ぷかぷかがやってきたことをまとめようと本の原稿を2年ほど前に書いたのですが、新しいことが次々にはじまって、原稿の内容が「ぷかぷかの今」を反映していない気がしていました。で、今の思いに沿って、あらためて書き直すことにしました。そのまえがきをとりあえず書いてみました。最近書いたブログを寄せ集めたような感じですが、ま、こんな方向で書き直してみようというわけです。自分を奮い立たせるまえがきです。
オペラシアターこんにゃく座に「あの広場の歌」という歌があります。とても元気の出る歌です。
… 歌が生まれ 人は踊り出し
物語がはじまる あの広場がここに…
「ぷかぷか」を街の中に立ち上げて7年。「ぷかぷか」はこの歌にある広場を街の中につくって来たんじゃないか、と最近思います。
「ぷかぷか」は障がいのある人たちの就労支援をやっている福祉事業所ですが、どういうわけか「ぷかぷか」は街の人たちを元気にしています。楽しくしています。ここからたくさんの物語がはじまりました。
ぷかぷかに来るとなんだかホッとするとみんないいます。少し自分を取り戻します。楽しそうに働いている「ぷかぷかさん」を見ると、元気になります。(「ぷかぷかさん」は「ぷかぷか」で働く障がいのある人たちのことです。障害者という言葉は彼らを丸ごと否定するような言葉なので、「ぷかぷかさん」とやさしい響きのする言葉で呼んでいます。)
だんだんぷかぷかさんが好きになります。ファンになります。よくある福祉事業所を応援する、という感じではありません。どこまでもぷかぷかさんが好きな「ぷかぷかのファン」なのです。
ぷかぷかさんは日々街を耕し、街を豊かにしています。なんとなく嫌われ、社会のお荷物だの、社会の負担と言われている彼らが、どうして街を耕し、街を豊かにする存在になったのか。どうして彼らの働く「ぷかぷか」が街の広場のような存在になったのか。そのことをこの本では書きたいと思います。
2016年7月26日、神奈川県相模原市にある「津久井やまゆり園」で障がいのある人たち19名が問答無用に殺されるという悲惨な事件がありました。事件の犯人は「障害者はいない方がいい」「障害者は不幸しか生まない」などといいました。これは犯人の特異性から生まれた言葉なのでしょうか。「障害者はなんとなくいや」「障害者とはおつきあいしたくない」「障害者は社会のお荷物」「社会の負担」「効率が落ちる」「何考えているのかわからない」「怖い」といった言葉は社会全般を覆っています。ですから障害者を見る目線の根っこでは犯人とつながっているのだと思います。一線を越えるかどうかの差だけです。
事件があまりにもすさまじくて、何から手をつけていいのかわからないほどでした。そんな中にあって、「ぷかぷかさんが好き!」というファンがいることは、大きな希望でした。ここから事件を超える社会を作っていける、そう思いました。
ぷかぷかのファンの中には会費1万円のプレミアム会員を作ってはどうかと提案する人たちもいます。商品を買ったときの割引サービスではなく、ぷかぷかさんと一緒に旅行に行ったりする特権が欲しいといいます。1万円払って、旅費も自分で払ってぷかぷかさんたちと一緒に旅行に行きたいといいます。ふだんよりも濃厚なおつきあいがしたい、と。
相模原障害者殺傷事件が生まれるような社会にあって、こんな人たちが現れたことはほとんど奇跡に近いと思います。大きな大きな希望です。そんな人たちがどうして生まれたのか、それをこの本では書いていきたいと思います。