ぷかぷか日記

湘南ヴィヴィットアート展へぜひお出かけください。

湘南ヴィヴィットアート展に行ってきました。

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昭和4年に建てられた蔵をそのまま使った、とてもあたたかな会場でした。

これが入り口

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入り口を入ったところ。右上に神棚があるあたりがここのおもしろいところ。

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所狭しと作品が並んでいます。

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ぷかぷかの三人の画伯に似顔絵を描いてもらいました。

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のぼさんの絵はおとなしすぎるので、あとで色をつけてもらって、こんな感じにしてもらおうと思っています。似顔絵名刺にこんな絵が載ってたら、もう相手がのけぞってしまって、すごくおもしろいんじゃないかと思うのです。

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同じ会場で似顔絵を描いていたとしきさんにも描いてもらいました。

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 としきさんはものすごく絵のうまい方ですが、絵と全く関係ない作業所で働いているので、作品はほとんど埋もれたままになっているようでした。なんかすごくもったいない気がして、ぷかぷかに来ませんか、と誘いました。ぷかぷかはメンバーさんの絵を社会に出していこうといろんな試みをしています。彼らの絵が社会に出て行くことで、社会が豊かになっていくと考えるからです。お母さんは時々Instagramでアップしてるそうですが、ぷかぷかはもっとダイナミックな形で社会に出して行こうとしています。

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プロボノ活動をやっているサービスグラントにはアートを企業に売り込む営業資料を作ってもらう予定です。

pukapuka-pan.hatenablog.com

 先日のプレゼンテーションでは詳しい説明を聞きたいと15人ものプロボノワーカーが集まったそうで、もうすぐプロジェクトチームがスタートします。

  

 湘南ヴィヴィットアート展は8日(月)までです。ぜひお出かけください。

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pukapuka-pan.hatenablog.com

 

あなたとの人生、なかなか悪くないよ

 今朝の朝日新聞生活欄の「患者を生きる」ー医療的ケア児④ は子どもに寄り添うお母さんの言葉が光っていました。

digital.asahi.com

 重度の脳性麻痺で寝たきりの子ども(6才)の介護を家で続けています。たんの吸引などの医療的ケアが必要なので、本当に大変です。今年の4月、特別支援学校の1年生になりました。入学式は通院以外の初めての外出だったそうです。子どもたちの声が響く学校。帰りたくないと、聞いたこともない低い声で「う〜」と訴えてきたそうです。授業は週一回、先生が自宅を訪問して行われます。

 一日の介護がすべて終わると、もうくたくたです。子どものベッドの隣に折りたたみ式のベッドを置いてお母さんは寝ます。子どもの小さな手を握り、肌のぬくもりを感じながら語りかけます。

「あなたとの人生、なかなか悪くないよ」

 

 この言葉が出てくるまでにどれほどの苦労があったのかと想像します。出産直後の大混乱、低酸素性虚血性脳症で自発呼吸はほとんどなし、「脳の機能は戻らないと思います」と医者から残酷な告知、自宅介護中、目が細菌に感染して角膜がとけてしまい、眼球の摘出手術、夫とも離婚、毎日毎日待ったなしの介護生活。そんな想像を絶する苦労をしながら尚も

「あなたとの人生、なかなか悪くないよ」

と語るお母さん。子どもといっしょに本当にいい人生を送っているんだろうなと思いました。

 たとえ相手が重度の脳性麻痺で寝たきりの子どもであっても、そういう人生が創り出せるということ。人生の深さと希望を感じます。

 

 障がいのある人たちとおつきあいしている私たちこそ、相手の前で語りたいですね。

「あなたとの人生、なかなか悪くないよ」

って。障がいのある人たちとの人生が豊かなものになる気がします。

 

 

 

 

子ども達にぷかぷかの豊かな空気感を伝えたい

  昨日の「ぷかぷか言葉」の話は、子ども達に「ぷかぷか」がどんな風に伝わっているのか、とてもよくわかって、すごくうれしい気持ちでした。

 ぷかぷかのお店はもちろん、様々なイベントに子どもたちがたくさんやってきます。そんな子どもたちを見て、パン教室の記録のタイトルには「パンと一緒にステキな未来もこねています」なんてことを書いたりしています。子ども達に「ぷかぷかの空気感」を未来に伝えて欲しいと思っているからです。

 そんなところへ「人に優しい」あるいは「あったかい」と聞き、「ぷかぷか」が思い浮かんだことは、ぷかぷかへ何度も出入りしているうちに、なんとなくそんなイメージを持ったのかなと思いました。学校で習った「ふかふか言葉」よりも、「ぷかぷか言葉」の方が、ずっと中身のある言葉だと思いました。

 先日プロモーションビデオ第二弾の試写会で、制作した信田さんは「ぷかぷかの豊かな空気感を伝えたい」とおっしゃっていましたが、子ども達はそれを敏感に感じとっているように思いました。

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 人間ドックの結果に少し落ち込んだとき、真っ先に思ったのは、ぷかぷかのこの空気感がうまくあとの人たちに伝わるかどうかでした。でも、「ぷかぷか言葉」の話を聞いて安心しました。

 子ども達にぷかぷかの豊かな空気感をしっかり伝えたい、そう思う毎日です。

「人に優しい言葉、あったかい言葉」は「ぷかぷか言葉」

  スタッフの1年生になる子どもが学校で、「人に優しい言葉、あったかい言葉」は「ふかふか言葉」、「人を傷つけてしまう言葉、悲しい言葉」は「ちくちく言葉」と習ったそうです。

 ところが、家に帰ってお母さんに「人に優しい言葉、あったかい言葉」は「ぷかぷか言葉」、「人を傷つける言葉、悲しい言葉」は「ちくちく言葉」って、報告したのだそうです。

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 「ふかふか」と「ぷかぷか」を間違えたとはいえ、「人に優しい」あるいは「あったかい」と聞き、「ぷかぷか」が思い浮かんだことは、なんだかすごくうれしい気がしました。

 

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 パン教室でこんな体験をした子どもだからこそ、「人に優しい」あるいは「あったかい」は、そのまま「ぷかぷか」だったのかも知れません。

豊かな空気感を伝える

 プロモーションビデオ第2弾を作った信田さんから制作の思いが届きました。

 

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 今回の映像の打ち合わせが始まったのは2016年秋、当初高崎さんは7月に相模原でおきた障がい者殺傷事件に強い憤りを感じていて、事件に対する具体的なメッセージとしての映像を望んでいた。しかし具体的なメッセージを描こうとすればするほど、僕は意見の異なる人たちと同じ土俵に上がることへの違和感を感じるようになっていた。同じ土俵に上がることは同じモノサシで意見を述べることであり、「いなくなればいい」とか「いた方がいい」という直線的な論議では、ぷかぷかが生み出している豊かな空気感(仮にぷかぷか現象と呼ぶこととする)を伝えきれないと思ったのだ。もっと立体的な座標軸の中でぷかぷか現象を捉え映像にすることで、結果としてメッセージになるようにしたいと思った。座標軸の参考にしたのは高崎さんが設立6年目に書いたぷかぷかの「ステークホルダー相関図」だった。しかし沢山の利害関係者の中には唯一高崎さん自身が入っていなかった。今回の映像でも触れてはいるが、個人としての高崎さんの想いを知ることは、ぷかぷか現象を理解し活かす上でとても重要だ。次回続編をつくる機会に恵まれたら、そこにフォーカスした作品を作りたいと思っている。

                     PVプロボノ 映像ディレクター 信田眞宏

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《「いなくなればいい」とか「いた方がいい」という直線的な論議では、ぷかぷかが生み出している豊かな空気感(仮にぷかぷか現象と呼ふこととする)を伝えきれないと思ったのだ。》

 というところがすばらしいと思いました。その《豊かな空気感》が、映像にはよく出ていると思いました。空気感は映像でしか伝えられないものです。パン教室の映像がありましたが、ぷかぷかの空気感がとてもよく伝わってきます。ぷかぷかのパン教室は単なるパン教室ではなくて、言葉でうまく表現できないような、なんかすごく豊かなものを生み出しています。そのことが映像からはよく伝わってきます。

 大家さんのインタビューのシーンに「相模原事件への思いは」という言葉が入っていました。

「バスや電車でね、ぷかぷかさんに会ったらあいさつをしようと思うんです。彼らがいることで生まれる緊張感が、私がちょっと声をかければその場の緊張感がちょっと和らぎますよね」

というお話になり、相模原事件に直接ふれることはありません。でも信田さんは大家さんがバスや電車の中でやっていることこそが、相模原事件を生み出した社会にあってはすごく大事なことだといいます。だからあえてあそこで「相模原事件」という言葉を入れたのだと思います。その言葉から反射的に生まれる私たちの中の「とんがった思い」みたいなものを、今一度静かに問い直すシーンだったのかも知れません。

 先日神奈川新聞でも、そういう視点、《少しずつ、目の前のその一人から少しずつ…。日々の暮らしの中でオーヤさん自身が変わり、周囲もまた変えようとしている。》という紹介の仕方をしていました。そうやって社会は少しずつ変わっていくんだと…

 

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(取材中の信田さん)

 

《沢山の利害関係者の中には唯一高崎さん自身が入っていなかった。今回の映像でも触れてはいるが、個人としての高崎さんの想いを知ることは、ぷかぷか現象を理解し活かす上でとても重要だ。》

 昨日試写会のあと、どうして彼らといっしょに生きていきたいと思ったのか、その原点についていろいろ信田さんに聞かれました。そのときは、彼らに出会ってしまったから、とか、彼らに惚れてしまったから、と答えていたのですが、質問の背景にはこういうことがあったんですね。《ぷかぷか現象を理解し活かす上でとても重要だ》と。

 信田さんとは機会見つけてゆっくり話し込もうと思っています。

 

 

 プロモーションビデオをYouTubeにアップしたからって、あるいはあちこちで上映会を開いたからって、何かが急に変わるわけではありません。信田さんのいう「心のドアをノックする」感じで、誰かに届けば、と思っています。心のドアをノックされて、この豊かな空気感に気づき、その人のまわりで何かが変われば、と思っています。

 

 

プロモーションビデオ第2弾の試写会がありました。

 プロモーションビデオ第2弾の試写会がありました。15分くらいの作品で、昨年の第1弾よりもぷかぷかのメッセージがしっかり入っている気がしました。

 昨年7月に相模原障害者殺傷事件があり、それに対して映像によるメッセージを作りたいと思っていました。

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 その依頼に応えてpvプロボノの信田さんが映像を作り、今日、その試写会があったというわけです。

 信田さんはストレートに「相模原障害者殺傷事件はけしからん」といったメッセージではなく、心のドアをノックするような映像を志していました。

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 途中段階での打ち合わせに出された映像制作イメージでは、映像の最後に少し言葉のメッセージが書かれていたのですが、言葉が月並みすぎて、というかせっかくの映像のあとで言葉が浮いてしまう感じがあったので、こういう言葉を並べるのはやめて編集してもらいました。その結果が今日の映像です。

 いろんな人のおしゃべり、場の雰囲気の映像を繋いで、しっかりメッセージを伝えるものになっていました。「相模原障害者殺傷事件はけしからん」といったメッセージではなく、いつも言っている「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がいいよ」というメッセージです。昨年の作品よりもっとくっきりと伝わってくるものになっていました。

  昨年の作品

www.youtube.com

 昨年の作品では「いっしょにいると心ぷかぷか」がメインメッセージでした。そのメッセージが、いろんな人のおしゃべりや場の映像が入ることで、もっと伝わるものになっています。相模原障害者殺傷事件に対して、「そうじゃない、私たちは、どこまでも障がいのある人たちといっしょに生きていく、いっしょに生きていった方がいいから、いっしょに生きていくと、心ぷかぷかになれるから…」というメッセージです。

 ツジさんのお母さんの「勘違いの努力」のお話を聞く集まりで、たまたまダウン症の子どもを抱えたお母さんが参加していて、そのお母さんの子どもが生まれたときのショックから立ち直っていくまでの短いお話が光っていました。

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 この時はpvプロボノのカメラが2台入っていて、たまたまそのお母さんの映像が撮れたそうです。ドキュメンタリーなので、何が起こるかわからないところでカメラを回しています。ですからうまく映像が撮れるかどうかはそのときの運みたいなところがあります。

 そのダウン症の赤ちゃんを抱えたお母さんは遅れて参加し、壁際に立った位置で、しゃべり始めたので、信田さんの位置からはうまく撮れない角度だったそうです。しかもNHKの方も同じ場所で映像を撮っていて、それが重なってしまい、でもお母さんは絶対に聞き逃せないような話をしゃべっていて、とても焦ったそうです。でも、ちょうど反対の位置にいたもう一人のカメラマンがしっかりお母さんのおしゃべりを撮ってくれていて、今回のプロモーションビデオのいちばん印象に残るシーンになっています。

 このシーン、赤ちゃんが生まれたときの辛さから立ち直っていく話が心に響いて、ちょっと涙が出てしまいました。障がいのある人といっしょに生きていくって、こうやって人の人生を変えていくんだって思いました。よかったね、よかったね、って、なんか涙がこぼれてしまったのです。時々お母さんを見つめるダウン症の赤ちゃんの表情がステキでした。

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 試写会のあとpvプロボノの方3名と高崎でいろいろ話をしました。音楽がおしゃべりと重なって印象が薄まってしまうとか、「障がいのある人たちといっしょに生きていく社会を」という最後の文字はなんかしらけてしまうとか、いやこれはタカサキさんがいつも言ってる言葉だとか、でも映像の中で使うとなんかダサいとか、相模原事件という文字とおしゃべりのつながりが今ひとつよく見えないとか、ぷかぷかのお店の映像が一瞬しか入っていないので、どういうところが作った映像なのかよくわからないとか、いろんな意見が出ました。相模原事件をめぐってこういう話ができたことがすごくよかったと思います。映像の記録を撮ってもいいくらいのいい話しあいだったと思います。

 あちこち修正を加え、もう一度試写会を開いていろんな方の意見を伺った上で、更に修正を加え、今月末には公開する予定です。楽しみにしていて下さい。

 

 

 

私は彼らに育ててもらった

hanaちゃんのお母さんは「重度の療育ママ」だったそうです。

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 そのママが「私、hanaに育ててもらいました照れ」って、さらっと書くところが花岡さんのすばらしいところ。どうしてそこに共感したのかというと、私自身、「ぷかぷかさん達に育ててもらった」という感覚があるからです。「ぷかぷかさん」達を「支援してきた」のではなく「育ててもらった」のです。そのおかげで「ぷかぷか」があるのです。

 本の原稿にこんなことを書いています。

  

 養護学校の教員になった頃の話です。

 私は小学校の教員になる勉強はやっていましたが、障がいのある子どもたちを相手にする特殊教育の勉強はやっていませんでした。ですから、雨の中、裸で外へ飛び出してしまう子どもがいたり、自分の頭をぼかすかたたく子がいたりすると、どう対応していいかわからず、

「ああ、どうしよう、どうしよう」

と、おろおろする毎日でした。おろおろする、というのは恥ずかしい裸の自分がそのまま出る、ということです。専門知識を盾にするのではなく、何も防備するもののない素の自分で相手と向き合うしかありませんでした。でも、だからこそ、人として彼らと出会えた気がしています。その出会いは私の人生を揺さぶるほど強烈なものでした。

 もし私に専門知識があれば、彼らと人として出会うことはなかったと思います。そしてその後の人生もなかったと思います。「ああ、どうしよう、どうしよう」と、おろおろする毎日があったからこそ、今、「ぷかぷか」があります。「おろおろする毎日」こそ、新しいものを生み出す原点であった気がしています。

 

 私は彼らに育ててもらったのです。

なんかね、夢があっていいじゃないですか。

 ボーイング社が助成金応募団体を募集していたので、エントリーすることにしました。

 支援金額がなんと7万ドル〜10万ドルだそうで、ドルで銀行口座に振り込まれるそうです。7万ドルって、いったいいくらなんだと思いながら、でも、なんだかすごい!とわくわくしながら書きました。なんかね、夢があっていいじゃないですか。

 

プロジェクトの概要

1,目的及びゴール

 就労支援施設「ぷかぷか」(パン屋、お惣菜屋、カフェ、アートスタジオ)で働く障がいのある人たちと地域の人たちが一緒に6ヶ月かけて演劇ワークショップ(芝居作り)を行い、できあがった芝居を大きなホールの舞台で発表する。

 

2,社会のニーズにどのように貢献できるか

 2016年7月相模原で重度の障害者19名が殺されるという悲惨な事件が起きた。容疑者は「障害者はいない方がいい」「生きていても意味がない」などと言った。これは容疑者だけの言葉ではなく、社会の多くの人は「障害者はなんとなくいや」「障害者は生産性が低い」「障害者は社会の負担」と考えていて、容疑者と同じようなイメージを障害者に対して持っている。何よりも容疑者はこの社会で生まれ、容疑者の発想はこの社会が育んでいる。だから事件は容疑者の特異性だけの問題ではすまない。社会の何が病んでいるのか、私たちはどうすればいいのか、社会全体で考えていかねばならない問題だと思う。

 事件の衝撃が大きすぎて、みんな何をやっていいのかわからないような状態だったと思う。本プロジェクトは、そういった社会のニーズに応えるものとして位置づけられる。

 

 いろんな人がいることが社会の豊かさだとすれば、障害者を排除する社会はその豊かさを失っていく。お互い息苦しい、窮屈な社会になっていくだろう。

 そんな中で私たちは「障害者はいた方がいい」「生きている意味がある」と言い続けるだけでなく、みんながそう思えるような事実を作り続けようと思っている。今回の芝居作りもそういった思いの延長線上にある。演劇ワークショップは誰かが台本を書いてそれをみんなでやるような芝居ではない。どこまでも障がいのある人たちと地域の人たちが一緒になって、みんなで創り上げていく芝居。それは障がいのある人が一緒だからこそできる楽しい芝居になる。

 一緒に演劇ワークショップをやるとわかるのだが、芝居作りの場において彼らはもう「あれができない、これができない、役に立たない人たち」ではない。彼らがいなければ、芝居作りが成り立たないほどの存在。障がいのある人に向かって「あなたにいて欲しい」「あなたが必要」と素直に思える関係が自然にできる。

 障がいのある人たちは「あれができない、これができない」とマイナス評価ばかりが多いのだが、そんな彼らと一緒に新しい芝居を起こすというクリエイティブな関係ができる。しかもそこから生み出されるものは障がいのある人たちを排除しない、社会の幅を広げ、豊かにする「新しい文化」といっていいほどのものだ。

 彼らといっしょに創り上げる芝居には、そういった要素がすべて含まれている。芝居を見て一人でも多くの人が「障害者はいた方がいい」「生きている意味がある」というメッセージに共感してくれればと思っている。

 本プロジェクトは、相模原障害者殺傷事件を生むような病んだ社会の中で私たちはどうしたらいいのかという重い問いに対するひとつの具体的な回答になると思う。抽象的な、評論家のような無責任な答えではなく、確実に実行できる具体的な回答になる。

 

3,プロジェクトによる効果及び評価方法

 相模原障害者殺傷事件については優生思想云々といった大きな話が語られることが多いが、大事なことは病んだ社会が確実に変わっていくことだと思う。そのためには目の前の一人が変わることをすることが大事。障がいのある人たちと地域の人たちによる演劇ワークショップは、それに参加した人はもちろん、できあがった芝居を見た人も変わっていく。演劇ワークショップは芝居を作っていく過程をすべてホームページ上にアップしている。それを見る人も加えると、相当な数の人がいろんな新しい発見をしている。

  http://pukapuka-pan.xsrv.jp/index.php?みんなでワークショップ

 

 演劇ワークショップに参加した「ぷかぷか」のお客さんが、地域の中で目の前の一人を変えることをしていると神奈川新聞で紹介された。

《…そんな大家さんがこの1,2年で始めたことがある。バスの車内や駅で「ぷかぷか」のメンバーに出会ったときのあいさつだ。

「『セノーさん、こんにちは』とか、『テラちゃん、お疲れ』とか。あいさつで自分とメンバーみんなとの関係性を示すことで、怖い存在じゃなくて、人としてつきあえるんだよ、と周囲にわかってもらえたらな、って」

  少しずつ、目の前のその一人から少しずつ…。日々の暮らしの中で大家さん自身が変わり、周囲もまた変えようとしている。》

  http://pukapuka-pan.hatenablog.com/entry/2017/04/25/152019

 

 ワークショップ参加者の感想

●何にハマったかというと、それはやっぱり、ぷかぷかの皆さんの超個性的で魅力あるキャラクターであり、その皆さんとせつさんぱっつんさんあみちゃんさん、デフパペの方々と一緒に演劇を創作する自由な空気の場でした。

●自分の中に、ぷかぷかの皆さんとの演劇ワークショップで創った自由な空気の場が出来たので、いつも大事に持ち歩こうとおもいます。そうしていつでも、障がいのある人たちとも一緒に生きて行った方が楽しいよ!と発信していこうとおもいました。

●それまでにも障害のある方のパフォーマンスをテレビで見たことはありました。しかしながら僕はそういった映像を見るときどこか居心地の悪さを感じていました。どういう風に見たらよいか分からずとまどってしまうのです。

  しかし今回、生で彼らのパフォーマンスを見たとき全く違う印象を受けました。

  「なんてカッコいいんだ!」

   素直にそう思ったのです。軽い嫉妬すら感じるほどに。その時、彼らを「障害者」として見ていなかったのです。ただ人間が生きることの「凄み」のようなものを感じていました。

   身体を大きく揺らしながら朗々と「愛の讃歌」を歌う辻さん、見事な太鼓を披露してくれたアラジン大ちゃん、自分の壁を自分で壊す姿をありありと見せてくれたはっぱオールスターズ、電動車イスの上で身をよじらせながら魂の叫びのようなシャウトを聞かせてくれたラブエロピース。

   その後、ぷかぷかメンバーさん達と舞台に立つ上での大きな励みになりました。そしてこの先、自分自身生きていく上での勇気を貰ったようにも思います。

   彼らが自由に伸びやかに生きられる社会は、きっと「健常者」とよばれる人にとっても生きやすい社会だと思います。

 

 ●大声で発声したり歌ったり、夢中になって体を動かし、意見を出し合ったり、一つの事が出来上がっていく凄さだったり、お菓子やお弁当を食べながら皆んなで過ごす休憩時間だったり。本当に充実した時間でした。

  何時間も一緒に過ごすと、今まで知らなかったぷかぷかさんを知る事もできました。

  子供が大好きなぷかぷかさん。暴走するぷかぷかさんに対して、それを止めようとするぷかぷかさん。娘が泣いていたら(原因は親の私)、「俺じゃないよ」「俺は泣かしてないよ」と心配するぷかぷかさん。「午後も頑張ろう」とそっと私に宣言してくれたぷかぷかさん。静かに出来ない娘に対して注意するぷかぷかさん。

  「娘にとっていい体験になれば」と思い参加したのに、私が真剣になり夢中になり、また、知らなかったぷかぷかさんの側面を愛おしく感じたり。

   本番の次の日、乗っていたバスの窓から、野菜をせっとと運ぶスタッフとぷかぷかさんを見つけ、「今日もこの街を耕してくれてるんだ」と、この日常の風景にもまた私は自然と笑顔になっていました。》

      

 芝居の発表は「表現の市場」という表現活動を行う障害者グループの発表の舞台の中で行った。その舞台を見た人の感想

●さて、いよいよ「セロ弾きのゴーシュ」が始まった。すごい人数だったけど、どの人もこの瞬間を楽しみにしていたんだろうなという“気”が伝わる。何人かからは、「成功させたいの!」という想いも伝わる。「表現の市場」なのだから、この“伝わる”ということは重要だと思う。舞台に立っている人だけが楽しくて満足というのでは、ちょっと残念だ。表現するからには、やっぱり何か伝えるんだと思う。

  ワークショップの事は私には知る由もないけれど、のびのびと舞台に出ているぷかぷかさんたちから、とても自由さを感じた。ピアノの方がこれまた楽しそうに弾いていて、それに合わせて歌うぷかぷかさんたちから、人生は楽しまなくちゃね!と言われたような気がした。

   高崎さんが出てきた場面では、舞台の上のぷかぷかさんからも、客席にいるぷかぷかさんからも、熱いまなざしがあったように思う。みんながみんなといることが大好きで、ここに今日もみんなでいれて嬉しい!と高崎さんにメッセージを送っているようだった。

    舞台の最後に高崎さんが真面目に「障がい者と社会」の話をした。その時に、「あ、そうだ、今日はそうゆう舞台を観に来たんだった」と私は思い出した。観ている最中、何か特別な特異なものを観ているような感覚は全然なかった。最初のソワソワした居心地の悪い感じは、もうどこにもなかった。本当に楽しい週末を私は過ごせたし、この舞台を観に来て良かったと思う。なにより、自分自身にまだまだ素直な息子が「あー今日は楽しかった!」と言ってその日は寝た。

   それでも、その日の夜に思ったことは、どんな人のことも特別扱いしない社会にどうしてならないんだろうか、ということ。今日の会場は温かい空気があって、和やかで、笑顔がたくさんあって幸せに満ちていた。だけど、社会はどうだろう?ひとたび電車に乗れば、ちょっと障がいの子がいると、ジロリと怪訝に見る大人がいる。障がい児を引き連れているお母さんが暗い顔でその子の後ろに立っている。その現実と「表現の市場」の幸福感の距離がまだまだかなりあることに、悲しくなる。でも、それは社会にいる大人たちの想像力の乏しさが原因かもしれない。現に私だって、今回気づいたことや、知ったことが沢山あった。またこの「表現の市場」が開催されて、私みたいな人が、一人でも二人でも増えることを望みます。私にもまだまだ知らない彼らの魅力がたくさんあるんだと思う。相手を知りたいと思う本能に、障がいもフツーの人も関係ないんじゃないかと思う。

 

●『表現の市場』の企画者である高崎明さんがよく口にする「障がいのある人達とは一緒に生きていった方がいい」というフレーズが浮かんできて、身体に浸みてくる。

  そう、「浸みてくる」・・・このゆっくり温まるぬくもり感が実にいいのだ。

  高崎さんの言葉は、昨年の津久井やまゆり園殺傷事件の容疑者の「障害者はいないほうがいい」に対応した彼独特の言い回しなのだが、それを言葉だけではなく、こんな風に実際に実感できる場を創りだしているところが彼の凄いところ。

   ボクなんかは「優生思想はけしからん!」「自分の中の差別・加害者性に気づくべきだ!」とすぐにとんがった言葉を口にして、空回りばかりしてる。情けない限りなのだ。

   そんな反省も込めて、ぷかぷか村の仲間たちの劇を見ていると、劇場全体が心地よい熱気に包まれているのに気づく。

 

●『なんて自由なんだろう』『なんだなんだ、この衝撃的なものは…』

 これは率直な感想です。

   『障害のある人たちと一緒に過ごしていったほうがいい』高崎さんの言葉。 

    私も幼少期から障害のある子と共に育ってきたこともあり、心ではわかっていたはずだったけれど、改めて高崎さんから言葉で聞いたとき、目が覚めた感覚でした。

     心から楽しんでるぷかぷかさんたちのありのままの姿、輝いてい る目、自然と支え合う心、とにかくそこにいる仲間が力を合わせるときに発揮する強さに感動‼

   あらじんの太鼓演奏の力強さにいきなり引き込まれ、葉っぱオールスターズのラップに涙し、デフ・パペットシアター・ひとみの人形劇に感動し、レクイエムを聴きながら、忘れてはいけない相模原事件、これから先同じような事件が繰り返し起こらないようにと心から願い、そして犠牲者の方への思いを改めて胸に。

   ぷかぷかさんたち主演のセロ弾きのゴーシュには、笑いもあり、感動もあり、私たち健常者では出せない何とも言えない間や表現。ここまで味が出せるのは彼等しかいない。私も娘もその魅力にすっかり引き込まれていました。

     終演した時の娘の言葉『障害のある人が本当に演奏をしたり、演劇をしていたの?誰がどんな障害を持っているかもわからなかったよ。本当に楽しかった、凄かった、カッコよかった!!』娘たちもぷかぷかさん達の魅力に自然と気付かされていました。

   障害のある人は何もできないという勝手な人間社会の思い込み、そういう大人が増えれば当然、子どもたちは、当たり前にそう思い込んでしまう。

   『自分らしく生きていこう』と言ってもらえてる気がして、帰り道、心が軽くなる感じでした。

  

 表現の市場の映像

  http://pukapuka-pan.hatenablog.com/entry/2017/02/03/162939

 

4,他の組織ではなく当団体がプロジェクトを行う意義及びその貢献について

 「ぷかぷか」は代表の高崎が養護学校の教員時代に障がいのある子ども達に惚れ込み、退職後もずっと一緒に生きていきたいと始めたもの。だから、日々「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がいいよ」というメッセージを様々な方法で発信している。一緒に生きていった方が私たちの社会が豊かになるからだ。

 今回のプロジェクトは、そのメッセージが芝居という目に見える形で表現される。障がいのある人たちがいると社会が豊かになるということが実感できるような芝居を舞台にあげ、たくさんの人たちと共有できる。「ぷかぷか」が日々発信しているメッセージが、形を変えてより広く広がっていくことに今回のプロジェクトを行う意義がある。

 これは先に述べた相模原事件への「ぷかぷか」のメッセージでもあり、病んだ社会を回復する試みでもある。そういう意味で大きな社会貢献といっていい。

 

 街の中に作った「ぷかぷか」のお店は、街の人たちと障がいのある人たちとのたくさんの出会いを作ってきた。素敵な出会いのおかげで、たくさんの「ぷかぷかのファン」を作り、地域社会を豊かにしてきた。

 今回のプロジェクトは、単なるお店のお客さんという関係にとどまらず、もっと踏み込んで一緒に新しいものを創り出すクリエイティブな関係を障がいのある人たちと切り結ぶもの。「あれができない、これができない」とマイナス評価ばかりの障がいのある人たちとクリエイティブな関係を作ること自体画期的なことだ。

 福祉事業所がこういった形で障がいのある人たちと新しいものを創り出そうという試みは、福祉の新しい分野、歴史を切り開くものとして、とても意義あるものだと思う。今回のプロジェクトはそれを実行するものだ。

 福祉の新しい歴史を切り開くという意味で、今回のプロジェクトは大きな社会貢献をしている。

 

5.プロジェクトの発展性(方向性及び規模の拡大、助成期間終了後も継続可能なものか)

 演劇ワークショップの参加者は毎回かなり入れ替わる。参加者が変われば、ワークショップの場の雰囲気も毎回変わってくる。毎期ちがうテーマの芝居をやるので、進行役も鍛えられ、最終的にできあがる芝居もレベルがアップしていく。

 マスコミもかなり注目してくれるようになり、第三期目の発表会は読売新聞、神奈川新聞が大きく報道してくれた。NHKも相模原障害者殺傷事件の取り組みで紹介してくれた。

 6月には慶應義塾大学日吉キャンパスで行われる日本演劇学会全国大会で「障害者との演劇活動は何を目指すのか」というタイトルで発表を行う。

 第一期と第三期の演劇ワークショップについては記録映画もでき、プロモーションビデオとあわせてあちこちで自主上映を展開していく予定。

 助成金に頼らず、みんなでワークショップの試みを支える仕組みを構築する予定。よこはま夢ファンド(市民活動推進基金)と連携し、寄附金控除など税の優遇措置が受けられる仕組みの中で幅広く寄付を集める。また神奈川県独自の認定NPOの申請も行い、寄付を集めやすい環境を整える。

 サービスグラントのプロボノ支援の審査が通り、企業との連携を目指す支援を受けることになった。これがうまくいけば企業からの支援が受けられる。

 

 

★ツジさんの妹とさんが早稲田大学の大学院で演劇を研究しているそうで、お母さんから今度演劇学会で「ぷかぷか」が紹介されるそうですが、ご存じですか?という問合せがありました。ワークショップ進行役の花崎さんが「障害者との演劇活動は何を目指すのか」というタイトルで研究発表するみたいです。

 

 

目の前のその一人から少しずつ…

 今朝の神奈川新聞の「生きる証」ー地域の中でー というシリーズで「自分が変わり周囲も」というタイトルでぷかぷかの常連のお客さんオーヤさんが紹介されていました。

www.kanaloco.jp

 子どもと一緒に毎日のようにクリームパンを買いに来たのがきっかけでおつきあいが始まり、パン教室に一家で参加したり、アートのワークショップにやはり一家4人で参加したりしているうちに、オーヤさん自身がどんどん変わってきました。

 プロモーションビデオの中で、その頃の思いを語っています。

www.youtube.com

 

 ぷかぷかさんたちとおつきあいしてきて「自分も耕されてるのかなって思ったりします」と語るオーヤさん。障がいのある人たちとおつきあいして、そんなふうに受け止める人はなかなかいません。

 演劇ワークショップに参加したときは、涙を流すほどの心の揺らぎがありました。そんな深いおつきあいをオーヤさんはぷかぷかさん達とやっているのだと思います。

 記事の最後にこんな話が載っていました。

…そんなオーヤさんがこの1,2年で始めたことがある。バスの車内や駅で「ぷかぷか」のメンバーに出会ったときのあいさつだ。

「『セノーさん、こんにちは』とか、『テラちゃん、お疲れ』とか。あいさつで自分とメンバーみんなとの関係性を示すことで、怖い存在じゃなくて、人としてつきあえるんだよ、と周囲にわかってもらえたらな、って」

 少しずつ、目の前のその一人から少しずつ…。日々の暮らしの中でオーヤさん自身が変わり、周囲もまた変えようとしている。

 

 相模原障害者殺傷事件という悲惨な事件の一方で、こうやって少しずつ自分のまわりを変えようとしている人がいる。子どもと一緒にクリームパンを買いに来た、というたったそれだけのことがきっかけで、ここまで人が変わるということ。ここにこそ希望があるように思うのです。

 オーヤさんは別に社会を変えようとか、そんなふうには多分思っていません。「彼らとはおつきあいした方がトクだよ」って、思ってるんだと思います。ぷかぷかの影響を受けて…

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