街を耕す会・港北の集まりで『ひいくんのあるく町』を見ました。
ひいくんは知的障がいのある39才のおじさん。毎日ヘルメットを手にひょこたんひょこたんと町を歩いています。歩きながら、町のあちこちでお店のちょっとしたお手伝いをしたり、田んぼで耕耘機を洗うお手伝いをしたり、いろんな人とおしゃべりしたりしています。小さな頃からお父さんがいつも連れて歩いていたそうで、この映画をつくった若い監督も、子どもの頃からひいくんのことは知っていて、頭をなでてもらったりしたそうです。映像の中でも、お祭りで練り歩きながら、乳母車に乗って見物している小さな子どもの足をなでたりしていたので、昔から小さな子どもに優しいのだと思います。
そうやって町の人々の心の中に、ひいくんは「いて当たり前」という存在になっています。いわゆる「障害者」というような存在ではなく、町の人たちにとって、ホッと心のあたたまる、なくてはならない存在になっています。
ひいくんが町をあるくことで、自然にそういった関係ができたところが、この町のおおらかなところかと思いました。
ひいくんのあるく町も、時代の流れの中で、だんだんシャッターを下ろすお店が増えています。それでも、町をひょこたんひょこたん歩き回るひいくんを受け入れるあたたかさ、やさしさは町に残っています。人の住む町の一番大事なところですね。
脳梗塞で倒れ、お店を閉めてしまった人のところへ、近所の人が一日だけお手伝いしてお店を開けに来てくれます。この場所を、近所の人たちがいつでも立ち寄って、くつろげるような場所にしたいね、といった話が持ち上がります。
町はそうやって少しずつ変わっていくようです。その変わり様の中心には、ひいくんを受け止めるあたたかさ、やさしさがあるように思いました。ひいくんが町を歩くことで引き出したあたたかさ、やさしさといってもいいと思います。
みんなでもっともっと町を歩こう。みんなが歩けば、町は変わります。歩くことで希望が生まれます。