養護学校の教員をやっていた頃の話をふたつ(『子どもとゆく』164号)
高1のキイ君が作業学習で余った布を使ってうちの娘に小さな袋を作ってくれました。うちへ持って帰って、娘が袋を開けると、かわいい手紙が入っていました。
「ケームホイってなに?」と娘(当時5才)。家族みんなでしばし考え込みました。
「これって、ひょっとしたらゲームボーイのことじゃないの」と長男(当時10才)。
ピンポーンでしたね。キイ君はゲームボーイが大好きでした。それで今度娘にそれを教えてあげるって書いたのだとわかりました。
にしても、こんなあたたかな手紙を書いてくれるなんて、キイ君最高!って思いましたね。だって、こんな短い手紙で、うちの家族みんなの心をほっこりあたたかくしてくれたのですから。こういう人は社会の宝だと思いましたね。
もう一つはやっくんに春が来た話。
相手は同じクラスのサユリさん。サユリさんは一人だと帰り道がちょっと不安。それでやっくんに途中までいっしょに帰るように頼みました。で、毎日いっしょに帰るうちに春が芽生えたようでした。最近はしっかり手をつないで帰ったりしています。
今日は帰りがけ、サユリさんが玄関で靴を履き替える時、ひもがほどけてしまいました。結び直そうとするのですが、サユリさんはうまく結べません。私が結んであげようとしゃがみ込んだとたん、近くにいたやっくんがさっとやってきました。
「ぼくがやってあげるよ」
なんてカッコいいこというんだと感心しましたが、やっくんもうまく結べません。ああでもない、こうでもないと試行錯誤を繰り返します。
ゆるゆるでしたが、なんとか結べました。また途中でほどけてしまうのではないかと不安になるほどでしたが、サユリさんは大喜び。
「やったぁ、ばんざ〜い」
そんなサユリさんをうれしそうに見つめるやっくん。
春はいいですね。いっしょに「ばんざ〜い」っていいたくなりました。