タイトルがおもしろそうなので買ったのですが、いまいち盛り上がらないというか、「すったもんだ」の様々な事例に対するアドバイス(井上先生の解説)が真面目すぎて、「すったもんだ」の熱いエネルギーがしぼんでしまう感じ。
下の事例も、こんなにうまくいくはずないよな、と私なんかは思ってしまいます。多分このパニックを起こす子どものおかげでクラスはすったもんだの状態だったと思うのですが、井上先生の教科書のような解説には、そのすったもんだの中身がさっぱり見えません。極めて正しい解説で、子どものパニックに思い悩んでいる親御さんにとっては、ちょっと楽になるかも知れませんが、何か大事なものを見落としてる気がするのです。
パニックを起こす子どものまわりはすったもんだの大混乱であったと思います。そんな中で子どもたちは何を思い、何に気づき、どんなことをしたのか、それによって現場が、そして何よりも子どもたち自身がどんな風に変わっていったのか、ということこそ丁寧に書いて欲しかったと思うのです。
本の帯にはこんな言葉があります。
「自閉症スペクトラム症。
その、ひとくくりの言葉にも、無数の個性がある。
強烈なこだわり、大胆な発想、研ぎ澄まされた集中力…
“普通”じゃない、ということ。
それは同時に、可能性だと思う。」
だからこそ、彼らの引き起こす「すったもんだ」からは、今までにない新しいものが生まれる可能性があります。「すったもんだ」を引き起こす彼らに感謝!くらいの気持ちでこの本がまとまっていれば、もっとおもしろい本になってた気がします。ちょっともったいない。
帯の言葉を書いた(株)ヘラルボニーの商品のラベルにすばらしい言葉がありました。
「異彩を、放て」
まさにこれです。
その異彩を私たちは見落としていないか?