ぷかぷか日記

関係性に出会っている

『ぷかぷかな物語』読んで、北海道からやってきたウエムラさんの日記です。

 ぷかぷかではメンバーさんとスタッフの関係は、「支援」する、される、という関係ではありません。いっしょに生きていく、一緒にぷかぷかを作っていく、という関係です。それをウエムラさんはビジターの新鮮な言葉でうまく表現しています。

 

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【「ぷかぷかさんとの出会い」を支えるスタッフさんたちの存在】

 

 昨日、施設長の魚住さんが「ぷかぷかのメンバーさんとスタッフさんって一体なんですよね」とおっしゃっていました。たった1週間の見学では、その言葉に込められた真意をわかることは到底できませんでしたが、ぷかぷかに来てから、メンバーさんとスタッフさんのかかわりあいを見ていて私なりに感じたことを少しまとめておきたいと思います(「メンバーさん」と「スタッフさん」というふうに二分してしまっていいのか、少ししっくり来ない部分もあるのですが、ここではとりあえず「メンバーさん」と「スタッフさん」と書きます)。

 

4月8日、おひさまの台所の前で、おひさまスタッフの石神さんと話していたときのことでした。石神さんが、おひさまの店前を歩くヨッシーさんの姿を見つけて、「あ、ヨッシーさん」と呼び掛けました。

「あ、ヨッシーさん、今日のおすすめは何にしますか?」。おひさまの今日のおすすめメニューを決めるのは、ヨッシーさんの毎日の仕事の一つだそうです。

彼は、おひさまの台所の店頭に並ぶお弁当や総菜を見回して一瞬逡巡したのち、「鮭と菜花弁当」を今日のおすすめメニューに選びました。

 2人のやりとりを傍らで見ていた私に、石神さんがこんな話をしてくれました。「彼はね、すごいんですよ。彼はいつもね、わかってくれるんです。私がいつも『今日これ多いから売りたいんだよねー』とかって何気なく言ってたからか、きちんとわかってくれて、たくさん残ってるのとか、数が多いのとかをおすすめメニューに選んでくれるんですよ」。

 チョークとミニ黒板を持って、アート屋わんどの入口前に置かれた椅子に移動し、今日のおすすめを黒板に書きはじめるヨッシーさん。おすすめを書き終えると、今度は大きい立て黒板を持って来て、今日のメニュー表を書き始めました。ときどき手を止め腕組みをして、じーっと遠くを見つめながら、何か考えています。どうやら一つひとつのメニューを何色で書くかを考えているみたいです。石神さんによると、ヨッシーさんは色使いがとても細やかで、コロッケの色が揚げ油の中でだんだんと変化していく様子を見るのとかも好きなのだそうです。「自分で厨房で作ってるからわかるんですよね。そういうの(色の変化を見るのとか)もすごく好きみたいで」。

 石神さんの話を聞いたあと、ヨッシーさんが今日のおすすめやメニュー表を少しずつ描きあげていく様子を見ながら、うまく言葉で表現できないのですが、おひさまの「今日のおすすめ」の看板は、ヨッシーさんと石神さんが相互にかかわりあうなかで生まれている協働作業の結果でもあり、ある意味では、2人が一緒に描いているものでもあるのかもしれないな、と思いました。実際に黒板に字を綴っているのはヨッシーさんですが、ヨッシーさんが“ヨッシーさんだけの力”で描いていると言うのもどこか違うような気がしたのです。また一方で、ヨッシーさんがスタッフさんの言う通りに“描かされている”のともまったく違います。「今日のおすすめメニュー」の看板を描くという行為は、2人のあいだの不思議なバランスのもとで成り立っている営みであるように私は感じたのだと思います。

 おひさまの今日のおすすめメニューの話だけではなく、私がぷかぷかに来て、それぞれのメンバーさんのこんな一面やあんな一面に出会うことができるのは、そこにスタッフさんが一緒に居て、「私とぷかぷかさんが出会うこと」をさりげなく支えてくれているからだと思います。たとえば、私のように外から来たお客さんは、ヨッシーさんが描いたメニュー看板や、ミズキさんが描いたお惣菜の品札を見たとき、その看板や品札を通して、それを描いてくれたヨッシーさんやミズキさんに出会うことができます。でもその出会いは、ぷかぷかという場があって、ぷかぷかさんが居て、そしてそこに一緒にスタッフさんが居てくれるから成り立つものです。店先で突然歌を歌い出したセノーさんに遭遇したとき、私はセノーさんその人だけに出会っているのではなく、セノーさんの歌に合いの手を入れるスタッフさんと彼との“関係性に出会っている”のだと思います。セノーさんとかかわるスタッフさんが楽しそうだから、2人のやりとりがなんだか愉快だから、その関係性に出会った外部の人たちは、セノーさんとの出会いを「楽しかったなぁ」と思い返すことができるのではないかと思います。楽しい場面、心地よい場面だけではありません。メンバーさんがイライラしていたり、何か理由があってワーッとなっている場面に出会ったときは、私ひとりでは何が何だかわけがわからず、きっと私も一緒にパニックになってしまうでしょう。でもそこに、いつも一緒に過ごしているスタッフさんがいることで、ワーッとなっていたメンバーさんは落ち着きを取り戻すことができます。そして、私はその2人のやりとりを見ることで、楽しい場面に出会ったときとは違う意味で、心を揺さぶられる体験をすることになります。ぷかぷかのメンバーさんと話していて、私が言葉に詰まってしまったり、反応に困ってしまったとき、メンバーさんの隣にいたスタッフさんが何か一言投げかけてくれることで、私とぷかぷかさんとの新たな出会いが生まれます。その潤滑油がなかったら、私はぷかぷかさんと1次的な意味で出会うことすらできないかもしれません。ぷかぷかという場があることで、外部の人たちとの1次的な出会いが生まれ、そこにスタッフさんがいてくれることで、外部の人たちとぷかぷかさんとの2次的な出会いがより深いものになっていくのではないかと思います。

 4月8日の夜、アート屋わんどにスタッフさんたち何人かが集まっている場に同席させてもらう機会がありました。途中で、話の詳細はよくわかりませんでしたが、外販に行くメンバーについての話が出て、スタッフさんたちは、ここの外販場所はこういう状況だからこのメンバーで行くのがいいのではないか、この人はこの人と一緒のほうがいいのではないかといったことを話し合っていました。外販場所へ買い物に行ったとき、お客さんはぷかぷかさんに出会うことができます。その出会いの中には、ぷかぷかさんとお客さんが直接対峙することで思いがけず生まれる出会いもたくさんあるはずです。でも、その「思いがけない出会い」が生まれる環境をつくることを日々支えてくれているのが、ぷかぷかのスタッフさんたちなのだと思います。

私は、代表の高崎さんの本『ぷかぷかな物語』を読んで、ぷかぷかに行ってみたいなぁと思った(そして実際に来てしまった)一人ですが、高崎さんの本からだけでは、ぷかぷかさんと一緒に生きているスタッフさんの姿はあまり見えてきませんでした。実際にぷかぷかに来てみて、「そんなところまで考えてるんだ…」と思ってしまうようなことを日々考えながら、ぷかぷかのメンバーさん一人ひとりがその人らしく過ごすことを支えているスタッフさんの姿に、ほんの少しでしたが触れることができて、本当に勉強になりました。ありがとうございました。

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【 店先で突然歌を歌い出したセノーさんに遭遇したとき、私はセノーさんその人だけに出会っているのではなく、セノーさんの歌に合いの手を入れるスタッフさんと彼との“関係性に出会っている”のだと思います。】

 “関係性に出会っている” いい言葉だなと思いました。ぷかぷかさんたちとどんな思いでつきあっているのか、それがお客さんには全部見えるんですね。ハッピーな気持ちでつきあっていれば、お客さんもハッピーにします。

 ウエムラさん、いい言葉をありがとう!

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