昨日の上映会のあとのトークセッション、1時間しかない、と聞いていたので、1時間ではぷかぷかのこと語りきれないなぁ、と思っていたら、やっぱりその通りで、中途半端で終わってしまいました。講演会、トークセッションはいつもそういう感じで終わってしまうので、やっぱり伝えたいことは本にまとめておこうと思いました。
本の原稿はあるのですが、出版社との話し合いがうまくいかず、250枚ほどの原稿が宙に浮いた状態です。ただ、原稿を書いたのがもう2年以上も前なので、その後のぷかぷかの活動を語るには、少し物足りない感じです。特に相模原障害者殺傷事件という大変な事件が起こり、それにどう向き合うかは、今最優先の課題といっていいと思います。あの事件は、障がいのある人たちを社会がどう見ているかが如実に表れたように思っています。事件は極端な形で起こりましたが、何が問題だったのかを丁寧に追いかけていくと、社会全体の問題が見えてきます。その社会の問題に福祉事業所はどう向き合うのか、ということです。そのことを事件前に書いた原稿では全く語っていません。
語りたいことはたくさんあるのですが、それをどうわかりやすく系統立てるか。そういう意味では、相模原障害者殺傷事件で見えてきた問題を軸にぷかぷかが伝えたいことをまとめていくのも一つの方法かなと思います。
相模原障害者殺傷事件の犯人は「障害者はいない方がいい」「障害者は不幸しか生まない」「生きている価値がない」などといいました。これは犯人に限らず、障がいのある人たちとおつきあいしたことのない人は、多かれ少なかれみんな思っていることだと思います。
最近は減りましたが、朝、混雑している十日市場のバス停あたりから苦情の電話が「ぷかぷか」によく入りました。「また横入りした」「うるさい」「バスの中で迷惑している」等々です。みんな「障害者はいない方がいい」と思っている感じです。
でも、みんながそう思って、障がいのある人たちを社会から排除したらどうなるのでしょう。そこを想像してみて下さい。
いつも言うことですが、いろんな人がいること、それが社会の豊かさだと思っています。その豊かさをぷかぷかは目に見える形で、肌で感じる形で示してきたと思います。
ツジさんはおしゃべりです。「仕事中、そんなにおしゃべりしてていいの?」と訓練会の先生に叱られたこともあります。でも、ツジさんのおしゃべりはたくさんのファンを作り出し、ぷかぷかの売り上げに貢献しています。
ツジさんに限らず、ぷかぷかさんは仕事中、みんなおしゃべりしています。ぷかぷかの楽しい雰囲気を作るいちばんの源です。パンの外販先でもおしゃべりしています。でも、そこで生まれる楽しそうな雰囲気がお客さんをたくさん集めています。
ほかの事業所から変わってきた人の話によると、以前いた事業所ではおしゃべりはもちろんよそ見も禁止され、それを守らないとペナルティがついたといいます。おしゃべりやよそ見を監視する社会、がそこにはあったのだと思います。なんだか息が詰まりそうです。そんな社会で人は生きられません。
私が私らしく生きること、それが一番大事だと思っています。障害者は社会にあわせなければ生きていけない、なんていわれますが、そのあわせる社会は私たちが本当に私らしく生きているのでしょうか?
ぷかぷかは接客マニュアルに合わせるぷかぷかさんの姿が気色悪くて、マニュアルにあわせる、言い換えれば社会にあわせることをやめました。彼らのそのままの姿で勝負することにしたのです。
結果、ぷかぷかが好き!という人がたくさん現れました。このことは何を物語っているのでしょう。
結局、どこかでみんな今の社会に息苦しさを感じているのではないでしょうか。そんな中でぷかぷかさんたちのふるまいにホッとするものを見つけたのだと思います。
だとすれば、ぷかぷかさんたちは、この窮屈な社会を救ってくれる存在になります。
「障害者はいなくなればいい」ではなく、彼らはこの社会に必要な存在なのです。そのことをぷかぷかはわかりやすい形で提案してきたと思います。