3月21日(月・祝) 長野市で映画『ぷかぷか』の上映会があります。場所は長野市役所そばの長野市ふれあい福祉センターです。午前10時と午後2時の2回上映されます。監督の宮沢さんと私のトークショーもあります。
今日は信濃毎日新聞の報道部長から電話による取材がありました。信濃毎日新聞は信州でいちばん読まれている新聞だそうです。
信州にお友達のいらっしゃる方、ぜひ宣伝してください。
映画『ぷかぷか』についてはこちら。
3月21日(月・祝) 長野市で映画『ぷかぷか』の上映会があります。場所は長野市役所そばの長野市ふれあい福祉センターです。午前10時と午後2時の2回上映されます。監督の宮沢さんと私のトークショーもあります。
今日は信濃毎日新聞の報道部長から電話による取材がありました。信濃毎日新聞は信州でいちばん読まれている新聞だそうです。
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緑区役所の区長さんが、先日除幕式の時にぷかぷかの似顔絵師こと平本さんの描いた似顔絵を名刺の裏に刷り込んでくれました。区長さんと副区長さんが並んでこんな楽しい名刺を配ると、社会はぐっと明るくなる気がします。
区長さん
副区長さん
この2枚の名刺は、まわりをふっと和らげる力を持っています。打ち合わせに来た人が、思いがけずこんな楽しい名刺をもらうと、思わずニカッとして、心があたたかいもので満たされます。名刺にある名前の紹介以上のものをもらうことになります。心のなごむ、あたたかいものです。打ち合わせに来たはずなのに、ちょっと得した気分になります。打ち合わせが和やかな、あたたかな雰囲気で始まります。
こういうことの積み重ねが、社会を居心地のいい、あたたかいものにしていくのだと思います。
「ところでこの絵は誰に描いてもらったんですか?」「ぷかぷかのメンバーさんですよ」みたいな会話の中で、「障がいがある人ってなんにもできないと思っていたけど、こんなにあったかい、楽しい絵を描くんだね。」「障がいのある人たちを見直しちゃったよ」「社会に必要な人たちだね」といったことが少しでも語られたらいいなと思っています。
名刺一枚で社会が変わるわけではありません。でもこの似顔絵の入った名刺は、相手との間に楽しいあたたかな物語を生みます。その物語がいくつもいくつも重なっていくと、社会は少しずつですが、変わっていく気がしています。名刺を配るだけですばらしい社会貢献になるというわけです。
たかが名刺、されど名刺、です。
先日鴨志田地域ケアプラザで、映画『ぷかぷか』を見ました。久しぶりに見たのですが、彼らの生きる姿がまぶしく見えました。
「ワークショップ」「舞台」という非日常の空間から、いきなり「仕事場」という日常空間に飛ぶ最後の数分間の映像がすばらしくいいですね。こっちの方が別世界、と見間違うほどに黙々と仕事をする彼らの姿が、いつもの何倍も輝いて見えて、ちょっとうるっときてしまいました。
彼らの働く姿が実にたくましいですね。なんかすごいなぁ、ってただただ感心してしまいました。ふだんから見慣れているはずなのに、映画の中では本当に輝いて見えました。見慣れる、というのは、大事なことを見落とすことにつながります。映画はそれを教えてくれたように思います。
いい人生送ってるな、って素直に思いました。仕事においても、仕事以外においても。こんないい人生送っている人たちは、なかなかいないと思います。
「障がい者を支援する」とか言っている私たちはこんなにいい人生送っているんだろうか、ってふと思いましたね。支援する彼らを超えるいい人生を送っているんだろうか、と。支援した先に実現されるはずの人生のイメージもはっきりしません。わくわくするような人生のイメージを提案できているんだろうか、ということです。そのイメージがなければ、支援される側は人生の未来にわくわくするような希望を持つことができません。人生って、そういうものがなければ、なんだか淋しい気がします。支援の先にどんなわくわくするような人生があるのか、それを目に見える形で描くこと、提案するこそ大事な気がします。そのためには彼らの前で自分自身がいい人生を生きる、それにつきると思います。
映画『ぷかぷか』は、障がいのある人たちを支援するような映画では全くありません。彼らといっしょに泥臭く芝居を作った記録です。台本があって、その通りにやる芝居ではありません。どこまでもみんなで一緒に作っていく芝居です。なかなか思うように芝居作りが進みません。思うように進まないところにこそ、彼らといっしょにやることの意味があると思います。あーだこーだと果てしない議論が始まります。みんなが納得できるものを見つけることはすごく大変です。でも、それがみんなでいっしょに芝居を作る意味であり、彼らといっしょに生きる意味だと思います。
そしてそんな中で彼らの人生が実に生き生きとしていること。私にはそんな彼らがまぶしく見えました。
これは緑区の副区長さんがヨッシー画伯に描いてもらった似顔絵が気に入って自分の名刺の裏にすり込んだものです。
こんな名刺もらったら、たまたまそのとき怒っていたり、いらいらしたりしていても、なんだかそんなことはもうどうでもよくなって、つい、「いや〜、いいですね〜」なんてニカニカしながら言ったりします。この似顔絵には、その場をふっとなごませてしまう「力」があります。これが写真だったりしたら、絶対にそんなことは起こりません。どうしてなんだろうって思います。この似顔絵と写真の違いはなんなんだろうって。
こういう名刺はもっともっと世の中に広がった方がいいと思います。世の中がなごみます。ふっと気持ちが和らぎます。なんだか癒やされます。優しい気持ちになれます。イラッとする心が恥ずかしくなります。
お互いがニカ〜っと笑顔になって、和やかな雰囲気で打ち合わせができます。
こんな名刺が世の中に広がったら、社会はもっとお互い気持ちよく生きていけるのに、と思います。
障がいのある人たちといっしょに生きていくと、こんなふうにみんなが「得」をします。みんなが幸せな気持ちになれます。
社会はこんなふうにして、名刺一枚でも、少しずつ変わっていくんだと思います。たかが名刺、されど名刺です。
ヨッシーの描いた似顔絵がいっぱいの街の地図。なんだか街が楽しくなります。
みなさん、ぷかぷかに来て、ヨッシーに似顔絵を描いてもらってください。その似顔絵を名刺に刷り込んで、まわりにいっぱい配ってください。世の中、きっと変わると思います。
春までもう一歩というこの時期、身の回りに明るい色を取り入れたくなってくる頃ですよね。
2月はわんどオープン一周年でもあるので、春を待ち望む気持ちを楽しむようなワークショップを開催しました。
今日の日記は、2月27日(土)「手ぬぐいのタマネギ染め」の様子を紹介します♫
この日は地域の3家族9名が参加してくださいました。
輪ゴムや割りばし、洗濯バサミを使って自分だけの模様を作ります。
大人は完成図を予想しながら縛ったり挟んだりしている横で、えみちゃんが作ったのはうさぎさん♫
タマネギの皮を煮出した染液に布を入れて10分ほど煮ます。
ムラなく染み込むように布をかき混ぜまるのがコツ。ヨッシーが火の番を引き受けてくれました。
色を定着させるための媒染液(今回はミョウバン)に浸けると、明るい黄色に変わりました!
娘さんの「お顔を作って」のリクエスト通りに出来て、大満足のお父さん(*^^*)
タマネギの色からは想像できないような、あたたたかい黄色に染まりました!
わんどのメンバーさんたちはおひさまやカフェのディスプレイ用に頼まれた布を染めて、こんなにたくさんできました。
本日のおやつはカフェ特製の“わんどの「わ」クッキー”
「楽しかったー♪」と仲よく揃って感想を言ってくれたうめちゃん、えみちゃん、きよちゃん
今回からワークショップ後にわんどをフリースペースとして開放し、ランチを召し上がっていただけるようにしました。
3家族ともおひさまのお弁当やパンのランチを広げて利用してくださり、おしゃべりにも花が咲きました♪
出来上がったものを写真に撮らせてもらおうとしたら、ファッションショーが始まりました!
フォトジェニック揃いなこどもたちです☆
染め物に味を占めたわんどは、3月もやっちゃいます!!
今度もタマネギを使いますが、媒染液を鉄に変えるので染まる色も変わります。
木曜日に試作するので、何色になるのか実はわかっていませんが
自然の植物から出る色ですから、きっと素敵な優しい色になるでしょう。
それから絞りだけではなく、絵の染め抜きにも挑戦します。
今週土曜に行うワークショップは定員まで残り4名です。
一緒にわくわくする時間を過ごしませんか♪
(ゆっこ)
緑区役所で地場野菜を売る直販所の仕事を4月から引き受けることになりました。長机を三つほど並べただけの小さなお店です。野菜をただ並べて売るだけではなにも起こりません。でも、ちょっとだけ工夫すれば、そこには「あっ、おもしろそう」って思える、わくわくするような物語が生まれます。自然に人が集まってきます。ただ野菜を買いに集まるのではありません。野菜を買うことの先に、もっとおもしろいもの、もっとわくわくするものを見つけるからです。それが物語です。
さて、長机三つの小さなお店はどんな物語を生み出すのでしょう。
お店にはメッセージボードがあります。野菜を作る人たちと、野菜を食べる人たちのコミュニケーションボードです。野菜を作る人たちと食べる人たちが、まずはこのメッセージボードを通してお互い知り合います。
野菜を作る人の顔写真、似顔絵を貼ります。自己紹介を書きます。趣味とか、好きな食べ物、一日の中でいちばん好きな時間とか…、野菜を作る人の人となりが見える情報です。「人と人とのおつきあい」を作る上で一番大事な情報です。「生産者と消費者」という固苦しい枠組みではなく、もっとやわらかくて泥臭い「人と人」とのおつきあいです。
野菜を作る思いを書きます。野菜を作る喜び、苦労、野菜を食べる人への思いなどです。ここに並べている野菜には作る人の「思い」がこもっている、ということを伝えます。
「こんな人が作っている野菜なら安心」という関係が自然にできてきます。
旬の野菜の紹介、今日のおすすめ野菜、今日の畑の様子(「トマトがいっぱいなっています」とか「雪が積もりました」とか「ネコがあそびに来ました」とか、畑の様子が目に浮かぶような話)など、毎回新しいメッセージを張り出し、野菜を買いに来る人が毎回楽しみにするくらいの内容を目指します。
野菜を作る人たちが楽しんでメッセージを書かないと、読む側も楽しくありません。そのためにはリアクションが必要です。つまり野菜を食べた人の側からのメッセージです。
「ほうれん草がしみじみおいしかったです」「トマトには昔のトマトの香りがしました」「生でばりばりかじってもおいしいですね」「今日の畑の様子、毎回楽しみに読んでいます」「今日のおすすめ野菜、とても助かってます」「自己紹介で阪神が好き、とありましたね。私も大ファンですよ」
といったリアクションが出てくると、このお店はただの野菜直売所ではなくなります。人と人を繋ぐお店になります。コミュニティカフェというのが最近はやっていますが、そういう意味では「コミュニティ八百屋」ということになります。「え〜っ!区役所にコミュニティ八百屋ができたんだって?」なんて話題になります。区役所もやるじゃん、て株が上がります。
機会を見つけて、生産者の畑を訪問するツアーも企画します。ただ見学するだけではつまらないので、草取りのような簡単なものから始まって、土起こし、田起こし、種まき、苗植え、田植え、稲刈りなど、ただ「体験」しておしまい、というのではなく、長くおつきあいのできる「時々仕事のお手伝いをする関係」もできたら、と思っています。田植えとか稲刈りとかは、すごく楽しいので、そんな楽しさを共有できる関係です。収穫祭、芋煮会、もちつき等々、楽しいこともいっぱいやりたいですね。
要するにお互い顔の見える関係を作りたいのです。あの人が作るから安心、あの人が食べるから安全でおいしいものを作ろう、ってお互いが思えるような関係を作りたいのです。そして何よりも、この地域でいっしょに生きていく仲間としての関係です。
そういうお互いを信頼する関係ができてくると、直売所で買った野菜を食べるとき、生産者の顔や、畑の様子が目に浮かんだりして、食卓がとても豊かになります。野菜のおいしさは、そのまま生産者の思いであることがわかってくると、食べることの意味がグンと広がります。
作る人と食べる人が同じ地域にいる、そういったことが目に見える形でわかってくると、この地域に暮らすことに安心感が持てます。災害が起こったとき、いちばん困るのは食べ物のことです。同じ地域に食べ物を作っている人がいて、しかもその人をよく知っているということは、とても大きな安心感を生みます。
知り合いの農家の方が「稲刈りが終わりました。これでまた1年、安心して生きていけます」とお便りをくれたことがあります。「これでまた1年、安心して生きていけます」という言葉の重さ。人は、本当はこういう安心の上で生きていくものだと思います。街に暮らし、食べ物を作っていない私たちには、せいぜい備蓄倉庫に何日分かの非常食があります、といった程度の気休めしかありません。
そういったことを考えると、「同じ地域に食べ物を作っている人がいて、しかもその人をよく知っている」ということの意味がとてつもなく大きくなります。だからこそ、野菜を作る人と、それを食べる人の関係を丁寧に作りたいと思うのです。
販売する地場野菜を使ったお惣菜を作って(「おひさまの台所」のスタッフが作ります)、野菜と並べて販売します。野菜の使い方がストレートにわかり、野菜を買う人の家庭の食卓を豊かにします。ふだんあまり目にしない珍しい野菜が出たときは、それを使ったお惣菜を一緒に並べることは、買う人にとってはとても助かります。単なる野菜販売が、食生活をより豊かにするような場所になります。
障がいのある人たちが販売するので、ほっこりあたたかな雰囲気の販売所ができます。野菜を買いに来ただけなのに、ほっこりした雰囲気にふれ、心を癒やすことができます。それは「また行ってみたい」という気持ちを生みます。ぷかぷかと同じように「直売所が好き!」とか「直売所のファンです」という人が多分、増えます。お客さんが増えることはただ単に収益が増えることだけを意味しません。どちらかと言えば社会のお荷物のように社会から疎外されている障がいのある人たちのお店が、そんなふうに街の人たちに受け入れられるということは、ここには社会の「希望」が見えるといっていいと思います。お互いが気持ちよく生きていける社会への「希望」です。うまくすればですから、ぷかぷかの直販店は、そういう「希望」を生み出すお店になるかも知れません。
長机を三つほど並べただけの小さなお店です。それでもやりようによっては、こんなにも楽しい、わくわくするようなことがたくさんできます。長机三つに収まりきらないほどの「新しい価値」を生み出します。4月から楽しみにしていて下さい。
緑区役所でぷかぷかのメンバーさんたちの描いた大きな絵地図の除幕式がありました。
区長さんがあいさつしているとき、向こうに並んだぷかぷかのメンバーさんで、寝てる人がいたみたいですね。
除幕式という固い雰囲気を吹き飛ばすように辻さんが元気よく「ぎんぎらぎんにさりげなく」を歌いました。「表現の市場」とは全くちがう雰囲気の中で、ここまで一人でテンションを上げられるって、すごいなとあらためて思いました。
そばにいた平本さん、麻野さんもノリノリで踊っていました。あんまりノリ過ぎて、絵地図をかくしていた幕が落ちてしまいました。
事前の打ち合わせでは、区長と私とメンバーさんが幕のひもを引いて幕が落ちる予定でした。ま、ぷかぷからしい除幕式だったと思います。
除幕式のあと、平本画伯は区長さんの似顔絵を描きました。
昨年の区民まつりで、ひょんなことから地産地消ブースのデザインをぷかぷかがやることになり、それと合わせて地産地消サポート店の絵地図を描くことになりました。
ひょんなことというのは、区民まつりの地産地消キャンペーンの予算の最終打ち合わせの席でした。ぷかぷかに依頼のあったおから300パックの値段は6万円、区の方は10万円用意していました。差額は4万円。ここで黙っていればなにも起こらなかったのですが、
「あの、その4万円で地産地消ブースのデザインとキャンペーンのチラシのデザインをやらせてもらえませんか?」
という提案をしました。ブースのデザインなんて、考えてみれば結構大変ですが、養護学校の教員をやっている頃、文化祭などでこのテのデザインは数え切れないくらいやっていたので、まぁなんとかなるだろうと思っていました。
今から考えると、このときのひとことからこの絵地図の「物語」が始まりました。
突然の提案で、区の方も即答ができず、検討します、ということでその日は終わりました。2,3日たってから、ブースとチラシのデザインをぷかぷかに任せたい、という連絡がありました。ぷかぷかがふだんから作り出しているものを見ての判断だったと思います。ぷかぷかに任せればこんなおもしろいものを作るんじゃないか、と。
最初は地産地消キャンペーンのチラシに地場野菜を積極的に取り入れている地産地消サポート店のお店の情報を入れて欲しいという依頼があり、テキストデータが送られてきました。お店の名前、中華とかイタリアンなどの品目、電話番号、住所などです。これを見ても、
「あ、行ってみようかな」
っていう気持ちにならないので、絵地図を描くことにしました。絵地図の中にはお店の絵を入れます。それだけでなく、シェフの似顔絵を入れようと思いました。似顔絵を入れることで、絵地図の雰囲気がグンとあたたかいものになります。ちょっと行ってみようかな、という気にもなります。似顔絵師の平本さんと一軒一軒回って似顔絵を描きました。
ところがチラシにはその似顔絵を入れるスペースがなく、区役所としてはA1サイズのパネルを用意するので、そこに絵地図を貼って欲しいということでした。で、A1サイズの絵地図を描いたのですが、せっかく描いた似顔絵が小さくなってしまい、なんかもったいない気がして、テントの横の壁面に張り出すことにしました。横3.6m、縦2mの大きな紙の紙がベースです。これなら似顔絵の原画がそのまま貼れます。そうしてできあがったのが今回の絵地図です。
さぁ、物語の始まりです。
これが「絵地図物語」です。差額4万円から始まった物語です。4万円は「投資」ではありません。でも4万円が生み出した豊かな物語を考えると、やはりこれは区役所がぷかぷかに対して「投資」したと考えてもいいような気がします。この4万円でぷかぷかは何か面白いものを創り出してくれるんじゃないか、というワクワクするような「投資」です。そのお金を「投資」したことで何倍もの「新しい価値」を生み出したのですから。
あの大きな絵地図が区役所に張り出されることで生み出される効果ってなんでしょう。区役所にやってきた人たちは絵地図の前で足を止め、クフって笑います。ふっと心が安らぎます。心があたたまります。癒やされます。「あっ、あのお店に行ってみようかな」ってうきうきした気分になります。
ブースのデザインからはじまった今回の物語、本当に楽しい仕事でした。緑区役所のみなさん、本当にありがとうございました。
NPOは社会的な課題を解決するために設立され、その課題解決に向かって様々な取り組みをします。ぷかぷかは「障がいのある人たちの社会的生きにくさ」という社会的課題の解決のために、街の中に彼らの働くパン屋、カフェ、お惣菜屋、アートショップを作りました。でも、街の中に彼らの働くお店を作るだけでは、課題解決にはなりません。
お客さんにお店に来てもらい、そこで働く障がいのある人たちといい出会いをしてもらうことが大事です。いい出会いの中で、「ああ、この人たちとはいっしょに生きていった方がいいね」って思ってもらえることが、社会的課題の解決の一歩だと考えています。
そのお客さんにどうやって来てもらうか、そこが商売としてやる上でむつかしいところです。ただパンを焼いてるだけ、カフェをやっているだけではお客さんはなかなか増えません。やはりお客さんが来てみたくなるような、魅力ある物語、ここにしかない「価値」を作り出すことが求められます。
その「価値」をどうやって作り出すか、を考えたくて、NPOが生み出す「価値」について考えるセミナーに参加して来ました。
おもしろいなと思ったのは、《「価値創造」の進化》という表でした。左から右へ行くほど「価値」あるいは「価格」が増す横軸と、下から上へ行くほど「差別化」が大きくなる縦軸で表現される「価値」の評価基準です。「価値」という漠然としたものを、二つの軸でわかりやすく評価していこうというものです。『価値創造』がどのように進化していくのかが見えてきます。
その表で、いちばん左下は「コモディティ」といわれるもの。「差別化」においても「価値」においてもいちばん低い位置にあります。使えさえすればメーカーは問わない日用品のようなものです。代替可能なものです。
その次のランクはものの価値だけにとどまっているもの。ものを作れば売れた時代の価値観にとどまっているものです。この価値は、さわれるもの、目に見えるものです。
三番目のランクはものの価値にお客さんへのサービスが加わったもの。お客さんのニーズをしっかりつかみ、それを商品に生かしたものです。この価値は、さわれないもの、目に見えないものです。
四番目はお客さんの「経験」が「価値」となるようなもの。お店に来たときの忘れがたい「経験」が「価値」を生みます。
五番目はお客さんの「変化の経験」が「価値」となるようなもの。経験によって自分が変化した、成長したことが実感できるようなこと。かけがえのない体験こそが生み出すかけがえのない「価値」。
《「価値創造」の進化》という表の意味を学んだあと、さてあなたの団体はこの表の中のどの段階の「価値」を作り出していますか?という問いを考える時間がありました。
ぷかぷかはパン、カフェの食事、お惣菜、アート商品を作っています。ものを作っていますが、ものの価値だけにとどまらず、目には見えないたくさんの思いをこめてお客さんに提供しています。
パン、食事、お惣菜は、お客さんが安心して食べられる、おいしいものを作っています。何を食べても添加物でいっぱいの世の中にあって、「お客さんが安心して食べられる」というコンセプトは、ただそれだけですばらしい「価値」があります。お客さんがいちばん求めているものだからです。そこには私たちの命への思いがあります。あなたの命、子どもの命を傷つけたくない、健康な命を未来に引き継いでいきたい、という思いです。食べ物は命を育むもの、だからこそ、安心、安全を大事にしたいと思っています。こういった思いはお客さんにまっすぐに届きます。
ものの価値だけにとどまらす、お客さんのニーズにしっかり応えている、という意味で、ぷかぷかの商品は三番目のランクに位置します。ものの価値の上に、目に見えない「価値」がそこには加わっています。
ぷかぷかは障がいのある人たちが、楽しい雰囲気で働いています。見学に来た方の多くが「ここは明るいですね」と感心するくらいみんな楽しそうに働いています。そんなぷかぷかのあたたかな、ほっこりした空気感にふれ、心を癒やされ、「ぷかぷかが好き」になってしまったり、「ぷかぷかのファン」になってしまった方がたくさんいます。
先日「日経イニシアチブ大賞」にエントリーしたときは、障がいのある人たちのありのままの姿が、今までにない新しい価値を生み出している、といったことを書きました。セミナーの話で修正するなら、障がいのある人たちのありのままの姿に出会ったお客さんが、心あたたまる「経験をした」ということが「価値」を生み出した、ことになります。「価値創造」は「顧客経験」という形で実現されるというわけです。
ぷかぷか全体のほっこりあたたかな雰囲気を肌で感じたお客さんたちが「ぷかぷかのファン」になっている現状を考えると、ぷかぷかが作り出しているものの「価値」は、第四段階にあると言えます。
「価値」の軸においても「差別化」の軸においても一番上のランクに位置するものは「変化の経験」だとありました。「人間回復と自己再創造」とも書いてありました。新しい「経験」によって、自分が変化し、成長したことを「経験」する、「実感」すること、それが新しい「価値創造」だと。
え〜、それって「演劇ワークショップ」で作り出しているものじゃん、とセミナーを受けながら思いました。
ぷかぷかのお店では、障がいのある人たちに出会うという「経験」が新しい「価値」を生み出しています。それ自体、自分の人間としての幅が広がるわけですから、「変化の経験」ではあるのですが、演劇ワークショップは、その「変化の経験」の幅が格段に広がります。それは障がいのある人たちと一緒にクリエイティブな活動をし、一緒に苦しい思いをしたり、びっくりするような新しい発見をしたりするからです。
演劇ワークショップは、お店での単なる出会いから先へ進んで、クリエイティブな関係を作り、その中で新しい芝居(一緒に生きていった方がいい、という理由が具体的な形で明確に見える)を作り出したいと思って始めたものです。
演劇ワークショップで作り出したものの「価値」は、想定していたもの以上の「価値」を作り出していたことに、セミナーの中で気がつきました。これはちょっとびっくりでした。「人間回復と自己再創造」という言葉が第五段階の「価値」には書いてありましたが、ワークショップに参加した人たちの感想を読むと、本当にその通りだと思います。
NPO法人ぷかぷかが設立当初に掲げた「障がいのある人たちの社会的生きにくさ」の解消、という目標は、社会の中で「人間回復と自己再創造」という、人間の深いところでの変わりようがあって、ようやく実現できるのだと思います。社会というのはそうやって少しずついい方向へ変わっていくのだと思います。
ワークショップが生み出す「価値」
カフェでわんどメンバーさんの自画像展をやっています。
マスクがすばらしくいい!
目が空洞のように開いて、奥の深い人だなと思いました。
いい青年の自画像です。
クレオパトラかと思いました。「そうか、実はクレオパトラみたいに美人だったんだ」と、本人に言ったらすごくうれしそうにしていました。本当にすばらしい自画像です。光が反射して見にくいので、ぜひ原画を見に来てください。
とても慎ましい自画像です。
心の中はこんな青年なのかも。
世界を明るくする自画像です。
自画像まで元気いっぱいのテラちゃん。こっちまで元気になります。
プロの画家ですね。
hanaちゃんのお母さんがブログに感想を書いていました。
最後に載っている「やりきったよ…」というキャプションのついたhanaちゃん写真がいいです。
お母さんがhanaちゃんと一緒に、こんなにいい顔して舞台に立てたこと、それが本当によかったと思います。「みんなの《生きる》」は、まさにこのことだと思います。この時間、この空間、この舞台のことです。
昨年歌劇『森は生きている』をやりました。そのときに歌った歌の中に「マツユキソウが咲いた…」という歌があって「一瞬の今を、千秒にも生きて、このうれしさを胸に、胸に、胸に、きざもう」というところがあります。
あの舞台の一瞬を、こんなふうに胸に刻んで欲しいと思っています。ぷかぷかのメンバーさんも地域の人たちも、みんなでこの一瞬を、こんなふうに共有できたこと、それが「みんなの《生きる》」だったなとあらためて思います。
障がいがある人と一緒に暮らす社会について掘り下げて考えるためのトピックス集です。