今年も映画を見て、やまゆり園事件を考える集まりをやります。
やまゆり園事件について考える集まりですが、ムツカシイ、しんどい話ではなく、「やっぱりいろんな人がいた方がいいね」って、みんなで前を向けるような話になればいいな、と思っています。
『いろとりどりの親子』は、いろとりどりだからこそ、そこには葛藤があり、葛藤故に、豊かなものが生まれることを映像を通して見せてくれます。葛藤の先にある、思いもよらない親子の出会いは、とてもハッピー。見ているこっちまでハッピーになりました。社会にいろんな人がいるっていいなって思いました。
事件の犯人の言う「障害者はいない方がいい」ではなく、障がいのある人たちとは「いっしょにいると心ぷかぷか」になるような関係を作っていった方がいい、と思うのです。『Secret of Pukapuka』は、それがどういった関係であるのかを語った映画です。見ている方まで「心ぷかぷか」になります。そういう関係を広げていくこと、それがやまゆり園事件を超える社会を作ることだと思います。
今回のトークイベントではゲストに尾野一矢さんに登場していただきます。かずやさんはやまゆり園事件で重傷を負った方ですが、昨年8月から施設を出て街の中で自立生活をしています。
かずやさんは時々大声を出すので、アパートの2階の方から苦情が来ています。ただ謝るだけでは、大声の問題は解決しません。なぜなら、
「大声出すのはやめましょう」
なんていっても、かずやさんには通じないからです。悪気はないのですが、これからも大声は時々出てしまいます。結局はその大声とどう共存していくのか、共存するにはどうすればいいのか、ということです。
先日大声が外に聞こえにくいようにかずやさんの部屋の天井に防音のパネルを貼りました。窓に防音のカーテンもつけました。これで多少は改善できますが、完璧ではありません。
あとは多少声が聞こえても、
「ったくしょーがねーなー」
とブツブツ言いながらも、そこで踏みとどまれるような関係ができるかどうかです。
苦情をきっかけに2階の方と前向きのいい関係ができるといいな、と思っています。休みの日に、おいしいケーキの差し入れがあったから、とかなんとか声をかけて、一緒にお茶飲んだり、お正月には一緒に餅つきをしたり…そんな関係です。
2階の方だけでなく、地域の人たちみんなと顔なじみになって、一緒に何かおもしろいことができるような関係もつくりたいと思っています。題して「友達大作戦」。
友達大作戦はこちら
重度障がいの方の自立生活というのは、ただアパートを借りて生活する、というのではなく、地域の人たちとのさまざまな関わりの中で生活する、ということだと思います。今回、大声に対する苦情をきっかけに、地域との新しい関係が生まれます。
重度障がいの方の自立生活が、地域社会を豊かにしていく。かずやさんの周りに、なんだか素敵な物語が生まれそうです。
地域には大声を出すとか、色々おつきあいのむつかしい方はいらっしゃいます。そんな人たちともお互い地域で気持ちよく生きて行ければ、地域社会はとても豊かなものになります。かずやさんの大声問題は、どこにでもある問題なのです。
トークイベントのテーマは《あなたととなりのかずやさん》です。
そうそう、トークイベントが始まる時、ツジさんが舞台で「きみのためにSuperman」を歌うそうです。今からもうノリノリです。これはもう絶対に聞かなきゃソン!です。
「何でやまゆり園事件を考える集まりで、きみのためにSupermanなの?」なんて考える人も多いと思います。でも、これがぷかぷかなのです。これがぷかぷか流の事件の超え方です。
ツジさんの歌を聴いて、一人でもたくさんの人が心ぷかぷかになること。それが事件後の今、とても大事だと思っています。社会はそうやって少しずつ変わって行くからです。