第六期演劇ワークショップ第5回。
ある日、一郎は山猫から、こんなはがきを受け取ります。
翌日、わくわくしながら出かけていきます。
♪ おもてにでてみると、まわりの山は、みんなたったいまできたばかりのようにうるうるもりあがって、まっ青なそらのしたにならんでいました。(オペラシアターこんにゃく座のオペラ『ドングリと山猫』の中で歌われるうた)
真っ青なそらのしたを歩いて行くと、クルミの木や笛吹きの滝やきのこが現れます。
一郎が
♪ 山猫が、ここを通らなかったかい
と聞き、原作ではただ方角を言うだけですが、それじゃつまらない、と、簡単なお話を作りました。
笛吹きの滝は、ただ「ピーッ」と笛のような音を立てるだけですが、ぷかぷかさんといろいろ話をしているうちに、滝の前に露天風呂が登場することになりました。こういうところがワークショップは全く自由です。
山に住む猿と熊が風呂に入ってうたを歌っています。
♪ ばばんば ばん ばん ばん ばばんば ばん ばん ばん い〜い湯だな い〜い湯だな 湯気が天井から ぽたりと背中に つめてえな つめてえな ここは上州 笛吹きの湯 ♪
と歌っていると、一郎がやって来ます。
♪ 山猫が、ここを通らなかったかい
「山猫は、ここで風呂に入ってから、東の方へ行ったみたいです」
…というお話になりました。
かやの森に囲まれた金色の草原ではどんぐりたちが
「俺たちこそがいちばんえらい」
と言い争っています。
みんなドングリの帽子をかぶって、グループごとに何を自慢するのかを決めました。
いちばんおもしろかったのは忍者ダンスが得意なドングリ。どうしてドングリが忍者ダンスを踊ったりするの?なんて疑問が野暮に思えるほどに、このチームには勢いがありました。そういう突拍子もないアイデアが出てくるのが、ぷかぷかさんと一緒にやるワークショップ。
感心したのは一郎役をやったフタミンが振り付けの伊藤多恵さんと一緒に「ゆっくりゆきちゃん」を歌いながらゆっくり歩く練習をしたとき。
♪ ゆっくりけしきを ゆっくりながめ…
というところ、フタミンの視線の先に、ゆきちゃんがゆっくり眺めているけしきが見えるのです。
フタミンは時々パン屋の前で一人で忍者の戦いをし、お姫様がさらわれたから助けに行く、とそのまま行方不明になったりする人です。ところがワークショップの日は、振り付け師の伊藤さんの言うことをしっかり理解し、ゆきちゃんがゆっくり眺めているけしきを視線の先に表現したのです。 自分の視線の先にゆきちゃんの眺めているけしきを表現するなんて、そう簡単にできることではありません。その集中力、表現力に、ちょっとびっくりしました。
1月26日(日)の表現の市場まで、あと2回。それぞれやることが見えてきたので、多分今年もうまくいくと思います。特にフタミンの視線の先だけで表現しているのを見ると、本当にすごいなと思います。1月26日、楽しみにしていてください。