ぷかぷかを立ち上げる前、横浜市の空き店舗活性化事業に応募しました。書類審査が通り、ヒアリングも通り、最後のプレゼンテーションをしたときの原稿を、たまたま読み返していて、「彼らのおかげで、人として立つことができる」という言葉が妙にしみました。
昔、私がまだ学生の頃、胎児性水俣病の子どもを抱きながら、『この子は宝子ばい』と言っていたお母さんがいました。でも、その『宝子』の意味がどうしてもわかりませんでした。重い障がいをもった子が、どうして『宝子』なのか、よくわからなかったのです。
でも、障がいのある子どもたちと30年付き合ってきた今、『宝子』という言葉に込めたお母さんの思いが痛いほどわかります。ぎすぎすした息苦しい今の世の中にあって、ただそこにいるだけで心安らぐような雰囲気を作ってくれる彼らの存在は、やはり『宝』といっていい存在だと思うのです。彼らがそばにいるおかげで、私たちは人としてそこに立つことができるのだと思います。
かつてあったおおらかさがなくなり、どんどん息苦しくなっていく今の社会には、そういう『宝』こそが必要なんじゃないか、私はそんな風に思います。
街の人たちに、そんな『宝』のような存在に出会ってほしい。彼らと一緒に街の中でパン屋を始める理由のいちばん根っこにはそんな思いがあります。
「彼らがそばにいるおかげで、私たちは人としてそこに立つことができる」
という言葉はぷかぷかの立ち位置を明確に示していると思いました。「支援」などという薄っぺらなものではなく、彼らのおかげで人として立つことができる、という豊かな関係性。