かずまくんが家出した、とお母さんから連絡が入りました。かずま君は自閉症で多動の傾向があります。目を離すと、どこへ行くかわからない怖さがあります。
土曜日におじいちゃんのお家へ行きました。
久しぶりに来たのにお兄ちゃんのゲームがやりたくて、「おやつもいらない!ゲームやりたい!」とひつこく言うので、少し強く怒ったらスネてしまいました。
しばらく放っておいたら自分のリュックを背負って来て
「ぼく いえでしようと思って」
はぁ… 家出ですか。
「家出したいの?もうお母さんと会えなくなるけど、いいの?」
「うん」
「お外暑いよ。お茶もないよ」
「うん」
意思はかたく、すでに靴を履いています。
仕方ない。
行ってらっしゃいませ と見送り、心配した長男とすぐにコッソリ追跡することにしました。
歩き方に迷いは無く、ズンズン歩いて行きます。
私と長男は探偵さながら電柱や車のかげに隠れ、汗だくになりながら、見失わないように追いかけました。
コンビニ前の赤信号で止まり、「ちゃんと信号で止まってるわー」と感心していると、突如クルッとひるがえし、バッチリかずまに見つかってしまいました。
かずまは、あちゃー‼︎と慌てた私に近づき
「ぼく、いえでやめようと思って。お母さんとなかなおりしたいんだよ」
「帰ってきてくれるの?よかった。かずまがいないとみんなさみしいから。じゃあ 仲直りだね」
「うん。いえでして ごめんなさい」
帰り道、心配で見にきたおじいちゃんが「おかえり」と言ってくれ、手を繋いで帰りました。
帰るとおばあちゃんが何事もなかったように「かずま君おかえりなさい」と出迎えてくれ、いつの間にか先に戻っていた長男が「冷たい水飲む?」と声をかけてくれたりして。
これまた普通に「ただいまー」と答えるかずまにトホホとなりつつ、みんなの優しさに少しジーンとしました。
時間にしてわずか15分
かずまの大冒険でした。
それにしても、家出なんかどこで覚えたのか。
お母さんからメールが来て、え〜っ!ってちょっとびっくりしたのですが、お母さんのうまい対応で、心あたたまる物語に収まりました。こういう物語に収まるかどうかは、お母さんのセンスひとつだと思います。
かずま君とお母さん、ステキな物語をありがとう!