先日の朝日新聞『折々のことば』
みんなが生きていてよかったと思える世の中に変えていきたい。簡単には実現しないでしょう。でも、希望を持たないのは怠惰です。 (澤地久枝)
11月27日(日)、7回目の『表現の市場』をやります。障がいのある人たちとはいっしょに生きていった方がいいよ、という思いを込めた舞台です。
いっしょに生きるとこんなに面白いものが生まれる、というメッセージ。ともに生きる社会を作ろう、と言葉だけで終わるのではなく、ともに生きる関係で作り出した作品をそのまま舞台に上げます。舞台はともに生きる社会そのものです。
ともに生きる社会はこんなにも豊かなものを生み出すのです。
6年前のやまゆり園事件の犯人は「障害者はいない方がいい」などといい、それに共感する人がたくさんいました。全国各地で発生している障害のある人達のグループホームに対する反対運動は、「自分の住む地域に障害者はいない方がいい」といってるわけで、やまゆり園事件と地続きにあります。精神障害の人達のグループホームの近くにある幼稚園では、警備員を雇い、常時警戒しているという話も聞きました。「精神障害の人は怖い」というイメージが、小さな子どもたちの中に入り込んでいきます。その子どもたちは、将来どんな社会を作っていくのだろう、と心が冷え冷えとしてきます。
障がいのある人達を排除した社会は、排除した分だけ社会が許容する人の幅が狭くなり、お互いが息苦しくなります。
障がいのある人達も含め、みんなが生きていてよかったと思える世の中に変えていきたい。6年前のあの悲惨極まる事件を二度と起こさないような社会を作りたい。そのために私は彼らと一緒に舞台に立ち続けようと思っています。
舞台と同じような世界を社会の中で広げていくのは簡単ではありません。
それでも希望を持っています。舞台でこれだけのことができるのだから。「表現の市場」は希望の表現でもあるのです。