2019年8月のぷかぷか上映会の時、こんな感想がありました。
《 4年前に霧ヶ丘に引っ越してきました。毎朝、ぷかぷかのパンを食べています。娘は保育園でもぷかぷかのパンを食べています。この街にぷかぷかのパン屋があることが、この街の価値を何倍にも上げています。映画を見て、それをますます感じました。霧ヶ丘の街が、ぷかぷかが、ますます好きになりました。》
「この街にぷかぷかのパン屋があることが、この街の価値を何倍にも上げています。」 ぷかぷかという福祉事業所が、福祉ではないところで新しい価値を生み出している。そこがいいなと思いました。
7月31日の上映会&トークセッションで、かずやさんの自立生活も、それが街の価値を何倍にも上げている、というような評価が出てくるといいですね、という話をしました。
数年前、緑区で障害のある人たちのグループホーム建設に反対する動きがあって、運営する業者からどうしたらいいか相談がありました。説明会に行って話をしようと、最初に『Secret of Pukapuka』の映画を上映しました。ところが始まって5分もたたないうちに
「障害者のいいところばかり撮った映画なんかやめて欲しい。もっと問題行動がわかるようなものをやるべき」
といった意見が出され、泣く泣く上映を途中で中止したことがあります。
その意見を出された方は障害のある方とおつきあいして何か困ったことがあった、というわけではなく、おつきあいのないが故に怖い、というところだけで意見を言っていました。要するに偏見です。たかが偏見ですが、こうやって上映ができなくなるようなチカラを発揮します。こちらの言い分を聞く耳も持ちませんでした。
社会は、障害のある人たちも含め、いろんな人がいることが社会の豊かさであり、面白さです。上映会の感想にあった「街の価値」というのは、まさにそのことを言っています。感想を書いた人は、パンを食べることでぷかぷかさんたちと出会い、そんなぷかぷかさんたちのいる霧が丘の街が好きになったというのです。
おつきあいすることもなく、一方的な偏見だけで障害のある人たちを排除してしまうと(グループホーム建設反対運動はまさにこれです)、社会が持っている豊かさや、いろんな人がいっしょに生きていく上での大事な苦労を失います。
「いろんな人がいっしょに生きていく上での大事な苦労」というのは、たとえばかずやさんの大声を巡って、今、まわりの人たちがどうしたらいいんだろうって、色々悩んでいますが、そういった苦労は、私たちの人間を鍛え、磨きます。それは社会の豊かさとして蓄積されていきます。苦労の蓄積は街の価値を少しずつあげていくのです。
先日NHKおはよう日本で紹介されましたが、地域で一矢さんを受け入れていこうという人たちも現れています。
いつも買い物に行くスーパーで「かずやしんぶん」を渡すと
隣の自転車屋さんのおじさんは
かずやさんの自立生活は、すでにこういう人を生み出し、周りの人は苦労を蓄積しています。かずやさんの自立生活は、こんな風にして街の価値を少しずつ上げているように思うのです。
かずやさんの自立生活を、福祉とは違う視点で語ること。それは今までにない新しい豊かさを生みます。