ぷかぷか日記

彼らの人生を支えるのが福祉

 やまゆり園で見守り困難として1日11時間も拘束され、事件後ほかの施設に移った松田智子さんのその後を取材したすばらしい記事。「やまゆり園事件は終わったか」の挑戦的なテーマで福祉を問い続けています。

mainichi.jp

 元気に廃品回収の仕事なども続いているようで、安心しました。ふつうに仕事をしている智子さんの姿から、見守り困難として長時間拘束し続けたやまゆり園の実態をあらためて批判しています。

《事件当時、植松死刑囚は入所者に言葉をかけて満足に応答できない人を選んで殺傷に及んだ。「何もできない意思のない人」という非情な評価は、植松死刑囚だけでなく園で共有されていたのではないか。》

 「園で共有されていたのではないか」という指摘は、事件の核心部分とも言えます。これがなければ、植松の犯行もなかったわけですから。そこの部分の更に突っ込んだ取材を期待しています。一番難しいところだとは思いますが…。でも、ここにこそ、福祉の世界の闇があるような気がしています。

 

 

 気になったことをひとつ

 見守られる中の人生

《由美さんはグループホームに移り、リハビリや専門的な支援を受けるうちに歩き方もしっかりとし、表情も豊かになってきたという。「洗濯物を干したり、靴箱に靴をしまったり、ここの職員さんたちは、根気強く見守りながら本人にやらせて、持っている力を引き出してくれる。可能性のある人間としてみてくれているのです。娘はここに来て、本当に変わりました。悲惨な事件が起きましたが、この子は生き延びることができた。改めて娘が掛けがえのない存在だと感じました。これからは、もっと幸せになってほしい」》

 親御さんのうれしい気持ちがとてもよく伝わってきます。ただ一方で、障がいのある人たちは結局見守られる中でしか生きられないのか、とちょっぴり淋しい気もしました。

 NHKで見た映像では、由美さんの生き生きとした表情がとても印象に残っています。ここへ来てようやく「自分の人生を生き始めたんだな」と私は思いました。レストランで好きなメニューを選ぶ、廃品回収のリヤカーを押す、そういったことのひとつひとつが、自分の人生を生きることであり、そのうれしさがあの表情を生んだのだと思います。

 もちろん職員のフォローがあってできることですが、笑顔を生んだのは由美さんの気持ちです。あ、おもしろい!って思ったのは、どこまでも由美さんです。そこを、由美さんが自分の人生を生きた、と見るのか、見守られながら本人が笑顔を見せた、と見るのか。

 

 どんなに障がいが重くても、その人なりの人生があって、その人生を彼らは生きています。その人生としっかり向き合い、それを支えるのが福祉じゃないかと思います。

 やまゆり園はそれをやっていたのだろうか。彼らの人生を支える福祉。それをやっていれば事件は起きませんでした。

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