ぷかぷか日記

タカサキ日記

  • たっちんの背中を押したくなりました
     洋服屋で仕事を始めたたっちんが遊びに来ました。仕事を始めてまだ2週間足らずなのですが、ものすごく張り切っているようでした。  嬉しかったのは「メンバーさん元気日記」の原稿をくれたこと。その中に 「給料が入ってとっても嬉しかったです」 「私は仕事のやりがいを感じました」 「仕事の大切さを知りました」 といったことが書いてあって、今までたっちんとそんなこと話したこともなかったので、 「そうかそうか、たっちんはこんなこと感じてたのか」 と、嬉しくなりました。   ぷかぷかは障がいのある人たちの就労支援をやっているところですが、こういうことを感じながら就労していくんだな、とあらためて思いました。たっちんがぷかぷかを抜けたことは、ちょっと寂しい思いがしましたが、こんな事を感じながら巣立っていったのかと思うと、 「がんばれよな」 って、たっちんの背中を押したくなりました。
  • 給食にも物語
     今日のぷかぷかの給食です。カボチャのそぼろあん、鮭のカレームニエル、カリフラワー、おからの煮物、味噌汁、ごはん。  これを作った人の日記。  道路側に山と積もった雪。滑らないようにそろーりそろーり足を運ぶ。寒いので生姜を使った「カボチャのそぼろあん」が頭に浮かぶ。  本日のメニューのおからを買い求めて武川食品へ。「おはようございます」いちばんいそがしい中、長いビニールエプロンを掛けた武川さんが小走りで寄ってきて、私の買い物に応じてくれます。  「いそがしいところすみません。おから2袋とこんにゃく2枚」奥さんは急いでビニール袋を用意し、冷たい水に手を入れてこんにゃく2枚を入れ、ショーウィンドウのケースからおから2袋入れてくれます。奥さんの手は赤くなっていました。  支払いを済ませて、電車に乗ってぷかぷかへ。本日の主菜、鮭をどうやって料理しよう。フライよりカレームニエルの方が体が温まるかなと思い、手を動かす。  三保の岩沢さん(農家)から「売り物にならないから使ってよ」といただいた、ぱっくり割れた人参の泥を落とす。メンバーさんがおから用に人参、こんにゃく、油揚げ、ゴボウを千切りに。フライパンにごま油を入れ、ゴボウ、人参、こんにゃくを炒め入れ、おからは別のフライパンでぽろぽろになるまで炒める。おいしくなーれ、と木べらを使い炒める。    そうやってできたのが下の写真の給食。いろんな物語がこの給食にはあります。  
  • 野菜に「物語」が
     昨日、給食とカフェで使う野菜を地元の農家まで買いに行きました。80才になるおばあちゃんが待っていてくれました。雪の積もった畑から掘り出したみずみずしいほうれん草が束ねてあって、それだけで嬉しくなりました。雪の畑から掘り出すのは大変だっただろうと思います。野菜を作った人に、そんな思いを寄せることができるのは、農家とのこういうおつきあいがある故だと思います。スーパーで野菜を買っても、こんな思いにはなりません。これはある意味、さびしいことだと思います。  農家で買った野菜にはそれを作った人、収穫した人の「物語」があるような気がします。だから野菜を目にしたとき、すごく嬉しくなったり、大変だっただろうな、って思ったりしたのだと思います。  ほうれん草、大根、長ネギ、ブロッコリー、人参、里芋、白菜の漬け物、ミカンを買いました。その一つ一つに「物語」があるのだと思うと、野菜を抱えて運びながら、なんだか心があたたかくなりました。  今日の給食はその野菜を使った温野菜ゆずみそがけ、煮物、けんちん汁でした。食事しながら気前よく割れた人参を「持っていって」と分けてくれたおばあちゃんの顔が目に浮かびました。「物語」のある野菜は、食卓まで豊かになるような気がしました。  4月パン屋の隣に開店予定のお弁当、お総菜のお店「おひさまの台所」では、そんな物語がいっぱい詰まったお弁当、お総菜を販売します。楽しみにしていて下さい。
  • 0.5才 誕生会
      0.5才の誕生会がありました。0.5才のかわいい子どもたちが4人も集まりました。昨年11月に、「ぷかぷかカフェ」でやはり0.5才の誕生会をやった方が、今日の4人組を連れてこられました。ファミレスではなく、あえて「ぷかぷかカフェ」を選んでくれたところが嬉しいなと思いました。  お母さんの一人が、子どもが大きくなって、ぷかぷかで親子3人で食事ができたらいいなと思っています、とあいさつされ、とても嬉しく思いました。  
  • 昔ガンになったときの話−7
     術後5日目、朝と晩に背骨のところから入れていた痛み止めの点滴をやめました。それまで手術以来ずっと続いていためまいや幻覚が、ウソのようにぴたっと止み、久しぶりに晴れ晴れとした気分になりました。  幻覚ははじめ、これが幻覚なのかどうか、よくわかりませんでした。昼間、目を開けているときでも、ふっと夢を見ているような感じになり、なにやらものすごく恐ろしいものがわーっとおそってくる感じがして、その度にびくっと目が覚めました。目が覚めたあとは、なんとも不愉快な感じが残りました。それが多いときは数分おきにあって、一体どうなってしまったんだろうと、不安でいっぱいでした。  看護婦さんに変な夢を見て、気持ちが悪いことを訴えたのですが、「ぐっすり眠れば大丈夫よ」ぐらいしか言ってくれなくて、不安は一向に解消しませんでした。眠っているときも、その変な夢はおそってきて、もう眠るのが怖いくらいでした。  あれが幻覚だったと気がついたのは、点滴をやめた日、すっきりした気分で隣のベッドの人と話をしていて、「ああ、それは幻覚だよ」と言われたときでした。強い鎮痛剤の副作用だったようです。手術以来、ずっと続いていたもやもやした気分が、ようやくすっきり晴れた気分でした。  めまいと幻覚がなくなると、急に元気になって、病棟の廊下を点滴を抱えたままうろうろ歩き回りました。  おなかの中に太くて堅いビニールパイプが横向きに入り込み、それがまわりの肉を巻き込み、少しでも動くと、ギュウッと締め付けてくるような強烈な痛みがありました。歩くとその痛みが更に増して、「ああ、うぅーっ」と思わずうなってしまいました。それでも歩くことは復帰への一歩であり、どんなに痛くてもそこには未来への希望がありました。そして何よりも、また生き返った気がしたのでした。
  • でんぢゃらすじーさん
     今実習している方が、日本各地のシンボルを描き込んだ地図を描き、その地図の名前に「でんじゃらすじーさん」と描いていました。どうしてこの地図が「でんじゃらすじーさん」なのか、説明を聞いてもよくわかりませんでした。でも、地図はすばらしく楽しいです。北海道のスキー、札幌時計台、南部鉄瓶、後楽園球場、大阪通天閣、広島原爆ドーム、沖縄のシーサー、ソーキそばなどがしっかり描き込んであって、彼の世界が見えるようです。  
  • 幸せストラップ
     幸せな気持ちになるようなストラップができました。先日紹介した笠地蔵の好きな方の絵です。こんな絵をさらっと描いてしまうような人こそ、社会の中で大事にしたいですね。このストラップ、パン屋で販売しています。500円です。  
  • 山本電機とバイキンマン
     今日から実習の方がおもしろい絵を描きました。山本電機とバイキンマンです。この組み合わせがどういう意味を持つのか、なんて考えるのは、なんか野暮だなぁと思えるくらい、この組み合わせそのものが単純におもしろいなと思いました。  もう一枚の絵には「麻布十番」の倉庫と「早稲田」行きのバスが描いてあって、これもよくわかりませんね。これも深く考えない方がいいようです。
  • 調子がいまいちなので描いた絵
     ツンさんは、いっときすばらしい映画を作っていたのですが、新しいアイデア、表現が見つからない、と、このところ新しい映画ができていません。ちょっと寂しい思いをしていたのですが、先日、調子が悪くて、パンが焼けないとき、ありがとうカードを描いてもらったところ、なんともすばらしいカードを描いてくれました。   まだまだたくさんあるのですが、興味のある方はホームページ(「ぷかぷかパン」で検索して下さい)のメニュー欄→「ギャラリー」→「ギャラリーつん」で見て下さい。  で、今日も調子がいまいちだったので、パンの仕事をせずに絵を描いていただきました。それがこの絵です。        赤い線が何を意味するのかよくわかりませんが、なんかすごいものを持ってる方だとあらためて思いました。これが調子が悪くて描いた絵なので、調子がいいときはどんな絵を描くんだろうと思います。          
  • パン屋が始まった頃の話−4
    経営アドバイザーとの出会い  ぷかぷかがスタートして4ヶ月くらいたった頃、「自分の息子(知的障がいのあるお子さんです)の働く場所を作りたい」と見学に来られた方がいました。一部上場会社の役員をやってこられた方で、いわば経営のプロです。   ぷかぷかの理念から始まって、設立の過程、現在の経営状況まで正直に話しました。経営状況に関しては、プロから見れば、もう見てられない状態だったのだと思います。何の縁もない方でしたが、私の志に共感し、経営面でなんとかお手伝いしたい、と毎週のように経営のアドバイスに来られました。    「障がいのある人たちといっしょに生きていきたい」という思いのために、私は退職金をすべてつぎ込んでいました。「自分の家族に障がいのある子どもがいてもここまではなかなかできることではない」と、深く共感されたようでした。   まず、「日々の資金繰り表を書くように」と勧められました。毎日どういうお金がどれくらい入ってきて、どういうお金がどれくらい出て行っているのか,という記録です。それまでは、ただ通帳の残高を見てるだけで、お金の出入りに関するこまかい記録を取っていませんでした。   入ってくるお金はパン屋の売り上げ、外販、配達の売り上げ、カフェの売り上げなど。出ていくお金はパン材料費、カフェ材料費、給与手当、法定福利費、福利厚生費、旅費交通費、接待交通費、燃料費、通信費、水道光熱費、消耗品費、事務用品費、修繕費、保険料、会計事務所顧問料、地代家賃、会議費、雑費、借入金返済、仮払金などです。   こういうものの一覧表を作って毎日お金の出し入れを記入していきました。   家賃、保険料、法定福利、金融公庫返済、会計事務所顧問料など毎月決まって出て行くものについては、決まった数値を入れておきました。そうすると今どのくらいお金があって、月末にどれくらいお金が残りそうかが、だいたい見えてきました。   月末は残高不足になることがわかっている時は、銀行から残高不足の電話が入る前に必要な分だけ資金を投入しておきました。行き当たりばったりで資金投入していた頃を思えば、同じ資金投入でも、気分的には格段に楽になりました。   お金の出し入れを把握しておくことは、商売をやる上で当たり前のこと。でも、そんな基本的なことも私は知りませんでした。それをアドバイスする人もまわりにいませんでした。毎日資金繰り表を記入する中で、こういうことが商売をやる上で如何に大事なことか、身にしみてわかったのでした。   お金の出し入れを把握するだけでは売り上げは増えません。売り上げを増やすにはどうすればいいのか、というところで、日々の売り上げの集計をきちんとることから始めました。毎日お店、外販先で、どんなパンがどれくらい売れているのか、といったデータを取り始めました。   曜日によって、外販先によって売れるパンの量、種類が違うことがデータ上で見えるようになりました。そのデータを元にパンの仕込みの量を調整すると、売れ残りがずいぶん減り、売り上げが少しずつ伸びていきました。   外販には適当にパンを持っていくのではなく、きちんと売れ筋を見極めて持っていきました。これによって売れ残りが大幅に減り、時折完売の時もありました。売り上げは毎日パンの厨房に張り出しました。これはスタッフのモチベーションを上げるのに大いに役立ちました。   売れ残りを減らすには、生産量を減らすのが一番です。でも生産量を減らすと、当然売上げは伸びません。リスクを取りながら、どうやって売上げを伸ばすか、そこが勝負所であり、商売の面白いところであることが、だんだんわかってきました。毎日の売上げの発表は、そのおもしろさを更に加速してくれたように思います。   カラーのチラシも作りました。これはお客さんの信用を得るのに大いに役立ちました。ホームページも全面的に作り直しました。それまでのホームページはどちらかといえばぷかぷかの理念的な面が前へ出てきて、パン屋をやっているという営業的な面がほとんどありませんでした。ホームページ作成ソフトを入れ替え、パンを買ってみたくなるような雰囲気に全面リニューアルしました。ホームページの作成は外注するお金もなかったので、全部自分でやりました。   会計事務所からは毎月試算表が送られてきます。その表の意味が私にはほとんど理解できませんでした。「比較損益推移表」「貸借対照表」「試算表」などにびっしり数値が書き込んであるのですが、これがどういう意味を持つのかわからなかったのです。毎月経営アドバイザーに転送し、わかりやすい表に書き換えてもらいました。これによって1年のスパンでお金の動きがわかるようになりました。   売り上げの推移などもわかるようになると、スタッフのモチベーションも上がってきます。年に数回スタッフ全員を対象に、この表を元に現在の経営状況をわかりやすく説明してもらいました。以前はパンが売れた、売れなかった、ぐらいしかわからなかったのですが、経営アドバイザーが関わるようになってからは、具体的な数値を元に経営的にうまくいっているのかどうかが手に取るようにわかってきました。先の見通しがわかると、職場への安心感も生まれます。そしてこの「経営」の感覚をスタッフ全員で共有できるようになったことが「ぷかぷか」を前に進める大きな力になったように思います。   保護者の方たちにも、この数値表を元に経営状況を説明してもらいました。就労継続支援A型からB型に変わった時は、経営的な問題があったので、保護者としてはかなり不安があったと思います。数値を使って経営が安定しつつあることをわかりやすく説明してもらい、保護者の方たちは安心したようでした。   そうして3年目、それまで赤字続きだった収支が、ほんのわずかですが、黒字に変わったのでした。もちろん、莫大な借金はまだまだ返し切れていませんが、単年度の収支は黒字に変わったのです。   黒字に変わった要因としては、「ぷかぷかのパンがおいしい」と言ってくださるお客さんが徐々に増えてきたこと、利用者さんたちの魅力、お店の魅力に惹かれる人が増えてきたこと、「ぷかぷかしんぶん」「ホームページ」などによる情報発信でお店に来るお客さんが増えたこと、利用者さん、スタッフががんばったことなど、いろいろ考えられますが、やはり大きかったのは毎日こつこつとデータを取り、それを分析し、それに基づく適切な経営上のアドバイスをいただき、それを実践したことが大きかったように思います。    売り上げが増えると、当然のことながら利用者さん、スタッフのモチベーションがグ〜ンと上がりました。モチベーションが上がると職場全体が活気づきます。利用者さんたちも仕事がおもしろくなって、スタッフ共々笑顔で働く職場になりました。「経営がうまくいくということはこういうことなんだ」と、みんなの笑顔を見ながら思いました。  
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