ぷかぷか日記

彼らに、私たち救われてるのかも

 ぷかぷかは「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がいいよ」「その方がトクだよ」と言い続け、そのことを実感できる関係を様々な形で作って来ました。そのおかげでぷかぷかのまわりは、障がいのある人はいて当たり前であり、むしろいた方がいいと思う人がたくさんいます。彼らとの関係も、上から目線で何かやってあげるとか支援するとかではなく、どこまでも「一緒に生きていくといいよね」「一緒にいると心ぷかぷかだよね」という関係です。

 

 ところが周りを見渡すと、全く違う関係が広がっています。すぐ近くで障がいのある人たちのグループホーム反対の声が上がったことがあります。

「障害者は犯罪を犯す。だから彼らのグループホームができるととても不安。地域社会の治安が悪くなる」

といった声です。障がいのある人たちとおつきあいしている人であれば、こんなふうには思いません。相手を知らないということが、ここまでひどい偏見、思い込みを生むのだと思いました。でもその偏見、思い込みが、場合によってはグループホーム建設の計画をつぶすほどの力を持つこともあります。

 

 どうしてこういったことが起こるのか。それは小さな時から障がいのある人たちと健常といわれる人たちが分けられていることが大きな原因だと思います。障がいのある人たちのことを知る機会がほとんどないのです。

 障がいのある子ども達はたいてい特別支援学校、特別支援級に振り分けられ、よほど希望しないと普通級には行けません。時々健常児との交流が行われたりはしますが、日々の暮らしの中でのふつうのおつきあいはほとんどありません。

 いろんな人とおつきあいをする中で人間は豊かになっていきます。一番人間ができていく子どもの頃に障がいのある子ども達とおつきあいする機会がない、というのは人間形成の上ですごくもったいないと思います。いろんなことができなくても、その子のそばにいると、なぜかあたたかな気持ちになれること。これはどうしてなんだろうって考えることは、子どもを豊かにします。子ども達がいずれ社会を担うことを考えれば、これは社会的な損失といってもいいくらいです。

 学校を卒業してからも、一般就労して社会に出られるのは、ごく一部のいろいろ仕事のできる人たちです。障がいのある人たちの多くは、生活支援とか就労支援、地域作業所、特例子会社など、福祉の世界に入り、やはり健常といわれる人たちと交わる機会はほとんどありません。

 

 同じ社会にいながら、障がいのある人たちとおつきあいする機会がない、というのは、すごくもったいない話だと思います。障がいのある人たちのことを知れば、その分人間の幅が広がり、社会が豊かになります。いろんな人がいること、そしてお互いおつきあいすること、それが社会の豊かさです。いろんな人がいても、それが分けられた状態では、豊かさは生まれません。

 先に紹介した障がいのある人たちのグループホーム建設反対の声は、障がいのある人達を地域社会から排除します。「知らない」ということが力を持つと、知らない人たちを排除してしまうことになるのです。これは双方にとって、とても不幸なことです。

 グループホーム建設反対の声でなくても、障がいのある人たちのことを知らないと、「障害者はなんとなくいや」「こわい」「近寄りたくない」「社会のお荷物」「生産性が落ちる」などと思ってしまい、様々な形で彼らを私たちのまわりの社会から排除してしまいます。 

 誰かを排除すると、その分、社会の幅が狭くなり、お互い窮屈な社会になります。

 私が私らしくある、という当たり前のことが、とてもやりにくくなり、息苦しい社会になります。社会の許容量が狭くなると、社会はだんだんやせこけてきます。

 

 ぷかぷかに来るとホッとする、というお客さんが多いのは、そういった社会を反映しているのだと思います。

 ぷかぷかは就労支援の事業所です。一般企業で働けない障がいのある人たちの働く場です。そういう意味では、障がいのある人たちと健常者を分ける仕組みの一つになっています。 

 でも、お客さんはぷかぷかに来るとホッとする、といいます。どうしてなのでしょう。

 それは多分、ぷかぷかさん達がありのままの自分を出して働いているからだと思います。ぷかぷかでは、彼らは社会にあわせるために自分を押し殺してしまうのではなく、ありのままの自分で働いています。ああしなければいけない、こうしなければだめ、といった「社会の規範」に縛られることなく、それぞれの自分らしさを存分に出して働いています。

 そのことがぷかぷかの自由な空気感を生み出しています。その空気感の中で、お客さんはホッとした気分を味わうのだと思います。私が私らしくあることの大切さを、ぷかぷかの自由な空気感の中で思い出すのだと思います。

 ホッとした気分の中で、ぷかぷかさん達、つまりは、障がいのある人たちはやっぱり社会にいた方がいいよねって、お客さんたちは多分、思います。

「彼らに、私たち救われてるのかも」

とひょっとしたら思います。

 こんなふうにしてぷかぷかは、障がいのある人たちと健常者と分けられた社会を耕し、

「一緒に生きていくといいよね」

ってみんなが思える社会を作っています。誰にとっても居心地のいい社会です。 

 

 ぷかぷかさん達は日々の仕事(パン屋の仕事、お惣菜屋の仕事、アートの仕事、食堂の仕事、畑の仕事)をしながら、社会を耕し、社会を豊かにする、というすばらしい仕事もしているのです。

 

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