ひふみ投信の藤野英人さんの高校生向けの話はとてもおもしろかったです。
藤野さんは堀江貴文さんの関わっているベンチャー企業の小型ロケットMOMOの打ち上げを見て、いたく感動し、第一回の打ち上げが失敗したにもかかわらずロケットに投資します。
ところが発射直後に大爆発。
「僕らの会社のロゴが堂々と入ったロケットは火の海となり、投資した大金が一瞬にして消えてしまった」のです。にもかかわらず、藤野さんはMOMO3号に投資しようとします。「失敗のまま終わらせず、成功することを夢見て、つぎもお金を出すべきじゃないですか」と。
当然のように、社外取締役から反対に合います。
「つぎ、成功する保証はある?」
「……ありません」
「成功すると思う?」
「……思います。ただ確証はありません」
「それで、会社としてお金出せます?」
で、結局個人でかなりの部分を負担するという折衷案(ロケットに「ひふみ」という文字が入るので会社で3分の1、個人で3分の2)で行くことになりました。
結果的にはMOMO3号は大成功。日本の宇宙開発を大きく前進させました。日本初、世界でも民間で4社目。
そのことを振り返る藤野さんの言葉が素晴らしい。
《私が失敗を重ねたMOMO3号機に投資をしたいちばん大きな理由。……それは、私が「成功する未来を信じていた」から、なんですね。堀江さんや稲川社長、何度失敗してもロケットが飛ぶ未来を夢見て挑戦するスタッフたちを信じると決めたから。》
「成功する未来を信じていた」という言葉がしみました。
ぷかぷかは何の実績もないところでのスタートでしたので、もう本当に自分の作る未来を信じるしかありませんでした。思いを共有できる人も周りにいなくて、孤立無援でした。店舗の見積もり、パン焼き釜、厨房機器の見積もりなどが次々に上がってきて、合計で2000万円を超える額。それまでふつうのサラリーマンしか経験のない身にとっては、すごい大金です。本当にうまくいくのかどうかもわからない事業に2000万円を超えるお金をつぎ込むのです。下手するとつぎ込んだお金が帰ってこない可能性もあります。それを全部一人で決めるのです。大丈夫、きっとうまくいく、と自分に言い聞かせながらも、正直、体が震えました。体は正直でしたね。
ぷかぷかがうまくいったかどうかは、ロケットみたいに打ち上げ後、すぐにわかるものではありません。何年もたってから、ああ、うまくいったんだなぁって感じでわかるものです。自分で安心してそう思えるようになったのは、ほんのこの3年ばかりです。
こんな顔して毎日が過ごせるようになったのです。
彼らに惚れ込み、彼らといっしょに生きていきたいと思ってはじめてぷかぷかでした。「障がいのある人たちとはいっしょに生きていった方がいいよ」「その方がトクだよ」ってずっと言い続けてきました。そう思う人たちがきっと増えていく、そしてほかのお店に負けないくらいおいしいものを作っていけばぷかぷかは絶対回っていく、と信じて大金を投じました。
自分の作る「未来を信じていた」のです。
高校生向けの藤野さんの話を読み、プロの投資家も、ずっと理詰めで行くのではなく、最後は「未来を信じる」ところでしか決められないのだと知り、とても共感しました。
未来を信じること、その未来に向けてとにかく動き続けること。そうやって未来は実現します。ぷかぷかはそんなことを苦しい経験を通して教えてくれた気がします。