岩倉政城さんのFacebookにこんな話がありました。
口のにおい消しのために人生を棒に振る
在職中、口臭外来を立ち上げた。成分分析機器のガスクロマトグラフィが扱えたから。みるみる外来の4割が口臭患者で埋まった。来る人来る人、口の中の気体成分を測りつづけた。記録計の針の動きを一緒にのぞき込みながら「悪臭ピーク出ませんよ」と告げると、患者は小躍りして帰って行った。
ところが、その患者の一部が戻って来たのです。 「やっぱ、あるんです。バスに乗ったらみんなこっち向いて鼻に手やるんです」。「絶対にあります。店番してたら客がドア開けた途端鼻おさえて帰ってしまいました」。
それでは、と、口のガスを測ってみる。「・・でませんね」。「でませんか。・・・先生のところに来ると安心で口臭が出ないんですかねぇ・・・」。
持参のバッグの中を見せてもらうと口臭抑制グッズが何種類も出てきた。
口臭患者の多くは鏡のような口で、一日の2時間を歯みがきにかける人も。
診断を“幻臭症”とすることは容易。だが、自分がどう生きるかより、“人様”からどう観られているかにばかり気が取られ、自分を生きることをやめ、仕事をやめ、あるいはひきこもる。
自己を主張せず、忖度に沈み、同調化社会がもたらす過度の緊張を生きている。
治療では同じ悩みを持つ人同士が集まるピアカウンセリングなどで対応はしてきた。
でも、一人一人の個性が大切にされない社会が口臭患者を生みだしていることを忘れてはならない。
障がいのある人たちが社会に合わせることを強いられている問題と同じだと思いました。「障がいのある人たちは社会に合わせないとやっていけない」と言われ、親子で大変な努力を強いられています。自分がどう生きるかより、社会が求めることを優先しているのです。
そのことがおかしいと気づいたのはぷかぷかをはじめる時です。今まで何度も書いていますが、私自身「社会に合わせないとやっていけない」と思い、ぷかぷかをはじめる時、接客の仕方くらいは知っておこう、と講師を呼んで接客の講習会をぷかぷかさんとスタッフでやりました。
「接客マニュアル」というのがあって、その通りにやればいいんですよといわれ、話を聞いた段階では、そうか、この通りにやればもう完璧!なんて思いました。ところが実際にぷかぷかさんがやってみると、なんだか気色悪いのです。がんばってがんばって接客マニュアルに合わせようとすればするほど痛々しいというか、もう見てられない気がしました。
接客マニュアルに合わせる、というのは自分を押し殺すことです。ぷかぷかは、養護学校の教員をやっている時、障がいのある子どもたちに惚れ込み、彼らといっしょに生きていきたいと思ってはじめました。その彼らが自分を押し殺す姿を見て、もう耐えられない気がしました。
気色悪い!という直感で、ああ、これはもうやってられない、と接客マニュアルはやめ、彼らのそのままでやっていこうと決めました。
結果どうなったか。
「何だ、このお店は接客の仕方も知らないのか」
とお客さんは帰ってしまうのではないかと心配しましたが、帰るどころか、
「ぷかぷかさんが好き!」
というファンが現れたのです。全く想定外の展開でした。
彼らのそのままが一番魅力的であることを、お客さん自身が見抜いたのです。その後ファンが増え続け、そのファンの人たちがぷかぷかを支えてくれています。
何かにつけ社会から排除されることの多い障がいのある人たちです。でも、その彼らをファンの人たちは「ぷかぷかさんが好き!」と支えてくれているのです。
障がいのある人たちは社会に合わせなきゃやっていけない、といってきた社会を、ぷかぷかさん達が、ほんの少しですが、変えたのです。これは大変な出来事だと思います。
一人一人の個性が大切にされない同調化社会をぷかぷかさん達が救っているのです。彼らとおつきあいすることで、私たちが救われているのです。