ぷかぷか日記

ひいくんのあるく町

 街を耕す会・港北の集まりで『ひいくんのあるく町』を見ました。

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 ひいくんは知的障がいのある39才のおじさん。毎日ヘルメットを手にひょこたんひょこたんと町を歩いています。歩きながら、町のあちこちでお店のちょっとしたお手伝いをしたり、田んぼで耕耘機を洗うお手伝いをしたり、いろんな人とおしゃべりしたりしています。小さな頃からお父さんがいつも連れて歩いていたそうで、この映画をつくった若い監督も、子どもの頃からひいくんのことは知っていて、頭をなでてもらったりしたそうです。映像の中でも、お祭りで練り歩きながら、乳母車に乗って見物している小さな子どもの足をなでたりしていたので、昔から小さな子どもに優しいのだと思います。

 そうやって町の人々の心の中に、ひいくんは「いて当たり前」という存在になっています。いわゆる「障害者」というような存在ではなく、町の人たちにとって、ホッと心のあたたまる、なくてはならない存在になっています。

 ひいくんが町をあるくことで、自然にそういった関係ができたところが、この町のおおらかなところかと思いました。

 ひいくんのあるく町も、時代の流れの中で、だんだんシャッターを下ろすお店が増えています。それでも、町をひょこたんひょこたん歩き回るひいくんを受け入れるあたたかさ、やさしさは町に残っています。人の住む町の一番大事なところですね。

 脳梗塞で倒れ、お店を閉めてしまった人のところへ、近所の人が一日だけお手伝いしてお店を開けに来てくれます。この場所を、近所の人たちがいつでも立ち寄って、くつろげるような場所にしたいね、といった話が持ち上がります。

 町はそうやって少しずつ変わっていくようです。その変わり様の中心には、ひいくんを受け止めるあたたかさ、やさしさがあるように思いました。ひいくんが町を歩くことで引き出したあたたかさ、やさしさといってもいいと思います。

 

 みんなでもっともっと町を歩こう。みんなが歩けば、町は変わります。歩くことで希望が生まれます。

 

〈障がいのあることがもはや「負」の価値とはならない社会〉がすでにぷかぷかのまわりにはできている

 6月3日の朝日新聞「折々のことば」に奈良の福祉施設「たんぽぽの家」理事長の言葉が紹介されていました。

 

〈 障がいのあることがもはや「負」の価値とはならない社会のあり方をめざす。〉

〈 施設をサービスではなく、社会変革の拠点にしたい。 〉

 

 ぷかぷかは「ぷかぷかさん達の魅力」でもっているようなもので、ぷかぷかさん達がいなければ、何のおもしろみもないただのパン屋であり、ただのお惣菜屋であり、ただの食堂であり、ただのアートスタジオです。

 ぷかぷかのおもしろさはどこまでもぷかぷかさん達の魅力が作り出したものです。障がいのあることが「負」の価値どころか、こんなにおもしろいお店を作る大きなチカラになっているのです。

 彼らの魅力は、今まで社会が見落としていた大きな価値だと思います。その価値を誰にも見えるようにし、大きなチカラとしてお店作りに生かしたのが、ぷかぷかの日々の活動でした。毎日の情報発信は、その新しい価値の発信そのものでした。

 ぷかぷかのファンが増え続けているのも、その新しい価値にたくさんの人が気づいたからだと思います。

 セノーさんはこうやって寝ながらファンを増やし、お客さんを増やしているのですが、この寝顔が作り出す雰囲気こそが新しい価値だと思います。

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 こういったことを考えると〈 障がいのあることがもはや「負」の価値とはならない社会 〉がすでにぷかぷかのまわりにはできていることになります。

 それは同時に、障がいのあることを「負」の価値と見なしてきた社会の価値観を問い直すことになります。

 セノーさんはこうやって寝てばかりいて、前にいた作業所で居場所を失いました。社会の価値観の中で居場所を失った、ということです。ぷかぷかでは寝ていてもファンが増え、お客さんが増えています。このことは何を意味しているのでしょう。

 「ぷかぷかに来るとホッとする」というお客さんが多いのは、セノーさんがこうやって寝ていられる雰囲気があるからです。

 セノーさんは寝ながら社会を問い直し、社会を豊かにしているのだと思います。

 社会を変える拠点にぷかぷかはすでになっているのだと思います。

 

 

  

社会課題解決を「なんちゃってファッション」に終わらせない3条件

 日々の生活の〈ささくれ〉をお取りします、という株式会社「御用聞き」の社長・古市さんの昨日のTwitterにこんな言葉がありました。

 

社会課題解決をなんちゃってファッションに終わらせない3条件

・現場に立脚している   ⇒仮想ではなく事実がある

・匍匐(ほふく)前進   ⇒解決に向けあくなき前進を続けている

・バイリンガル   ⇒「ソーシャル」と「ビジネス」の両言語が使える

 

 なんかこれって「ぷかぷか」でやってることじゃん!て思いました。

 たとえば相模原障害者殺傷事件に関して、ぷかぷかは「障害者はいない方がいい」といった犯人の言葉、あるいは言葉はちがうにしても、同じ発想で障がいのある人たちを様々な形で排除する社会全般に対し、

「障がいのある人たちはいた方がいい」

「一緒に生きていった方がいい」

「その方がトク!」

とみんなが納得できるような「事実」を日々の活動の中で作ってきました。

 優生思想云々の大きな話、抽象的な話をいくらやっても社会はなかなか変わりません。大事なことは障がいのある人たちを排除しない方向に社会が変わることです。そのためには私たちは何をしたらいいのか、ということです。

 ぷかぷかは、日々の活動の中で「ぷかぷかさんが好き!」というファンをたくさん作ってきました。地域社会でたくさんのファンを作ることで、地域を耕し、地域を豊かにしてきたのです。地域社会が障がいのある人たちを排除しない方向に変わってきた、ということです。

  つい昨日も桜美林大学の授業でそれをやってきました。

pukapuka-pan.hatenablog.com

 

 〈 現場に立脚している   ⇒仮想ではなく事実がある 〉ということです。

 

 

 相模原障害者殺傷事件の直後、多くの方が「決して忘れない」と口にしていました。

pukapuka-pan.hatenablog.com

 

 相模原障害者殺傷事件への憤りをバネに書いた演劇ワークショップの助成金申請書が2年続けて100万円の満額採択。

pukapuka-pan.hatenablog.com

 

 「決して忘れない」どころか、今もふつふつと怒りが湧いて、そこからさらに新しいものを生み出しているのです。前へ前へ向かう「攻め」の姿勢。

 

〈 匍匐(ほふく)前進   ⇒解決に向けあくなき前進を続けている 〉のです。

 

 

 事業を続けるためには、事業がうまく回るだけのお金が入ってくる仕組み、つまりはビジネスが必要です。ぷかぷかは今、外部とのコラボを模索し、そこからブランド商品を立ち上げています。淡路島の自然農法のグループビオアグリとのコラボでは、ビオアグリのメンバー全員の似顔絵をぷかぷかさん達が描き、それを使った新しい商品ラベルを作りました。東京で開いたビオアグリのアンテナショップでぷかぷかのパンの販売をし、供給が間に合わないくらいパンが売れています。

 ぷかぷかさん達のチカラをビジネスに積極的に生かしているのです。

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〈 バイリンガル   ⇒「ソーシャル」と「ビジネス」の両言語が使える 〉

ぷかぷかさん達のチカラを存分に生かした〈ソーシャルビジネス〉をやっているのです。

 

 

株式会社〈御用聞き〉のホームページです。 

 

www.goyo-kiki.com

 

一人の男性の働きを通して〈御用聞き〉の仕事を語っている映像です。

www.youtube.com

この映像は、相模原障害者殺傷事件への自分の思いを語る映像を作りたいと、今ぷかぷかの取材に来ている石井里歩さんの作った作品です。

授業が終わったあと、終わったあとこんな顔になりました。

 桜美林大学で「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がトク!」をテーマにした授業をやってきました。わずか1時間半の授業でしたが、終わったあとこんな顔になりました。

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 「トク!」という言葉が、しっかり届いた感じのする顔です。これは私が「トク!」についてお話ししたのではなく、上映会のあと、ぷかぷかさんと「すごろく」をやった結果です。やったのはこんな「すごろく」です。

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担当の林先生の授業案

私がぷかぷかさんに惹かれているのは、話をしているとあったかい気持ちや楽しい気持ちになるからです。

「え!?そんな発想出てくる~!?」という驚きや、スキンシップのあったかさ、自分の世界に没頭している彼らを見ることでうまれるうらやましさ、自分のことや生活、社会をふりかえる時間ができること、とにかく彼らといると楽しいことです。

こういう驚きやあったかさ、楽しさ、自分を見つめることを「すごろく」を通してぷかぷかさんを知ることから感じてもらえたらと思いました。

「すごろく」には「お休みの日は何をしていますか」「お店で好きなパンは何ですか」「お仕事で一番すきなことは何ですか」のようなものをコマに書いておき、ぷかぷかさん→参加者1→ぷかぷかさん→参加者2→ぷかぷかさん→参加者3という形で各グループ進めていくのがよいと思います。

 

 この「すごろく」というアイデアが見事にヒットしたのです。

 

 こうやってぷかぷかさんと腕相撲をやったり、

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お話を聞いたり

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みんなで手を繋いでぐるぐる3回まわったり、ハイタッチしたり、ただそんなことやっただけなのですが、帰り際にはこんな顔になりました。

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 共生社会を作ろうとか、共に生きようとか、そんなかっこいい言葉はいらないのです。「すごろく」という誰でも楽しめる遊びをいっしょにやっただけで、お互いこんないい顔のできる関係ができるのです。

 「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がトク!」という言葉を理解したのではなく、もう全身で感じとった顔ですね。

 「障害者は犯罪を犯すのではないか」と彼らに近寄りもしない大人達は、どう考えてもソン!しています。彼らとおつきあいしないなんて、もったいないです。

 区役所の人権研修会でも、この「すごろく」を今度はやってみようと思います。人権研修会が終わって、みんなでこんな顔ができたら、人権研修会は大成功です。

 

学生さん達の感想

・ 今日の授業を通して、ぷかぷかさんが実際にどういう活動を行っているのか、またそれに携わった周囲の関係者がどういう気持ちで接しているのか少し分かった気がする。また、すごろくを通してぷかぷかさんの趣味が高速道路の絵を描くことであることを知り、とても驚いた。高速道路というところに視点を向けられるのはすごい才能だと思った。今日の授業を通して、人と話すことの大切さに再び気づかされた。

・ すごく楽しかったです。すごろくの勝ち負けよりも内容に夢中になれて、ぷかぷかさんを含め周りの方のことも知ることができました。ボランティアなどとは違って、一緒に遊ぶことができて、いつもと違う感じがしました。ビデオを見てお店に行ってみたいと思ったし、話を聞いて、大変だと感じることが同じだったり、趣味が同じことが発覚したり、話さないと分からないことがたくさんありました。今日は参加してよかったです!

・ 最初はぷかぷかさんに「笑顔が少ない」と言われてしまったのですが、ゲームを通して最後には「笑顔が増えた」と言ってもらえました。初対面が多い中で、がんばって自分の思いを伝えている姿に勇気をもらえました。

・ この空気感がとても居心地の良い時間でした。これが人を耕す、豊かにする時間。場所を共にするだけで人をつなげていく。ことばを交わすと笑顔が生まれる。作業内容ももっと知りたいと思いました。今日はありがとうございました。

・ 映像を見て、ぷかぷかさんがとても楽しそうに活動をしている様子が分かりました。アートやパン、お惣菜作りも想像していたよりも本格的に行っていて、ぜひ見学に行きたいと思いました。自分自身知的障がいのある方々と関わるボランティアをしているので、障がいがあってもなくてもその人がその人らしく生きられる環境というのはとても大切だと感じました。

・ 冒頭の映像で、いわゆる「健常者」がぷかぷかさんたちと普通に過ごしてたくさん笑っている姿を見て感動しました。すごろくを通して、ぷかぷかさんや留学生、そして大学生みんなの思いを知れて楽しかったです。こうやってお互いに「同じ目線で楽しめる」というのが、みんなにとって生きやすい社会なのだと思います。

・ 今日は本当にいい経験ができたなと思います。ぷかぷかさんの好きな食べ物や趣味などたくさん聞けました。お仕事をして、自分の好きなことをして、時間の使い方が上手だなと思いました。見習いたいことがたくさんありました。とても楽しい時間を過ごすことができました。

・ 最初はお互いに緊張していましたが、ゲームなどを通してだんだん話せて、ゲームの中の質問に答えるだけでなく、そこから発展した会話もできました。また、ぷかぷかさんから「みなさんはどうですか?」と質問をしてくれたことがとてもうれしかったです!また、嵐が大好きでその話をしているときに本当にうれしそうで、目がキラキラしていて好きなことに夢中な姿がステキでした。このような機会があってよかったと思ったし、もっと話してみたいと思いました!

・ 今日の授業を受けて、ぷかぷかさんとみんなと話してすごくおもしろかった。一番印象に残っているのは、ぷかぷかさんはユーモアがあり、自分が趣味あるものを学ぶことや積極的に生活していることです。

・ 今回の授業ではじめてここまで障がいのある方と深く関わることができました。自分の考えていたことより色々な面で想像を超えていました。普段友達と話しているのと全く変わらないし、とても良い経験になりました。

・ すごろくゲームがあったから話しやすかった。話してみると興味があることにはすごく熱心に話してくれてみんな和気藹々と話せてよかった。また、パン屋さんにも行ってみようかなと思った。大学に来てみんなと話すって、私がもしぷかぷかさんの立場だったらできないんじゃないかと思った。やさしくて強い方だなと思った。

・ 最近は障がいのある人と接する機会はほとんどなく、小学生のとき以来だったので、とても懐かしかった。教職をとっており、これからも関わっていくので相手の考えを理解できるようになりたい。

・ 今日はぷかぷかのみなさんと交流して楽しかった、というのが正直な感想です。話を聞いたりするだけが今回の授業だと思っていたので、交流できたことは貴重な体験だった。内向的な人が多いと思っていたが、自分の意見をしっかり述べていて驚いた。

障がいのある子どもが街を歩くと、街が変わる

 障がいのあるお子さんの親の会の人たちが見学に来たのですが、いい話を聞きました。

 お子さんが毎日通う道で、毎日決まって会う方が何人かいらっしゃるようです。家の前を掃除する方、花に水をやる方、散歩に出かける方…。そんな街の人たちが、毎日お子さんにあいさつするそうです。「おはよう!」「今日も元気だね」「いってらっしゃい」…。お子さんが小さい頃は毎日抱っこしてくれる方もいたそうで、大きくなった今はハイタッチだそうです。風邪引いて休んだりすると、「あれ?今日はどうしたの?」と心配してくれたそうです。

 子どもがいなければ、こんなおつきあいは生まれませんよね、とうれしそうにご両親はお話しされていました。

 障がいのある子どもが街を歩くこと、それは街を耕し、街を豊かにしていることになるのです。

 こんな街なら、障がいのある人たちのグループホーム建設の話があっても、「障害者は犯罪を犯す可能性があるから断固反対!」などといった声は、多分出てこないだろうと思います。たとえ出たとしても、子どもと毎日あいさつを交わしていた人たちは、「そんなことはありません」とはっきり反論してくれます。

 日々の暮らしの中での、さりげないおつきあいが、社会の中で大きな意味を持つのです。

 ですから、そんないい話はぜひFacebookで発信した方がいいですよ、という話をしました。ふだんおつきあいのない方が見れば、障がいのある人に関する新しい発見になります。あれができないこれができない、だけじゃなくて、街を耕しているんだ、という発見。

 そんな発見をする人が増えれば、社会は少しずつ変わっていきます。

 

 障がいのある人たちの「社会的生きにくさ」は社会を変えていく努力を私たちがやらないと、何も変わりません。努力といっても、何かがんばってやる、とかじゃなくて、日々子どもとの関わりの中で発見した楽しいこと、おもしろいこと、失敗したことなど 

「今日こんなことがあったよ」「またやってしまいました」

といったニュアンスで発信するだけです。友だちの花岡千恵さんはそういうやり方でhanaちゃんのファンをたくさん作りました。hanaちゃんのかじった生のジャガイモの写真載せただけで、ものすごいたくさんの人が「いいね」を押していました。「そうか、hanaちゃんはネズミだったんですね」「歯が丈夫なんですね」といった書き込みもありました。みんなが楽しみながらhanaちゃんとの日々を共有してる感じです。

 重度の障がいを持った子どものファンができるなんて、今まで考えられなかったことです。

洗濯機に夢中すぎて、
なかなか帰れない
#重度知的障害児

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コメント
鶴貝 美枝 昔、家電売り場で働いていた時にご来店の重度知的障害のお客さまのこと思い出しました。

成人になってもよく来ていて、もっと見る

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鶴貝 美枝さんが返信しました返信2件
富田 哲司 あまり夢中になりすぎて酔わなければ良いんだけど🤣

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花岡千恵さんが返信しました返信1件
五島 祐子 我が家の息子ちゃんも、洗濯機フェチですw
回るもの♡キラキラしてるもの♡ゆらゆらしてるもの♡大好物デス(o^^o)
なので家で洗濯機を回していると、洗濯機にしがみついている事も度々wもっと見る

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五島 祐子さんが返信しました返信2件
前 妙美 実は、わたしもやる♡笑

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花岡千恵 なんと!!今度私もやってみよう笑

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前 妙美 けっこうねー楽しいよ♡笑
あのね、水の流れを見るのが楽しいの!笑

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それじゃあ、人生つまらないじゃないですか

 たままた5年前のFacebookの記事を見つけ、なかなかいい記事だったので紹介します。お母さんの生き方がステキです。

 

 ある集まりで、「子どもが養護学校卒業したら、一緒に自営業やります」といいだしたお母さんがいて、「おお、すげぇ!」と思ってしまいました。子どもは重度の障がいがあって、自分でなにか仕事をやる、というのはかなり難しいようでした。養護学校卒業後は「重度心身障害者の施設」に行く、というのがおきまりのコースだと思うのですが、「でもそれじゃあ、人生つまらないじゃないですか、子どもと一緒にわくわくするような商売をしたいんです」とあっけらかんといい、思わず拍手したくなりました。

 「それじゃ、人生つまらないじゃないですか」という言葉が光っていました。子どもと一緒に生きてきたお母さんの素敵な人生がそのまま見えるような気がしました。養護学校の進路指導は、こんな素敵な言葉にどう答えるんでしょうね。

 車いすに乗った重度の障がいを持った子どもと一緒に商売をするなんてことは、ふつうは思いつきません。子ども自身は手足を動かして働くのは無理なのですから。それでも、その子どもと一緒に商売をしたいといいます。働けない子どもと一緒に働くとはどういうことなのでしょう。

 そのときの集まりの自己紹介用紙に、そのお母さんはこんなことを書いていました。
 「ものを作る人がいれば、作れないけど、商品の販売によって人と関わり、相手を幸せな気持ちにできる人もいます。それは障がいがあるなしに関係ないと思います。ならば、重い障がいのある人にも仕事があってもいいし、彼らを輝かせる商品や、サービスの提供があればいいのに…と日々考えています。」
 「自分自身が趣味で手織りをしており、障がいのある子どもと生活しているからこそ、質感や色選びのヒントが得られて、ものづくりに反映されていると思っています。」

 働く、働けない、というときのイメージをこんな風に変えれば、働くことのできる人がもっと増えることになります。あるいは、一緒にいることの意味をこんな風に広げていくと、一緒に働く意味も、もっと豊かなものになります。
 そんなことに気がついて、重度の障がいを持った子どもと一緒に商売をしたい、というお母さんの言葉も、ようやくちゃんと受け止めることができたように思います。

 養護学校卒業後、どこかの重度心身障害者の施設に入るというおきまりのコースは親にとっては安心だと思います。でも、その安心の上に乗っかってしまうと、人生つまらないじゃないですか、と、あえて困難な「自営業」を選ぶお母さんの「志」にわくわくするほどの共感を覚えました。

パン教室は、地域の希望を生み出している

 今日は久しぶりのパン教室。シンプルな菜種ロールはおいしかったです。バターロールのバターを菜種油に変えたパンですが、さっぱりしておいしいですね。シンプルなパンのシンプルなおいしさこそ、パン本来のおいしさだと思います。

 今日は地域の方が6名参加、そのうち二人が小学生でした。二人は何の抵抗もなく、ぷかぷかさんと一緒にパンを作ったり、野菜を切ったりしていました。偏見が邪魔して、うまくおつきあいできないのは大人の方で、困ったものです。おつきあいできないだけでなく、偏見が力を持ち、障がいのある人たちの暮らしを地域から排除してしまうところまで行くと、これは明らかに人権問題です。

 と書いたところで、当の偏見持った人たちに言葉が届くわけでもなく、むなしい気持ちになってしまいます。それでも子ども達が楽しく参加してくれたので、希望はあるのです。子ども達は地域の未来を作ります。パン教室に参加した子ども達が、社会を担う年齢になったとき、地域社会はきっと変わってくると思っています。ぷかぷかができてから、パン教室に参加した子ども達は軽く100人を超えます。100人は大きいと思います。

 パン教室はですから、地域の希望を生み出しているのです。たかがパン教室、されどパン教室、なのです。

 地域の福祉事業所が、地域の希望を生み出してるなんて、ステキじゃないですか。

 

  

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できあがり!ピザ、肉まん、レーズン紅茶ロール、菜種ロール、スープの豪華な昼食でした。

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今日、セノーさんが遅れてきて、でも民 ⍤⃝  、ごくふつうに受け入れて、一緒にパンを食べた。なんかとてもぷかぷかな出来事でした。セノーさんのそのまんまを、ふつうに当たり前に受け取り、分け合う。

今日はステキな光景をいただきました。      (まーさん)

 

「トク!」の意味をちょっとだけ体感します

 6月4日(月)朝9時から桜美林大学でぷかぷかさんたちと一緒に、「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がトク!」をテーマにした授業をやります。プロモーションビデオカナダ版を見たあと、ぷかぷかさん達と、双六を使ったわかりやすい哲学対話のようなものをやり、「トク!」の意味をちょっとだけ体感します。

 

 担当の林先生の授業案

私がぷかぷかさんに惹かれているのは、話をしているとあったかい気持ちや楽しい気持ちになるからです。

「え!?そんな発想出てくる~!?」という驚きや、スキンシップのあったかさ、自分の世界に没頭している彼らを見ることでうまれるうらやましさ、自分のことや生活、社会をふりかえる時間ができること、とにかく彼らといると楽しいことです。

こういう驚きやあったかさ、楽しさ、自分を見つめることを「すごろく」を通してぷかぷかさんを知ることから感じてもらえたらと思いました。

「すごろく」には「お休みの日は何をしていますか」「お店で好きなパンは何ですか」「お仕事で一番すきなことは何ですか」のようなものをコマに書いておき、ぷかぷかさん→参加者1→ぷかぷかさん→参加者2→ぷかぷかさん→参加者3という形で各グループ進めていくのがよいと思います。

 

まとめると、

 

高崎さんのお話(ORカナダ映像)(10分あるいは30分)

カナダ映像(OR高崎さんのお話)(30分あるいは10分)

  ↓

グループに分かれて「すごろく」(40分)

  ↓

リアクションペーパー(感想)記入の時間(10分)

 

一般公開の授業ですので、参加してみたい方は担当の林先生までメールして下さい。

 hayashik@obirin.ac.jp

桜美林大学はJR横浜線淵野辺駅よりバス7〜8分です。

 

pukapuka-pan.hatenablog.com

ぷかぷかさん達がいる限り、そこから希望が生まれる。  

 昨日ブログで紹介した筑豊「虫の家」の事務局長高石さんの息子さんの話に、

pukapuka-pan.hatenablog.com

先日大分からぷかぷかに研修に見えた中川さんが、自分のFacebookにこんな言葉を書いていました。

 

もしうちの子が、担任の先生から、こんな風に見られていたら、と思うと胸が痛みました。

高石さんの記事を読んで、子どもではなくて、周りの感性の問題なんじゃないかと思います。

 

 高石さんの話を読んで、胸が痛む、という感性がやはり大事な気がします。そういった感性が、衆くん(高石さんのお子さん)を受け持った担任にはなかった、ということです。

 ただ、そこに書かれた言葉は担任の正直な気持ちなんだろうと思います。

 

 食事が始まって驚いた。箸が使えないのである。握りしめて使っても、食べ物が口に入らず、とうとう手づかみで食べ始めた。生活能力、言語能力共に、同学年に比べて低い。注意をしても、指示をしても全く通じない…

 

 

「驚いた」とありますから、多分担任になった人は、初めてこういう子どもを受け持ったのではないかと思います。ただこういう目線を持った教員は、その後の9年にわたる義務教育の中で、少なくない数いた、と高石さんは書いています。そして相模原障害者殺傷事件の犯人の障害者観と、どれほどの距離があるのだろう、と高石さんは書きます。そしてそういった障害者観が社会全体にあふれている、と。

 そこをどうやって変えていくのか。社会全体を見渡すと、ほんとうに気が重いです。気が重いですが、希望はあります。希望が持てたのは、ぷかぷかさん達のおかげです。

 

 私自身養護学校の教員になったとき、それまで障がいのある子どもとおつきあいした経験が全くなく、障害児教育の勉強もしていなかったので、やっぱり驚きました。当時の私の中にあった人間のイメージをはるかに超えることを子どもたちはやってくれて、もうどう対応していいかわからなくて、「ひゃ〜っ!どうしよう、どうしよう!」と、本当に子ども達を前におろおろする毎日でした。

 衆くんの担任のように「生活能力、言語能力共に、同学年に比べて低い」などと冷静に分析するのではなく、ただただ「ひゃ〜っ!どうしよう、どうしよう!」とおろおろしていたことが、結果的にはよかったと思っています。

 なぜか。

 おろおろしたが故に、彼らと「人として出会えた」のです。

 おろおろしながらも、彼らと過ごす毎日が、すばらしく楽しかったのです。教員になる以前のふつうの会社勤めの日々よりもはるかに輝いていましたね。重い障がいを持つ子ども達と過ごす日々が、ふつうの人たちと過ごす日々よりも、私にとっては輝いていたのです。

 できないことや、いろんな問題行動があっても、そばにいると、妙に心が安らぎ、心があたたかいもので満たされたのです。もう、本当に、抱きしめてやりたいくらいの気持ちでした。

 彼らのそばにいるだけで幸せな気持ちになりました。人に対してそんな気持ちになったのは初めての経験でした。この人たちとずっと一緒に生きていきたいな、って思うようになったのは、一番最初に受け持った、一人でごはんも食べられない、うんこの始末もできない、言葉もしゃべれない、障がいの重い人たちのおかげです。彼らとの強烈な出会いがあったからこそ、今のぷかぷかがあるのです。

 「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がいいよ」「その方がトク!」というメッセージは、障がいの重い彼らが教えてくれたのです。そしてそのメッセージが、今、社会を少しずつ変えてきているのです。

 

 中川さんの指摘する「周りの感性の問題」についてもう一つ。

 セノーさんは、あまり働かないので、前にいた作業所で自分の居場所を失いました。お父さんはいたたまれない気持ちで、保護者会でなんとかして欲しい、あまり働かない息子もいさせて欲しい、と頼んだそうです。でもだれも助けてくれなかったそうです。同じように障がいを持った子どもの親が、こういった問題に対して、何の痛みも感じない、ということが私には信じられないのですが、中川さんの指摘する「周りの感性の問題」だろうと思います。「あまり働かない息子も、ここにいさせて欲しい」というお父さんの必死の思いに、何の痛みも感じない感性です。

 そんなセノーさんですが、今ぷかぷかにあって、たくさんのファンがついています。よく働くようになったわけではありません。相変わらず寝てるときの方が多いくらいです。でも、寝てるときもファンがついているのです。寝ながらファンを作り、お客さんを作り、ぷかぷかの売り上げに貢献しているのです。寝ながらしっかり働いているのです。

 見学に来た方が「きゃ〜、セノーさんがいる!」って、アイドルを見つけたように感じで駆け寄ったりすることもあります。

 働かない、ということで排除してしまう作業所と何がちがうのでしょう。

 

 だから、社会を変えていくことに、希望はあるのです。ぷかぷかさん達がいる限り、そこから希望が生まれるのです。  

 7月21日(土)筑豊の「虫の家」では高石さんとそんな希望のある話ができたら、と思っています。ぜひおいで下さい。

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7月21日(土)の案内は下記サイトのダウンロードボタンを押して下さい。

pukapuka-pan.xsrv.jp

 

 

 

 

 

今、私たちが社会を本気で変える、にはどうしたらいいのか

 7月21日(土)筑豊にある「虫の家」で相模原障害者殺傷事件をテーマにしたトークセッションを行います。その話し相手の一人高石さんが障がいのある息子さんをめぐる社会的な状況について書いています。

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 問題はこの困難な社会的な状況を、どうやったら変えていけるのか、ということだと思います。

 〈あべ「一強」が生み出す不寛容な空気云々〉とか〈障害者はいない方がいい、みたいなメッセージが出ていないか点検することが大事〉など、いろいろ書いてありますが、それ自体はきわめて正しいことであっても、そのことで社会が変わるわけではありません。現状分析、あるいは問題の分析をすることと、社会を変えることはどうもつながっていない気がします。

 今、必要なことは、私たちが社会を本気で変える、社会をリアルに変える、ということです。そのためにはどうしたらいいか、ということです。

 ぷかぷかには「ぷかぷかさんが好き!」というファンがたくさんいます。「ぷかぷかさん」は、ぷかぷかで働く障がいのある人たちのことです。高石さんの書かれた障がいのあるお子さんの置かれた社会的な状況とは全く正反対です。

 こういう状況を作り出そうとはじめから考えてぷかぷかを作ってきたわけではありません。ファンの出現は、全く想定外でした。

 

 ぷかぷかさんが好き!、ということは、「障がいのある人が好き!」と言っているわけで、どうしてこんなことが起こったのか。そこにぷかぷかのヒミツがあります。

 7月21日(土)のトークセッションの前にぷかぷかのプロモーションビデオカナダ版の上映をします。ビデオのタイトルは『The Secret of Puka Puka』です。日本語で言うと『ぷかぷかのヒミツ』。

 高石さんと一緒に、そのぷかぷかのヒミツについて語りながら、社会を変える方法を提案できたら、と思っています。乞うご期待!です。

pukapuka-pan.hatenablog.com

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