障害者を雇用する、というのは、障害者とおつきあいする、ということです。おつきあいの経験がなければ、いろいろ苦労します。言葉がうまく伝わらなかったり、仕事がうまくこなせなかったり、いろんな問題を抱えることになります。
その問題と根気よく向き合うのかどうか、というところで企業が試されます。
そこに目をつけた新しいビジネスを展開する会社が現れました。お金を払えば、その面倒くさい問題を全部引き受けますよ、というビジネスです。
その会社は障害者を集め、農園をやっています。土を使わない「養液栽培」という方法で野菜を育てるため、種まきや水やり、収穫などの軽作業ですむそうです。
企業側は、その農園で働く障害者と雇用契約を結び、給料だけ払います。雇用契約を結んだだけで、その人とのおつきあいは全くありません。でも雇用契約を結んだので、企業は障害者を雇ったことになり、法定雇用率が達成できる、というわけです。障害者を雇うことの面倒くささを避けたい企業にとってはうれしい話です。
ごまかしとは言え、うまいところに目をつけたビジネスだな、とは思います。
でも、中身が全くなくても、障害者法定雇用率が達成できるような社会は、いずれどこかで壊れていきます。こういうことをあちこちの町の行政が後押しするなんて、何を考えてるのか、と思います。障害者を雇用する意味、彼らとおつきあいする意味をきちんと考えてない、ということなのでしょう。
障害者雇用は、障害者とおつきあいするとてもいい機会です。いろいろ大変なことはありますが、それを超える豊かなものが、彼らとのおつきあいにはあります。そういったせっかくの機会を、お金を払って放棄してしまうなんて、なんとももったいない話です。