毎日新聞の「記者の目」にぷかぷかの話が載っています。
https://mainichi.jp/articles/20170824/ddm/005/070/004000c?fm=mnm
短い文章でうまくまとめているなぁ、と感心しました。
たとえばこんなことが書いてあります。
ぷかぷかさんたちは何を生み出しているのだろうか。
常連客に魅力を尋ねると「普通の店では味わえない、パンを買うだけじゃない何かがある」「彼らと話していると癒やされる」と言う。近くの主婦、大家邦子さん(44)は幼い娘を連れて通った。「ぷかぷかさんたちが話しかけたり、子どもと遊んでくれたり。スタッフが優しく見守る雰囲気もよく、私も受け入れてもらった気がして居場所になった」と話す。
これくらいはよくある話。ぷかぷかさんの存在が人生を変えた話はすごいと思いました。
ぷかぷかさんの存在が人生を変えた夫婦もいる。主婦の金子美香さん(29)は有名大学を卒業後、就職3年目に心身のバランスを崩して退職した。「勉強はできたけど、人生の目的がわからなかった」。症状は落ち着いたが孤独な子育てがつらく地元の関西に戻ろうと思っていた頃、店に来た。ありのままに生きる彼らの姿に「人の期待を想像して動けなくなっていた自分の生き方を見直したい」と店の近くに住み続けることを決めた。研究者から塾講師に転じた夫の裕さん(33)も「彼らみたいに自由に生きたい」と教育事業で独立する決意を後押しされたという。
記者自身もぷかぷかに通ううちに変わったといいます。
一見、コミュニケーションを取るのが難しそうな人には、どう接すればよいか分からず目をそらす人は少なくないだろう。私もその一人だった。理由は障害者と接する機会がないからだ。しかし、店に通ううち、ぷかぷかさんの笑顔、ちょっと風変わりな楽しい会話や動き、そしてお互いを思いやり大切にする姿、それを見守るお店の空気感に引き込まれた。やまゆり園の元職員だった被告は「障害者には生きる価値がない」と言ったが、私は、なんて価値のある人たちだろうと感じた。
ぷかぷかが大事にしている「お互いの出会い」
非生産的なものを切り捨てる社会は、健常者たちをも息苦しくしている。一方で、障害者の芸術作品が評価され、認知症の人たちが働く「注文をまちがえる料理店」が話題になるなど「できないことを楽しみ」、障害者の作り出す作品の魅力を理解する人たちは存在する。能力主義とは違うものに価値を見いだし、それが豊かさをもたらすと実感している人は少なくない。ならば後は、お互いがもっと出会うだけではないのか。
事件を超えるにはどうしたらいいのか。
悲しい事件が起きた時だけ「命の大切さ」や「差別反対」を訴えるのは、もうやめよう。堅苦しい議論は一旦脇に置き、彼らの深い世界に歩み寄ってみてはどうだろう。電車で乗り合わせたら温かい目で見守る、町にある福祉作業所をのぞいてみる。そして福祉現場の人は積極的に彼らの魅力を発信して出会いの場を作ってほしい。日常の中で、一人一人が名前と顔がある人として出会い、関係を築いていくことだけが、事件を超える社会を作ることにつながるはずだ。