金沢の水野スウさんが自宅で開いている「紅茶の時間」で第一期演劇ワークショップ記録映画を上映するというので日帰りで行ってきました。
玄関がすごくよかったです。木の表札、木の「紅茶の時間」がすばらしくいい。
カランカランとベルを鳴らして入るのですが、紅茶の時間が始まると鳴らさずに入って下さい、という札になります。
シンプルでおいしい昼食。お皿がすばらしかったです。
スウさんと旦那さん
20人くらいのこぢんまりした上映会でしたが、とても密度の濃い話ができたと思います。映画もよかったけど、やっぱりタカサキさんに直接会って話が聞けたのがすごくよかったと何人もの人に言われ、出かけてよかったと思いました。100人とか200人の上映会では、こんな密度の濃い話はできなかったと思います。
80歳に近いお姉さんがいる方は、映画を見終わったあと、姉がこんな所にいたら、もっと幸せな人生を送れたんじゃないか、と涙を流しながら語っていました。お姉さんは知的障がいがあって、施設に預けているそうですが、施設長に、「何にもできないのに、手ばかりかかる」などとひどいことをいわれ続けたそうです。福祉施設なのに、何もできないことをいうのはおかしいのではないかと、言ったそうですが、聞き入れてくれなかったそうです。だからお姉さんは、ずっとそういうことを言われ続け、本当に辛い人生を送ってきました、と涙を流しながら語っていました。映画を見て、姉がぷかぷかのような所にいたら、全く違う人生だったと思います、と。
ぷかぷかが始まって2年目くらいに、以前作業所にいたぷかぷかさんが介護認定調査の際「最近、仕事はどうですか」というケースワーカーさんの問いに
「以前は毎日うつむいていましたが、今はまっすぐ前を向いて生きています」
と答えたことがありました。ぷかぷかの仕事がそんな言葉で語るくらい彼女の人生を支えていたようです。
ぷかぷかに活気があるのは、みんながそんなそんな思いで働いて、みんなの生き生きとした人生が渦巻いているからだと思います。
80歳に近いお姉さんのいる方は、映画を見ながら、そのことを感じられたのだろうと思います。
お姉さんは昔から絵が好きで、私たちには思いつかないような面白い絵を描くとおっしゃっていました。だったら、その絵を何枚か写真に撮っておくって下さい、とお願いしました。ぷかぷかはぷかぷかさん達の絵を社会に出していくことを一生懸命やっているので、ひょっとしたら社会に出していく一枚になるかも知れません。ずっと施設の閉じた世界に生きてきたお姉さんの絵が社会に出て行って、たくさんの人の心を癒やすようなことになったら、お姉さんの人生が、今までと全く違うものになるかも知れません。辛いことばかり多かった人生が、前に向かってゆっくりと動き始めます。
水野さんご夫婦が、そろって「ぷかぷかは13条そのままですね」とおっしゃっていました。13条は憲法13条です。
【第13条】
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
水野さんの娘さんが13条と出会ったときの話をこんなふうに書いています。
ーはじめて13条を読んだとき、「個人として尊重」と「幸福追求の権利」という言葉が真っ先に飛び込んできました。個の人、ってことは…たった一人の人として、ほかの誰ともとりかえのきかない存在として、大切にされる、っていうこと?なんかこれって『ほめ言葉のシャワー』の最後に書いたこととつながっている気がするよ。
しかも「すべて」だから、社会の役に立っている人だけ、テストの点のいい人だけ、GDP国内総生産あげるのに貢献している人だけ、とかそういう条件一切なしの、どんな人も、だ。ってことは、私も?
何も立派なことのできていない自分が恥ずかしくて、幸せになる資格なんかないって、私が私を責めてたときも、ずっと13条は「ううん、そうじゃないよ、何かができる/できないは関係ない。たった一人のあなた、ただそれだけで、大切な存在なんだよ。生きて幸せを追い求めていいんだよ」って言い続けてたの?憲法って、もしかして、私の味方…
『たいわ けんぽう BOOK」
(この本はぷかぷかにも置いてます。アート屋わんど魚住まで)
80歳に近いお姉さんに「何かができる/できないは関係ない。たった一人のあなた、ただそれだけで、大切な存在なんだよ。生きて幸せを追い求めていいんだよ」っていう環境があれば、お姉さんの人生は全く違ったものになってたはず。ぷかぷかは期せずして13条やってました。みんなでぜひ13条やりましょう。そうすればお互い、もっと生きやすい社会になると思います。
今朝アップされた水野スウさんのFacebookにはこんなことが書かれていました。
10日のとくべつ紅茶。ぷかぷかさんの約半年におよぶ演劇ワークショップの映像記録「もうひとつの 森は生きている ぷかぷか版」の上映+ぷかぷか村長こと理事長の高崎さんのおはなし会。
急なよびかけに、しかも、ほとんどのひとが、ぷかぷかって何?誰?状態できてくれたにもかかわらず(笑)、最後は、ほんとにきてよかった〜〜!!って顔になってたのがうれしかったな。
2時間におよぶドキュメントのあちこちで、おもわずあったかい笑い声になんども包まれる。私が一人でDVD見たときに感じたしあわせ感を、きてくれた20人弱のひとたちと共有する。
養護学校の先生を30数年してた高崎さん。先生になりたてのころはとまどうことばかりで、毎日おろおろしながら、はだかで彼らとむきあうしかなかったこと。そのおかげで、どんどん自分の規範が外され、高崎さん自身が自由になっていったこと。退職後も、障がいをもつ彼らと一緒に生きていく場をつくりたくて、パン屋さんぷかぷかをすぐにはじめたこと。
映像なしに、言葉だけできいてたら、ほんとかな、って思う人もいるかもしれない。でもワークショップ映像を見た後は、その言葉にいっぱいうなずける。参加した人同士で「ぷかぷかさんといるとなんで楽しいんだろうね〜」「なんでだろね〜〜」といいあう映像場面をみながら一緒に、うん、うん、してる自分がいるから。
ぷかぷかパン屋さんをはじめる時、お店だからやっぱり接客を学んだ方がよかろうと、その方面の講師にきてもらって練習した。でも、講師のいう通りにしてるぷかぷかさんたち、気色悪かった、痛々しかった、って。マニュアル通りにするってことは、自分を殺さなきゃいけないことだから。そこで、最低限、お客さんが不愉快でなければいい、とリスク100%ではじめたけど、逆にそれが新鮮、一所懸命さが伝わってきて、ぷかぷかさんのファンが生まれた。意図したんでなく、そうなった。
福祉施設は「支援」をしたがる。それって上から目線でしょ。ぷかぷかさんたちには、できないこといっぱいあるけど、彼らといるといろんなおもしろいことが起きる。彼らといる時間はここちいい。ありのままの自分でいられる。
彼らがいることでぼくら自由になれる、ほっとする。ぷかぷかさんに、支援されてるのは僕の方だ。彼らの存在がまちを耕すという働きをしている。まちを豊かにしている。そういうふうに人をみていくと世界がかわっていく。だから、彼らと一緒にいきてったほうが得なんです、と高崎さん。
映画の後は、高崎さんが話すというより、終始、参加した人たちとのきもちキャッチボールタイム。心をひらいて自分の思いを話すと、高崎さんがうけとめて、ときにはその人に必要な具体的なヒントも提示してくれる。
ぷかぷかさんの時間に、私はなんどもクッキングハウスを重ねてた。クッキングハウスにいくと、なんであんなにほっとするんだろう、いごこちいいんだろう。それは一人一人が、なにができるできないのdoで測られずに、存在そのもののbeで大切にされてるからだ、って思ってるけど、それと共通のもの、13条的な場の意味をぷかぷかさんにも感じた。上からじゃない、平らだからこそ、ひとりひとりのもってるよさが引き出されてくる、ってこと、この日のpukapukaな時間でもいっぱい感じたよ。
水野さん、素敵な場を作っていただき、ありがとうございました。