津久井やまゆり園障害者殺傷事件について、9月はじめ神奈川県に対し、質問状を送りました。
これに対し神奈川県から回答が来ました。
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このたびいただきました、津久井やまゆり園で起きた事件に関するご質
問については、以下のとおりお答えします。
県としては、このような事件が二度と繰り返されないよう、徹底した再
発防止に取り組んでいきます。
(1)について
事件発生後、県は津久井やまゆり園の設置管理者として、指定管理者であ
る(福)かながわ共同会(以下、「共同会」という。)に対して、危機管理の観
点から是正すべき業務があり、誠実に対応すべきとして改善勧告を行い、危
機管理対策本部の設置、緊急時の報告連絡体制の再構築などを含んだ改善計
画が提出され、県ではその進捗状況について改善を確認しました。
(2)について
津久井やまゆり園事件検証報告書では、「採用時の面接等で本人が偏った
思想を持っていても見抜くことは困難であり、共同会の人材育成や人権教育
に不足があったとは言えない」との見解が示されています。
なお、県は、共同会が、平成29 年度に人事企画部を新たに設置し、職員
の採用後の勤務状況等について、一人一人丁寧にフォローし、人事管理の徹
底を継続していることを確認しております。
(3)及び(4)について
県は、事件の動機や犯行態様を把握できる立場にありません。なぜこのよ
うな事件が起こったのかという点につきましては、今後の刑事裁判の中で、
明らかになっていくものと考えております。
(5)について
共同会は、第五期中期計画の重点施策の一つに、身体拘束ゼロに向けた取
組の推進を掲げています。県としては、こうした取組が継続して実施される
よう、引き続きしっかりと指導してまいります。
なお、個別の事案についてのお答えは差し控えさせていただきます。
令和元年9月27 日
高崎 明 様
神奈川県福祉子どもみらい局福祉部障害サービス課長 大澤 靖史
問合せ先
施設指導グループ 岩下
電話 045-210-4724(直通)
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このたびは、質問に対する回答をいただき、ありがとうございました。
ただ回答を見ると、私の質問の意図が十分伝わっていなかった気がします。そのため、質問の意図と、いただいた回答がかなりずれていました。質問の意図を今一度明確にした上で、再度質問したいと思います。
まず、質問の背景を説明します。
人間の思考は、その人がいる環境に育てられ、その影響を大きく受けます。行動も、その思考から出てきます。重度障害のある人たちと一緒の現場にいる支援者も同じことが言えます。
県としては、今、被告自身に聞き取りはできません。でも、やまゆり園の支援の中身、現場の環境の検証はできます。特に気になるのは一部報道により、身体拘束が日常的に行われていたことがうかがわれることです。
津久井やまゆり園の中で、彼が働いていた現場では、支援者は重度障害の人たちとどのように関わっていたのでしょうか。
被告が手紙に書いた「車いすに一生縛られている気の毒な利用者」というのは、「支援者が利用者を車いすに一生縛る」という実態ではないでしょうか?
こうした実態を見つめ直すことは、事件を乗り越え、未来に向かうための県の役割、責務だと思います。
もし県がその検証を怠るなら、事件の温床が残されたままになります。
以下、質問です。
前回の質問1)の意図は、はやまゆり園の危機管理に関してではありません。
「なぜ、あのような事件が起こったのか」運営法人は施設利用者、家族および県民に対してきちんと説明する責任があります。
今回の事件は、支援する人間が、支援している重度障害のある人たちを惨殺する、という信じられないような事件であり、社会に大変な衝撃を与えました。
やまゆり園で起こった事件であったにもかかわらず、そのやまゆり園の運営法人は謝罪も説明も一切していません。運営法人は社会的責任の大きい社会福祉法人です。
一切の謝罪、説明がなかったことについて、県は指導を入れたのでしょうか? 指導を入れていれば、どのような指導を入れたのか、その結果どうだったのか、をお答えください。
指導をしていないのであれば、なぜ指導を入れなかったのか理由を書いてください。
そもそも、県としては、事件に対する津久井やまゆり園の責任は、危機管理の観点のみだと考えているのでしょうか?この点についてお答えください。
質問2)は、主に、雇用主としての職員育成に関する質問です。
2)ー① 回答に 「共同会の人材育成や人権教育に不足があったとは言えない」とありますが、それにもかかわらず事件を起こしました。だからこそ、人材育成、人権教育がどのようになされてきたのかの検証が必要だと思います。この点についてどう考えますか?
2)ー② 県や共同会が有効と考えている「人材教育、人権教育」があっても、「長時間の身体拘束が当然とするような」現場の実態がありました。なぜだと思いますか?お答えください。
2)ー③ また、教育よりも、そうした現場実態の方が被告の心に強く影響したと考えます。教育という抽象的なものよりも、実態というリアルなものの方が人の心に大きな影響を与えるからです。このことについて、どう思われますか?
3)回答に「共同会は、第五期中期計画の重点施策の一つに、身体拘束ゼロに向けた取組の推進を掲げています。」とありました。身体拘束ゼロに向けた取り組みですから、事件当時は身体拘束がゼロではなかった。つまり身体拘束があったと解釈できます。身体拘束は条件を満たさなければ、虐待であり、明確な人権侵害です。
そういう職場環境で事件は起こりました。どうしてあのような事件が起こったのか検証するとき、被疑者の働いていた職場環境はとても大きな要因を持っていると考えます。ものの考え方に大きな影響を与えるからです。
3)ー① 身体拘束があったことは日々の日報などで知り得ることです。指定管理先のモニタリングを行う義務は、県にあります。施設設置の責任者として、県は身体拘束の実情を、どう把握していましたか?
身体拘束は明らかに人権侵害です。それに対し、どのような指導を入れましたか?その結果、どのような改善結果がありましたが。お答えください。
3)ー② 共同会のホームページの表現では第五期中期計画は今年の3月にまとめられたものです。それまで不適切な身体拘束が続いていたのでしょうか?お答えください。
3)ー③ 事件検証委員会の報告書は、被疑者の働いていた現場の支援状況について一言も触れていません。現場の支援状況が被疑者に与える影響を考えると、事件を検証する上ではとてもまずいと思います。県としてはどのように考えますか?
★来年1月には裁判が始まります。多分、容疑者の特異性が前面に出てきて、やまゆり園自体の問題、それを監督する神奈川県の問題は問われないままになる可能性があります。それはまずいのではないか、というところでの質問です。みなさまからのご意見お寄せください。takasaki@pukapuka.or.jp までお願いします。