先日紹介した「うちのぷかぷかさん」のお母さん浅川さんがぷかぷかのことを、とても新鮮な言葉で書いています。
浅川さんの書いているぷかぷかは、はじめからこんな雰囲気のぷかぷかにしようって考えてできたのではありません。
ぷかぷかさんと一緒に毎日パンを作ったり、料理をしたり、焼き菓子を作ったり、アート作品を作ったり、どうでもいい話をだらだらしたり、歌を一緒に歌ったり、居眠りしたりしているうちに自然にできあがったものです。
ですから、やっぱりこの雰囲気はぷかぷかさんたちが作ったものです。もちろん現場のスタッフも一緒に作っています。でも、現場スタッフだけでは、この雰囲気は作れないのです。ぷかぷかさんがいるからこそ生まれる雰囲気なのです。
ここにぷかぷかさんが社会に必要な理由があります。
社会にはたくさんのぷかぷかさんがいます。社会全体が、その気になれば、ぷかぷかのような雰囲気はあちこちで作り出せると思うのです。
コツは、ぷかぷかさんたちとフラットな関係を築くことです。ここがすごく大事です。
映画『Secret of Pukapuka』の中で、近所のオーヤさんが、
「前はぷかぷかさんを上から目線で見てたかもしれないけど、ぷかぷかさんとおつきあいするようになってから、自分の方がえらいと思わなくなりました」
というようなことをおっしゃってますが、まさにこの感覚です。フラットな関係はここから生まれます。誰かに言われてやるのではなく、自分からそのことに気がつくこと。
ぷかぷかさんを前にすると、つい
「自分の方がえらい」「自分の方ができる」
と、つい思ってしまいます。でも、ちゃんとおつきあいすれば、そんなことはないことはすぐにわかります。
ぷかぷかさんといっしょにアートのワークショップをやったとき、
「自由に線を描いてみよう」
と進行役が言いました。ぷかぷかさんも子どもたちもどんどん線を描いていきます。
そんな中で
「線を自由に描く、というたったそれだけのことが自分にはできないことがわかりました」
とおっしゃった方がいました。
そうやって、たくさんの人が
「自分の方がえらいと思わない」
ようになれば、ぷかぷかのような雰囲気の場所はあちこちにできるのだろうと思います。
もう40年ほど昔、瀬谷区にあった生活クラブのお店の駐車場で「あおぞら市」というのがありました。私は養護学校の生徒たちと地域の人たちで手打ちうどんのお店をやりました。みんなで手打ちうどんを作って販売したのですが、これが大人気でした。それだけでなく、しばらくすると、
「ここに来ると、なんだかホッとする」
という声が出始めました。
今のぷかぷかと同じ雰囲気が、「あおぞら市」に生まれたのです。
「ぷかぷかさんがいる」「だれも自分の方がえらいと思わない」
の二つの条件がそろえば、ほっこりあたたかで、自由な雰囲気が、どこでも生まれるのです。
(昔書いた本『街角のパフォーマンス』)