『ぷかぷかな物語』らくだの絵の表紙がすごくいいです。
昔、タクラマカン砂漠を旅する話が好きでした。未知なる世界への旅の物語を、わくわくしながら読みました。
ぷかぷかもこのらくだの背に乗って、のっそりのっそり未知なる世界へ旅してるのだろうと思います。
未知なる世界、というのは、新しい福祉文化の世界です。
福祉の世界をやるつもりはなくて、ただ彼ら(障がいのある人たち)と一緒に生きていきたいと思ってはじめたぷかぷかでしたが、気がつくと、従来の福祉とは全く外れたことをやっていました。でも、それ故に、たくさんの新しい物語が生まれました。新しい価値、新しい文化が生まれました。
ぷかぷかは、2015年に演劇ワークショップの試みが「読売福祉文化賞」を受賞しました。
「読売福祉賞」ではなく、どうして「読売福祉文化賞」なのか。審査員の一人が、「文化」という言葉が入る理由についてこんなふうに語っていました。
《「福祉」という言葉から抱きがちな「施し」のようなイメージを打破し、本来はそこから新しいトレンドやカルチャーを生み出し得る創造的作業だと思うからあえて「福祉文化」と表現しました…》
「新しいトレンドやカルチャーを生み出し得る創造的作業」
ぷかぷかの9年は、まさにそれをやってきた、と本にまとめた今、あらためて思います。ぷかぷかが創り出してきたのは、まさにこの「新しい福祉文化」ではないかと。
ぷかぷかが作ってきた「新しい福祉文化」とは
1)障がいのある人たちに「支援」はしません。そういう上から目線の関係ではなく、どこまでも「一緒に生きていく」というフラットな関係でぷかぷかはやってきました。
だからこそ、障がいのある人たちとクリエイティブな関係を作り、創造的作業ができたと思っています。そこから新しい文化が生まれました。
『ぷかぷかな物語』は、そのフラットな関係が何を創り出したかを物語る本です。
自費出版の『pukapukaな時間』は、その関係が生み出したものをビジュアルに表現したものです。ビジュアルに表現すると、それが一つの「文化」であることがよくわかります。(『pukapukaな時間』は、ぷかぷかのお店で販売中。ホームページのオンラインショップでも買えます。 書籍 | ぷかぷか )
みんなで木になっているこの写真は、障がいのある人たちとフラットな関係を作ると何が生まれるかを象徴的する写真です。みんなでこんな楽しいことができるのです。新しい福祉文化です。
相模原障害者殺傷事件の犯人がこういう関係を経験していれば、事件は起こりませんでした。そのことは何を物語っているのか。
福祉の現場、支援の現場でなぜあのような事件が起こったのか、という問い直しが福祉のサイドから本当はもっともっとなされるべきだと思います。(私はそれを見たことがありません。どなたかご存じの方がいらっしゃったら教えてください。)
2)「新しい福祉文化」においては、障がいのある人たちは、社会に合わせるのではなく、そのままのあなたが一番魅力的!といいます。
社会に合わせるのはやめよう、もうそのままで行こう、と決めたことで、彼らはとても自由になりました。その自由な振る舞いは、そのまま彼らの魅力になりました。
かつて私はその魅力にとりつかれ、彼らといっしょに生きていきたいと思うようになりました。その延長に今のぷかぷかがあります。
みんな社会に合わせつつも、どこかこの社会に息苦しさを感じています。だから、ぷかぷかに来て、彼らの自由な振る舞いに、救いのようなものを感じたのだと思います。
「なんて自由なんだ」
と。社会に合わせることで忘れていた「自由に生きることの大切さ」を、ぷかぷかさんたちの自由な振る舞いに出会う中で思い出したのだと思います。ちょっとだけ自分を取り戻す時間です。
ぷかぷかが、自分にとっても大事な場所であることが、だんだん見えてきます。
♪ 歌が生まれ、人は踊り出し、物語が生まれる ♪ 「広場」にぷかぷかはいつの間にかなっていました。ぷかぷかは、障がいのある人にとってはもちろん、地域の人たちにとっても大切な場所になっていたのです。
これが「新しい福祉文化」です。障がいのある人たちが、社会に合わせるのではなく、自分らしく生きることで生まれた「新しい福祉文化」なのです。それはみんなにとって大切な「広場」を作ります。