文化は社会を豊かにします。ぷかぷかが生み出したものが横浜文化賞文化・芸術奨励賞を受賞したのは、障がいのある人たちといっしょに生きることで生まれるものが、「社会を豊かにする」と認められた、ということではないかと思います。
何かとマイナス評価の多い障がいのある人達ですが、でも、彼らといっしょに生きると、そこで生まれるものが社会を豊かにするなんて、なんか素敵じゃないですか。これはでも、ぷかぷかが創設当初からずっと言い続けてきたことです。
大事なことは、ぷかぷかさんたちと「支援」という上から目線の関係ではなく、いっしょに生きるというフラットな関係であるということ。そういう関係があってはじめて社会を豊かにするものが生まれてきます。
「支援する」とか「指導する」といった関係では、こんな楽しい舞台はできません。
障がいのある人達はいろんな面で私たちと違うところがあります。違うからこそ、いっしょに生きていくと社会は豊かになります。いろんな人がいることが社会の豊かさです。
写真を見ながら似顔絵を描くと、こんな絵を描く人がいます。似顔絵がどうしてこんな絵になるのか、不思議な感じがしますが、世界の感じ方、表現の仕方が私たちとは全く違うんだろうと思います。
こんな絵を描く人が社会にいると、社会の幅がグンと広がります。その幅の広がりこそが社会の豊かさです。こんな絵のある社会は、なんかそれだけで楽しい気がします。
前にも書きましたが、セノーさんは言葉がなかなか出てこないことがあります。
以前、売り上げを毎日郵便局に入金に行っていました、入金伝票にぷかぷかのはんこを押すためにスタンプ台を借りるのですが、「スタンプ台貸してください」という言葉がなかなか出てきません。郵便局の窓口に立ったまま、上の写真のような感じで、「あ〜」「あ〜」「あ〜」…と繰り返すばかり、郵便局のお姉さんたちは、この人何しに来たんだろうと思っていました。
で、しばらくしてからようやく「スタンプ台貸してください」といい、スタンプ台を貸してもらい、ぷかぷかのはんこを押すことができました。
映画『Secret of Pukapuka』
お姉さんたちがえらいな、と思ったのは、セノーさんが何しに来たのかわかっていても、彼が「スタンプ台貸してください」というまで、毎日ずっと待っててくれたことです。待っている間のセノーさんの雰囲気がなんとも楽しかったのだと思います。
郵便局のお姉さんたちは、ぷかぷかができるまで、障がいのある人達とおつきあいするような機会はあまりなかったようです。初めて出会うぷかぷかさんたちに、最初は戸惑っていたと思います。でもセノーさんとのやりとりは毎日とても楽しくて、たちまち彼のファンになってしまいました。セノーさんはそうやって毎日「あ〜」「あ〜」「あ〜」…いいながら郵便局をやわらかく耕していたのです。
ぷかぷかさんが街にいること、そして街の人たちと日々の暮らしの中でおつきあいをしていること。それが社会を豊かにします。郵便局のお姉さんたちを見ていると、それがよくわかります。
これは先日パン屋のドアに貼ってあったお知らせです。
私たちが書いても、多分おもしろくもなんともないお知らせになります。ぷかぷかさんの書いたお知らせはなんとも楽しいです。こういった楽しさが社会を豊かなものにします。
彼らといっしょに生きると、こんなものがいっぱい生まれます。
「地球を守ろう」なんて呼びかけも私たちだけでやると、堅い、真面目な、おもしろくもないものになってしまいますが、ぷかぷかさんと一緒にやると、こんな楽しい呼びかけになります。
これもいっしょに生きることで社会が豊かになる一例です。
センスがね、私たちの何倍もいい気がします。そういったことを素直に認めること、それが彼らとのフラットなおつきあいを生み、そこから社会を豊かにするものが生まれます。彼らとはいっしょに生きていった方がトク!なのです。