いつものようにセノーさんの目、のぞき込んでいたら、
「もう10年だね」
とセノーさん
10年前、といえば、セノーさん養護学校高等部の3年生。ちょうど私が担任していました。
その頃毎日のように通学途中の駅前にあるマックに行っていました。すごく太っていたので、
「マックは行かない方がいいよ」
というのですが、そのくらいの注意でセノーさんが変わるわけありません。
で、ある日、一緒に給食を食べているとき、思いついて、突然セノーさんの目をのぞき込み
「あ〜!、セノーさん、大変、目が真っ赤!これ、糖尿病だよ。」
「なに、それ」
「糖尿病はマックを食べ過ぎて、セノーさんみたいに太った人がかかる病気で、病気が進むと、足の先や手の先が腐ってぼろっと落ちてしまうんだよ。おしっこの出る大事なところも、朝、おしっこしたはずみにぼろっと落っこちでしまうかも」
といったのがきっかけで、毎朝目の検査をするようになりました。
卒業後、しばらくほかの事業所に行っていたのですが、そこで居場所を失い、ぷかぷかにやってきました。久しぶりに会ったのですが、目の検査のことはしっかり覚えていて、また再開しました。
目をのぞき込み、朝、ぼろっと落ちなかった?と聞くのが毎日の日課になりました。
「ぼろっと落ちたら東洋英和(近くの女子大)行くの?」
「そう!、お母さんのスカートはいていくといいよ」
なんて話で盛り上がりました。
そんなセノーさんのいちばんの貢献は、寝ながらでも街を耕し、売り上げを作り出すことができる、という前代未聞の事実を作ったことです。
こんな写真をFacebookにアップすると、びっくりするくらいたくさんの人たちがアクセスしてきます。
「また癒やされました」
って。こうやってファンが増え、売り上げが増えるのです。
私がこんなふうに寝ても、絶対に売り上げが伸びないことを考えれば、セノーさんがいかにすごいことをやったかがわかります。
セノーさんのおかげで「生産性のない人が社会に必要な理由」というブログを書かせてもらいました。ぷかぷかしんぶんにもその要約を書いたところ、障害者雇用に新しい発想を持ち込もうとしていた印刷屋の社長さんの目にとまり、印刷業界の全国紙に紹介してくれました。これがきっかけで、印刷屋の社長さん10数名が全国から集まって、ぷかぷかで研修会をやりました。
こんなふうにセノーさんは、今までにない新しい価値をいろいろ作ってくれたのです。
こうやって寝ながら(これ、郵便局です)
にしても、おつきあいして10年になる、ということに気がついたセノーさんはえらい!と素直に思いました。