ぷかぷか日記

ラーメンを6杯も食ったイエス(養護学校キンコンカンー④)

 養護学校で教員をやっていた頃の話です。

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 私の勤務していた養護学校には寄宿舎があり、一時そこの舎監もやっていました。寄宿舎は高等部の生徒たちが寝泊まりしていて、昼間、小学部で小さな子どもたちを相手にしている私にとっては、とても新鮮な職場でした。月3回ほど泊まりの勤務がありました。

 ご飯食べる時間以外は割と自由に何でもできました。年末、クリスマス会に向けて生徒たちといっしょに『青年イエス旅に出る』という芝居を作りました。二十歳になった青年イエスが、未知なる世界に向けて旅に出ます。どんなところを旅し、どんなことに出会ったのか、何をしたのか、それを生徒たちといっしょに考えたのです。

 ヒマラヤの山中に現れ、雪男と決闘したとか、ニューヨークでいい男はいないかと狂ったように探し求める女イエスとか(そうか、イエスって女だったかも知れないんだ、って生徒たちと話しながら思いました)、色々楽しいお話ができ上がったのですが、一番の傑作は、雪の降る札幌の街に現れたイエスがラーメンを6杯も食べるというお話。

 なんと泥臭いイエスなんだろうって、ちょっと感動してしまいました。いい男を捜し求める女イエスのお話もなかなかでしたが、ラーメンをずるずる音を立ててすするイエスというのは、私の中にあった清く正しいイエスのイメージを完璧に壊してくれました。

 「そうか、イエスがラーメンをすすったか」

って、なんだかうれしくてしょうがなかったですね。

 そしてラーメンを1杯でも3杯でもなく、6杯も食ったというあたり、彼らの中にイエスの確固たるイメージがあったのだと思います。6杯目を食い終わったイエスは、長いひげについたラーメンの汁を、おもむろにあの白い服の袖で拭い、またふらりとどこかへ消えたに違いありません。あたたかいねぐらにその夜もたどり着けたんだろうか…とそんな思いまでさせるイエスでした。

 新年あけて寄宿舎の生徒たちのやった書き初めの中に「はつひもち」というのがありました。この方が書きました。

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 そしてこの方がラーメン6杯も食べた青年イエスをやったのでした。
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 彼らといっしょに作る芝居は、昔も今も変わらず、とんでもなく楽しいです。それは多分彼らの発想の自由さ、豊かさにあると思います。だからいっしょに生きていった方がトク!なのです。 

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