ぷかぷか日記

オペラ『あん』は差別の問題を超えようとする

12月17日(日)みどりアートパークホールでオペラシアターこんにゃく座のオペラ『あん』が上演されます。

 

www.youtube.com

 

 冴えないどら焼き屋が舞台です。あんを作ることがうまい徳江が来てからどら焼き屋は大繁盛。ところが徳江の曲がった指を見て、

「ハンセン病患者じゃないか」

といううわさが広がり、あっという間に売り上げが落ちてしまいます。徳江は自分がかつてかかった病気が原因だと、お店を辞めます。

 

 ハンセン病は、現在では有効な治療薬が開発され、早期発見と早期治療により、障がいを残すことなく外来治療で治すことができるようになっています。ところがハンセン病は怖いという思い込みから始まる「差別」は今もあります。

 「ハンセン病に対する偏見や差別をなくしましょう!」

などといくら叫んでも、こういった「差別」はなくなりません。そんなことでは「差別」はなくならないのです。そこに「差別」という問題の難しさがあります。

 そのやっかいな問題に果敢に挑んだのがこのオペラ『あん』です。

 

 中学生の頃にハンセン病を発症した徳江は施設に隔離され、外の世界に出ることも許されず、絶望のどん底に突き落とされます。自ら命を絶つことを考える人も、周りにいます。

 そんな中で、ふとしたことがきっかけで徳江は生きる希望を見つけます。徳江は教師になることが夢でした。そうやって人の役に立ちたいと。でも施設に隔離された身では、それは到底叶わない夢。悲しみに暮れる日々でした。

 でも、人の役に立つような仕事ができなくても、今、こうやって生きていること自体に意味があり、価値があることに気がつきます。それがある限り、社会に「差別」があっても、徳江は自分の人生を生き生きと生きることができます。

 生きることの価値を歌い上げる徳江の歌がすばらしいです。歌っていいなぁ、としみじみ思えます。

 

 オペラという表現方法を用いることで、「差別」という重い問題を、アーダコーダややこしい話をせずに超えていくところがすごくいいなと思いました。ぜひ見て下さい。背中がすっと伸びるような気持ちのよさがあります。

 

  公演後に原作台本:ドリアン助川さん、作曲:寺島陸也さん、こんにゃく座代表・音楽監督:萩京子さんによるスペシャルトークがあります。普段聞くことのできない貴重なトークです。ぜひ聞いて下さい。

 

 公演のチケット、問い合わせはオペラシアターこんにゃく座まで。電話044-930-1720

konnyakuza-news.blogspot.com

 

 『あん』の原作はこちら。小説もおもしろいですが、オペラはまた違うおもしろさを見せてくれます。

                     

 

 ハンセン病の差別と並んで「障害者差別」という問題があります。障害があるために一般企業に就職することがむつかしかったり、障害者のグループホームを建てようとすると建設反対運動が起こったりします。共生社会を作ろう、とか、ともに生きる社会を作ろう、といったことが叫ばれますが、そんなこといったところで、障害者差別の問題が解決できるわけではありません。

 ぷかぷかは「障害者差別」を、特に糾弾したりはしません。ただ、障害のある人たちとはいっしょに生きていった方がいいよ、その方がトク!と言い続けています。お店の運営にしても、演劇ワークショップにしても、障害のある人たちといっしょに生きていくことを具体的に実現しています。

 結果、ぷかぷかのまわりでは障害のある人達はいて当たり前、という雰囲気ができ、「障害者差別」という問題は見当たりません

 彼らといっしょに生きていくこと、彼らと楽しい日々を創り出すこと、そうすることで、このやっかいな差別の問題をぷかぷかと超えることができたのだと思います。「ぷかぷかと超える」というところがミソです。

最近の日記
カテゴリ
タグ
月別アーカイブ