました。高校生くらいの女の子がたった一人で、広い谷間に向かって歌っていたのです。誰が聞いてるわけでもなく、このとてつもなく広い場所で、たった一人で歌を楽しんでいました。乾ききった空気の中を、くっきりとした声が響いて、なんて気持ちのいい歌い方なんだろう、って、なんだか感動してしまいました。

 

  「ロはロボットのロ」のココは、舞台の上の階段のてっぺんで、星の瞬く夜空を背景に「ココのアリア」を歌います。テトへの思いがめいっぱい伝わってくる歌でした。

 ココが一人朗々と歌うその歌いっぷりに、ふと昔パキスタンの山間で聞いた女性の歌を思い出したのでした。ひょっとしたら彼女も思いを寄せる人がいて、一人丘の上で歌っていたのかな、なんて思ったりしたのでした。

 歌うといえばカラオケしか思い浮かばない私たちから見れば、なんてスケールのでかい歌い方、生き方なんだろうと思います。とてつもなく広い大自然の中で、なんて自由な生き方をしているんだろうと思いました。

 そんなことを思い出させてくれた「ココのアリア」に拍手!です。

 

 6月13日(土)、7月4日(土)の歌のワークショップでは歌役者の飯野薫さんに「ココのアリア」を歌ってもらう予定でいます。みんなでいっしょに歌う時間もあります。

 

 

 

「歌のワークショップ」やります。

 6月13日(土)と7月4日(土)、みどりアートパークリハーサル室でオペラシアターこんにゃく座の歌役者さん、ピアニストをお呼びして「歌のワークショップ」をおこないます。時間は午後1時〜3時です。

 前半は心と身体をほぐす「こんにゃく体操」をみんなでやり、オペラ「ロはロボットのロ」のお話を聞き、その中で歌われる歌を何曲か聴きます。歌うのは「ロはロボットのロ」の中でココの役をする飯野薫さん、エド(ココのお父さん)とドリトル博士の役をする井村タカオさんです。ピアニストは本番舞台でも弾く湯田亜希さんです。

pukapuka-pan.xsrv.jp

 休憩のあとは「ロはロボットのロ」の中で歌われる歌を何曲かみんなで歌います。パン屋でパンを作っているところで歌われる歌の時はみんなで鳴り物を鳴らしながらにぎやかに、楽しく歌います。鳴り物(空き缶、フライパン、ナベなど、音の出るものならなんでも)を持ってきてください。

 「ココのアリア」はココがロボットのテトに恋する歌です。舞台では階段の上で夜空をバックに一人朗々と歌います。心にしみる歌です。ぜひみんなで歌いたいと歌役者さんにリクエストしました。

  ♪ チョコレートの夜空に  粉砂糖の星がまたたき始める

   丸いレモンパンの月が昇り  四角い窓が一つ一つ消えて

   町は眠りにつく

   

   テト あんたも今頃 眠っているの?

   ロボットは眠るの?  ロボットは夢見るの?

   寝ても覚めても 

   あんたのことを思ってる  あんたのことを祈ってる

   テト あんたはまだ起きてる?

   ロボットは祈ったりするの?

   ロボットは誰かを思ったりするの?

 

   毎晩 私は祈ってる

   早く あんたが戻ってこれるように

   早く 私のところへ戻ってくれるように

 

 最後のシーン、エネルギーの切れたテトはココに抱かれながらいいます。

「パン作りより、もっと好きなもの、僕は見つけたんだ…」

 

 

 このオペラの一番のメッセージでもある「テトのパンは あ」は本当にいい歌です。懐かしくも、元気の出る歌です。

 

  ♪ テトのパンは あ    あいおうえの あ

   忘れていた青空の あ   いつまでも見つめ続けていた

   ああああ あの遠い夏の日の 青空の あ

   ……

   テトのパンは あ    あいおうえの あ

   晴れた日も 曇った日も 雨の日も

   哀しい時も 苦しい時も 淋しい時も 

   やってくる  朝の  あ

   新しい希望と 新しい喜びと

   新しい元気が窓たたく

   朝の あ

   ああああ   朝の   あ

 

 

 歌役者さんとお友達になり、オペラの歌も歌っておくと、7月19日(日)の公演が10倍楽しくなります。 

 参加費は親子で1,000円、中高生は500円です。参加申し込みはパン屋、もしくはメール(pukapuka@ked.biglobe.ne.jp)で。

  下が参加券です。

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