ぷかぷか日記

タカサキ日記

  • ヨイトマケの唄
     26日の4周年記念イベントでtujiさんは美輪明宏の「ヨイトマケの唄」を一人で全部うたいました。この長い歌詞を全部記憶して歌ったので、本当にびっくりしました。  tujiさんは記憶力のすばらしい方で、紅白歌合戦に出場した歌手の名前を年代別にすべて記憶しているような方です。ですから「ヨイトマケの唄」を覚えるくらいはたいしたことないと思うのですが、それでもAKB48やSMAPではなく、あえて「ヨイトマケの唄」を選んだ理由を知りたいと思いました。ところがtujiさんは典型的な自閉症の方で、突っ込んだ会話が全くできません。会話が成り立たないから、こういう重い歌の世界には「興味がない」、あるいは「理解できない」、というふうに私たちは思ってしまいます。それが大変な間違いであることをtujiさんの歌は教えてくれました。  昨年の紅白歌合戦で私も聞いて、すごい歌だなと思いましたが、それを覚え、人の前で歌おう、なんてことは考えませんでした。それを思うと、tujiさんがこの歌を覚え、人の前で歌おうと思ったことは、ほんとうにすごいことだと思うのです。どうしてその歌を歌うのか、なんて野暮な説明は一切しません。でも、この長い歌を一生懸命歌うtujiさんを見ながら、tujiさんの世界の深さを垣間見たような気がしたのです。歌を聴きながら涙を流したお客さんもいました。   父ちゃんのためなら エンヤコラ 母ちゃんのためなら エンヤコラ もひとつおまけに  エンヤコラ   1.今も聞こえる ヨイトマケの唄   今も聞こえる あの子守唄    工事現場の昼休み   たばこふかして 目を閉じりゃ   聞こえてくるよ あの唄が   働く土方の あの唄が   貧しい土方の あの唄が    2.子供の頃に小学校で   ヨイトマケの子供 きたない子供と   いじめぬかれて はやされて   くやし涙に暮れながら   泣いて帰った道すがら   母ちゃんの働くとこを見た   母ちゃんの働くとこを見た    3.姉さんかぶりで 泥にまみれて   日にやけながら 汗を流して   男に混じって ツナを引き   天に向かって 声をあげて   力の限り 唄ってた   母ちゃんの働くとこを見た   母ちゃんの働くとこを見た    4.なぐさめてもらおう 抱いてもらおうと   息をはずませ 帰ってはきたが   母ちゃんの姿 見たときに   泣いた涙も忘れ果て   帰って行ったよ 学校へ   勉強するよと言いながら   勉強するよと言いながら    5.あれから何年経ったことだろう   高校も出たし大学も出た   今じゃ機械の世の中で   おまけに僕はエンジニア   苦労苦労で死んでった   母ちゃん見てくれ この姿   母ちゃん見てくれ この姿    6.何度か僕もぐれかけたけど   やくざな道は踏まずに済んだ   どんなきれいな唄よりも   どんなきれいな声よりも   僕を励ましなぐさめた   母ちゃんの唄こそ 世界一   母ちゃんの唄こそ 世界一     今も聞こえる ヨイトマケの唄  今も聞こえる あの子守唄   父ちゃんのためなら エンヤコラ  子どものためなら エンヤコラ                           
  • 詩を朗読すること
     4周年のイベントで谷川俊太郎の詩「はる」をみんなで朗読しました。詩は一人で黙って読んでもいいのですが、誰かに向かって声を出して読むと、言葉がむくむくと生き始めます。しかもみんなでそれをやると、生き始めた言葉がみんなをつなぎます。そのことを実感できるのがみんなで朗読することのおもしろさだと思います。  私自身、今回の稽古との時は久しぶりに気合いが入った感じがしました。学校と違って練習の時間がそれほどとれないことが残念でしたが、それでもみんなが朗読を始め、それにだめ出しをする自分の体に、熱いものが動き出すのがわかり、つい 「だめ!もう一回!」 なんて、大きな声を出したりしたのでした。  練習不足の上に、集中できるような舞台ではなかったので、なんとも中途半端な発表にはなったのですが、それでもお客さんを前に朗読することの緊張感はみんなが共有していて、それをびりびり感じることができました。そういったことを経験できたことがよかったと思います。  どうしてお客さんの前で詩なんか読むんだろう、とか、どういう意味があるんだろう、ってみんな思ったと思います。でもたぶん、お客さんの前で緊張しながら実際に声を出して読んだとき、どうして詩を読むのか、どんな意味があるのか、なんとなくわかったと思います。  何となくわかったあのときの自分の中の「ほてり」をしっかり記憶しておいてほしいと思うのです。それこそが人生にはずみをつけます。  人の前に立って自分を表現すること、それは自分を磨き、人生を豊かなものにします。    
  • 4周年記念イベント
      4周年の記念イベントがありました。谷川俊太郎の詩「はる」の朗読から始まりました。みんな詩を朗読するなんて初めてだったのですが、お客さんを前にして読むと、それだけでとてもいい気持ちだったようです。読んだあと、とてもすっきりした顔をしていました。  ぷかぷかバンドは今年は新曲が一つ増え、とてもよかったと思います。    tujiくんは一人で「ヨイトマケの唄」をうたいました。長い歌の歌詞を全部覚えていました。心に響いて、涙が出そうになったというお客さんもいました。    平塚からスタジオクーカの人形劇団「ふもっふっ」が駆けつけてくれました。   「テキトー版 桃太郎」の人形劇で、手作りの人形とオリジナルな台本、演出がとても楽しかったですね。    ろう者(耳の聞こえない人)と聴者(耳の聞こえる人)の人形劇団デフパペットシアターひとみからは二人駆けつけてくれて、丸、三角、四角の段ボールの紙と音を組み合わせて楽しい物語を作ってくれました。小さな子どもたちにもよく伝わったようで、「あ、おさかな!」とか「かに!」とかうれしそうにいってました。    お客さんは去年の倍以上いましたから、ずいぶんにぎやかでした。ぷかぷかを支えてくれている層の厚さを感じました。      
  • お祝い給食
     4周年のお祝い給食です。  給食担当のスタッフが心を込めて作ってくれました。なんにも言わなくても、こういう給食がさらっと出てくるところが今のぷかぷかのいいところです。  マザーズの社長がここの給食をぜひ食べてみたいとおっしゃっています。ぷかぷかのこの賑やかな雰囲気と食事に込めた思いに惚れ込んだようです。自分のところの社員にもぜひこういう食事を提供したいとおっしゃっていました。  カフェではなく、みんながごちゃっといるなかでいっしょに食べたいとおっしゃっていました。そういうセンスがいいなと思います。
  • 4周年 ぷかぷかしんぶん
      こんにちは。ぷかぷかです。ぷかぷかはこの4月で4年目を迎えます。  4年前の4月26日、「カフェベーカリーぷかぷか」がオープンしました。利用者さん10名、スタッフ7名の、なんとも頼りないスタートでした。それでも地域のみなさまの暖かな応援のおかげで、こけることもなく、ここまでやってこられました。本当にありがとうございました。  ぷかぷかがスタートした頃、お母さんにだっこされていた子どもたちがもう4歳。すっかり大きくなって、見違えるようです。ぷかぷかも少しずつ大きくなって、現在は利用者さん32名、スタッフ20名の大所帯になりました。   更に前へ ●新しいお店   4月にオープン予定だったおひさまの台所は、少々準備に時間を要し、6月初旬頃になりそうです。楽しみにしてくださっている皆様には申し訳ありませんが、もう暫くお待ちください。7月初旬にはアート商品を販売する「アートラボぷっか」(仮称)が開店する予定です。    パン屋と並んで「ぷかぷか三軒長屋」になります。お店の前の小さな広場をデザインして、ちょっとわくわくするような空間にしたいと思っています。赤道を歩いてくると、ちょっと降りて行きたくなるような、そんな広場です。広場に来ると、心もからだもほっと一息つけるような、そんな広場にできたら、と思っています。  「おひさまの台所」はみなさんのリクエストも取り入れ、「みんなの台所」のような雰囲気にしたいと思っています。アンケート用紙がパン屋においてありますので、ぜひみなさんのリクエストを書いてください。   ●マザーズ  藤が丘駅前にある自然食品店「マザーズ」の社長がぷかぷかのパンが気に入って、お惣菜といっしょにお店においてくれることになりました。その社長より、東急百貨店地下の食品売り場の一角にぷかぷかのコーナーを設けて販売しないか、といううれしいお話をいただいています!なるべく早い時期に実現できるよう検討していきますので、こちらも楽しみに待っていてください。  デパ地下でも勝負できる味、とぷかぷかのパンを評価してくださったわけで、とてもうれしいです。利用者さんにもぜひ販売に来てほしいと言われています。デパ地下に利用者さんの声が響くと楽しいだろうなと思います。   ●利用者さん  ぷかぷかは障がいのある人たちを支援するところですが、いっしょに働いていると、支えられているのはむしろ私たちの方ではないかと思うことがしばしばです。  彼らがいないパン屋は、なんだかとても寂しいし、つまらないです。お客さんは、ただパンを買って帰るだけになります。パンといっしょに、何かあたたかいお土産をいっしょに持って帰ってもらうところがぷかぷかのいいところだと思います。  パン屋は彼らのおかげでいつもにぎやかです。パン屋の常連さんで、「ここはいつもにぎやかでいいわねぇ、これがいい、これでいい」とおっしゃった方がいましたが、ぷかぷかのよさをひとことで言い当てている気がします。  毎週外販にいっている瀬谷区役所では、この4年間で売り上げが10倍伸びました。パンがおいしいことはもちろんありますが、やはりこの驚異的な伸びは利用者さんの魅力のおかげです。緑区役所では毎回すごい列ができるくらいの人気で、昼休み1時間くらいで5万円も売り上げてきます。あれができない、これができないといわれている彼らが、ここではすばらしい「戦力」になり、しっかりお金を稼いでいます。  「ぷかぷか」は彼らのおかげでここまで成長できました。支えられているのは私たちの側だなとつくづく思います。    カフェのほっとする雰囲気も彼らが創り出しています。そこにいるだけで、そういう雰囲気が自然に生まれるところが彼らのすばらしいところだと思います。そんな雰囲気を求めるお客さんが少しずつ増えて、最近は満席になる日も時々あります。  子どもの誕生会をやったあと、彼らといっしょに写真を撮りたいといったお客さんもいました。(「ぷかぷか日記」11月10日)彼らへのそんな思いが写真の真ん中に写った小さな子どもにもいずれ伝わっていくんだろうなと思います。ここに来るまで4年かかりました。    これからもよろしくお願いします。
  • 朝の会で詩の朗読
     朝の会で谷川俊太郎の「春」の詩をみんなで朗読しました。        はなをこえて      しろいくもが      くもをこえて      ふかいそらが        はなをこえ      くもをこえ      そらをこえ      わたしたちはいつまでものぼってゆける        はるのひととき      わたしはかみさまと      しずかなはなしをした    一人で一行ずつ読み、「わたしたちはいつまでものぼってゆける」と「わたしはかみさまと しずかなはなしをした」のところだけみんなで朗読しました。  いつもはにぎやかな朝の会ですが、一行ずつ朗読し始めると、みんなぴ〜んと緊張感が走り、最後にみんなで朗読したときは思わず拍手がわきました。詩の朗読っていいですね。心と体が浄化されるようでした。  明日、4周年のイベントで朗読します。                    
  • 二次的な効果
     6月から演劇ワークショップをやる予定ですが、予算が最初の見積もりよりも大幅に増え、新たな助成金を申請しました。  その申請書に事業の目的、内容のあとに 「この事業を実施することにより期待される二次的な効果」 という項目がありました。ワークショップはおもしろい作品を作り、舞台で発表することが目的であり、その作品を作る過程で、お互いの出会いがあったり、それぞれの中で新しい発見があったり、といったことが主たる目的となります。  その目的達成のあと、期待される二次的な効果は何か、と問うているのです。サブタイトルに 「本来の事業目的とは別に期待できる波及効果、生み出される社会的価値など」 とありました。  いい質問だなと思いました。目的を達成したところで止まってしまうのではなく、もう少し先へ進むように背中を押してくれるような質問だと思いました。  ワークショップで言えば、たぶん最後の舞台発表は最高におもしろい作品に仕上がるのではないかと思います。300人くらい入る大きなホールで発表会をやりますので、たくさんの人たちが作品を見ます。障がいのある人たちといっしょにやったからこそできた作品を見ます。  「そうか、いっしょにやると、こんなにおもしろいものができるのか」 って、素直に思えると思います。その思いは、地域社会での彼らへのまなざしの変化を生みます。その変化は地域社会が受け入れる人間の幅を広げます。それはお互いが生きやすくなることにつながっていきます。みんなが気持ちよく暮らせる地域社会です。  そこまでいくにはまだまだ時間がかかります。それでも「障がいのある人たちといっしょにやった方がおもしろいものができる」という発見は、少なくとも、そういった社会に向けて、確実な一歩を踏み出すことができると思うのです。 
  • 野菜から元気をもらって
     自然食品店「マザーズ」の社長さんのところへマクロビ弁当を届けてきました。 メニューは    これを作ったあいさんは料理が大好きで、料理を作っているとどんどん元気になるそうです。それは野菜から元気をもらっているからだろうと言ってました。いい言葉ですね。  こんな弁当、総菜と、ぷかぷかのパンを、たぶん6月頃から、たまプラーザの東急百貨店地下のマザーズのお店の一角で販売します。ジュースの並んでいるところに冷蔵のショーケースを置いて、総菜、弁当を並べるそうです。その左側の棚にパンが並んでいました。ここにぷかぷかのパンを並べたいと社長は言ってましたが、ぷかぷかでは最近注文が多く、パンの製造が限界まで来ていて、マザーズにどれくらい回せるか、不安なところです。それでも、このデパ地下でも勝負できる、とぷかぷかのパンを評価してくださった方がいるのですから、何とか要望に応えたいと思っています。      
  • ケンさんが街を歩くと
     今日もケンさんと一緒に郵便局に行きました。今日は少しテンションが高く、 「お弁当食べとき」 とか 「日清焼そばU.F.O」 とか、大きな声で何度も何度も繰り返すので、居合わせた人たちは、この人大丈夫かな、とちょっと心配している感じです。何となく引いてる感じが、ありありです。  そのうち自分から 「静かに」 といいながら、口にチャックをするまねをするので笑ってしまいました。私とケンさんのそんなやりとりをみんな見ています。 “ケンさんはこういう人なんだ”  “ケンさんとはこうやってつきあえばいいんだ” “ケンさんて大きな声出すけど、なかなかおもしろい人なんだ” “カフェの前のかわいいお天気ボードはケンさんが描いてるのね” といった情報が少しずつ広がっていきます。   ケンさんが街を歩くと、自然にいろんな反応があります。その反応が少しずつ街を変えています。こんな人もいるんだよ、こんな人こそ、街にいた方がいいんだよ。こんな人は街の宝だよ、って。          
  • 中毒になりそうです
     先日パン職人と契約更新の面談をした際、 「利用者さんとはうまくやっていますか?」 の質問に 「中毒になりそうです」 といってました。もうぞっこん惚れ込んでしまって、中毒になりそうだ、という意味のようです。  ホームページのトップページの上の帯に「ぷかぷかの目指すもの」というタグがあって、そこに 「ぷかぷかは障がいのある人たちといっしょに生きていこうよ、いっしょに生きていった方がいいよ、という思いでスタートしました。そのことを理念ではなく、目に見える形で提案するするために、まずはぷかぷかのスタッフ自身が彼らといっしょに働き、いろいろ非効率なことがあっても、それを超えるものが彼らといっしょに働くことにはある、ということを実感したいと思っています。」  と書いているのですが、 「中毒になりそうです」 の言葉は、その実感そのものだろうと思います。その実感が、パン屋のにぎやかな雰囲気を作り出し、常連のお客さんの 「ここはいつもにぎやかでいいわね。これでいい、これがいい」 という言葉を生んだのだと思います。 「いっしょに生きていった方がいいよ」 というメッセージが、若いスタッフへ、そしてお客さんたちへ確実伝わっている気がします。      
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