企業のメセナ活動のついて卒論を書く、という学生さんがきました。メセナ活動というのは、文化・芸術活動を支援することです。その支援の対象になるぷかぷかの活動を調べに来ました。
ぷかぷかの活動をいろいろ聞いたあと、そういった活動を企業が支えるとき、企業には何が生まれますか?どういうメリットがありますか?という質問が来ました。
企業は収益を生みます。収益は従業員の給料に回したり、企業を存続させるための投資に回したりします。その収益の一部を、たとえばぷかぷかの活動を支援する費用に回したらどうなるでしょう。
ぷかぷかの演劇ワークショップは、障がいのある人たちといっしょに作り上げる文化・芸術活動です。文化・芸術活動は社会を豊かにします。そこに障がいのある人達が加わっていれば、今までにない豊かさが生まれます。どうしてそんな豊かさが生まれるのでしょう。
演劇ワークショップは、障がいのある人達の魅力、発想の自由さ、面白さを存分に引き出し、それを一緒に作り上げる芝居に生かせるからです。私たちだけで作るよりも、彼らの魅力、彼らの発想の自由さが加わった分、幅の広がった作品ができます。そこには今までにない豊かさがあります。この豊かさこそが、障がいのある人たちといっしょに生きていく理由です。
写真はぷかぷかさん達と一緒に作った舞台。背景画も一緒に描いたものです。
パン屋とかお惣菜屋の活動はどうでしょう。
下の写真は栃木の上野さんの作ったライ麦の入ったパンです。ラベルにぷかぷかさんの描いた上野さんの似顔絵が入っています。この絵があることで、ライ麦パンの価値がグンと上がります。
おいしいライ麦パンを焼く職人さんがいて、上野さんの似顔絵を描くぷかぷかさんがいます。その二つがコラボした商品が上の写真です。障がいのある人たちといっしょに生きる、「ともに生きる」ことで生まれた商品です。「ともに生きる」ことで何が生まれるか、一目でわかります。「ともに生きる」ことで生まれた新しい価値といっていいと思います。ここにしかない価値ある商品です。
お惣菜屋にはこんなラベルがあります。
ぷかぷかさんの書く味のある字をここで使えばおもしろいんじゃない、という提案で生まれたラベルです。心がゆるっとするような魅力ある字です。この字は「ひじき煮」という商品を伝えるだけでなく、ふっとあたたかい気持ちになるものを伝えてくれます。思わず買ってみようかなという気になります。これも「ともに生きる」ことで生まれた新しい価値といっていいと思います。
週一回老人ホームに配達するお弁当には、ぷかぷかさんの描いた帯をつけます。この帯の絵を毎週楽しみにしているお年寄りの方達がいます。ぷかぷかさんはお年寄りの方達の人生を、こんな風に支える仕事をしています。彼らにしかできない仕事です。
こういう文字や絵は生活を豊かにする「文化」であり、「芸術」といってもいいと思います。パン屋もお惣菜屋も新しい「文化」「芸術」を生み出していることになります。
企業の利益をこういった活動の支援に回すとどうなるでしょう。そこで働いている人にとってのメリットってなんでしょう。おそらく大部分の人は障がいのある人達とのおつきあいがないので、ぷかぷかの試みは新鮮な気づきになります。障がいのある人達のイメージが、大幅に変わります。
彼らはあれができないこれができない人達ではなく、社会を耕し、豊かにする人達であることがわかります。「いっしょにいると心ぷかぷか」になる人達です。障害者はいや!と拒否してしまうより、「いっしょにいると心ぷかぷか」って思える方が、心豊かに過ごすことができます。
メセナ活動は文化、芸術活動を支援します。ぷかぷかの文化・芸術活動を支援する時、障がいのある人達の活動も支援することになるので、その成果はもっと幅の広いものになります。障がいのある人達が作り出す今までにない豊かさを、社会にもっともっと広げていくことができます。そんなことを企業が応援することになれば、「共生社会」がしきりと叫ばれる今、企業の評価はグンと上がります。
ぷかぷかさん達の生み出す豊かさは、生産性の論理では語れない豊かさです。生産性の論理で動く企業が、そういった豊かさを応援することになれば、企業が生み出すものの質が変わってきます。
生産性の論理とは異なる価値観との出会いで、何よりも、社内の雰囲気が変わります。社員の人達にとっては、働くことが楽になります。
更に、ぷかぷかさん達と出会う機会があれば、「いっしょにいると心ぷかぷか」の幸せ感を味わうことができます。これは、すごいメリットだと思います。