古いパソコンの中に養護学校にいるときに作った芝居の台本が見つかりました。高等部2年の時のものです。高等部2年生は沖縄に修学旅行に行きます。それで沖縄をテーマにした芝居をやりたいと思っていました。
1年前に沖縄に修学旅行の下見に行きました。旅行の下見と同時に、芝居の手がかりも探しました。読谷村の名もない小さな公園で、すばらしいガジュマルの木を見つけました。惚れ惚れするほどの枝振りで、ここから芝居を始めようと、そのとき思いました。
ガジュマルの木の唄とそのガジュマルの木にすんでいるキジムナーの唄から芝居がはじまります。
沖縄がテーマですから、当然沖縄で戦争があったことも入ります。どんな風にそのことを入れるかは、かなり悩みました。ガジュマルの木はその戦争を見ています。キジムナーといっしょに何らかの形で戦争に絡みます。
悩みながら作った台本です。今、読んでもいい台本だと思います。養護学校でも、その気になればこれくらいの芝居ができたのです。
芝居の最後の方で兵隊が出てきます。なんともいえないおかしい兵隊でした。軍隊調でにピシッと歩くはずだったのですが、彼らがやると、なんともおかしい雰囲気になるのです。でも彼らのその雰囲気が、ヘタするとすごく重い雰囲気になってしまう場面を救ってくれました。これは演出では絶対できないことでした。そこにこそ、彼らがやることの意味があったように思います。あの兵隊達のおかげで、いい芝居になったと思っています。
ちょっと長いですが、台本ですからすぐに読めます。
ガジュマルの木とキジムナー
2008年学習発表会 高等部二年台本
舞台左下からガジュマルの木たちがケチャをたたきながら舞台に上がる。
♪ わしは ガジュマルの木
おじいさんの おじいさんの
そのまたおじいさんが まだわかかったころから
わしは ずっと ここに こうやって
えだをひろげてたっている
あめのひも かぜのひも もちろんはれのひも
ここにこうやって たっている
そして えだのかげには きじむなー
ガジュマルの木たちは舞台左袖へ引っ込む。
キジムナーたち、鈴を鳴らしながら舞台右下から元気よく登場。
踊りながら…
♪ おれは きじむなー
ふるい おおきな がじゅまるのきが
おれの すみか
あかるいうちは いちにちじゅう ひるね
よるになると ひゅわ~んと どこかへ とんでゆく
ひゅわ~ん ひゅわ~んと かぜにのって とんでゆく
さあ こんやは どこへいこうか なぁ ひゅわ~~ん
キジムナー① 「さぁ、こんやはどこへいこうか。」
キジムナー② 「おれたちの友達の小さな魚達をとっていったヤツがいるぞ。」
キジムナー③ 「読谷村のモモコとヨシコだ。」
キジムナー④ 「よし、しかえしにいこう。」
キジムナー⑤ 「病気のお母さんに魚を食べさせたらしいぞ。」
キジムナー⑥ 「でもおれたちの友達をくっちまったんだからしかえしだ!」
キジムナーたち「そうだ、そうだ」
キジムナー⑦ 「ハブを持っていって放り込んでやろうぜ。」
キジムナー⑧ 「よし、いこう!」
キジムナーたち ♪ひゅわ〜ん ひゅわ〜ん ひゅわ〜ん
ひゅわ〜ん ひゅわ〜ん ひゅわ〜ん
ひゅわ~んと飛びながら舞台を一周した後、上手に引っ込む。
暗転
舞台下手側にモモコとヨシコの家。
病気の母が横になっている。
モモコ 「お母さん、これを食べて早く元気になって。」
母 「ああ、このさかな、おいしいね、」
ヨシコ 「母さんがよろこんでくれて、すごくうれしい。」
観客のほうを向いて
モモコ 「私のとうさんは 五年前、おおしけの日に 海に出たまま
帰ってこなかった。」
ヨシコ 「それ以来、村の人たちの仕事を手伝って食べ物をもらい、
母さんをやしなってきた。」
上手側からキジムナー、ハブを持って登場。壁越しに歌を聴く。
モモコ、ヨシコ ♪ かあさんがうえて とうさんがそだてた ちいさなき
しろいはなをさかせたよ
かあさんにだかれて とうさんにうたってもらった
あのうたを わたしたちはおぼえているよ
キジムナー⑨ 「う〜、あの歌を聴いたら、なんだか胸がしくしくするなぁ。」
キジムナー⑩ 「俺は胸がきゅ〜んとなっちゃったよ。」
キジムナー① 「でも、ここまで来たんだから、とにかくハブを投げ込もう。」
キジムナーたち 「せーの そら!」
ハブを投げ込んだとたん、花に変わる。
キジムナー② 「やや、どうしたんだ」
キジムナー③ 「ハブが花に変わったぞ!」
キジムナー④ 「えー!どうして?」
ガジュマルの木の精たち、下手袖から登場し、舞台の前へ並んで歌う。
♪ キジムナーは やさしいこころを もっている
やさしいこころを もっている
それが はぶを 花に かえた
花に か え た
暗転
キジムナーたち、舞台右下へ。
モモコとヨシコの家、撤去。
ガジュマルの木の精たち、舞台の真中に立つ。
ガジュマルの木の精① 「六十年前、沖縄は戦争に巻き込まれた。」
ガジュマルの木の精② 「私たちは、それを見た。」
ガジュマルの木の精③ 「たくさんの人たちが殺された。」
ガジュマルの木の精④ 「子どもたちも殺された。」
ガジュマルの木の精⑤ 「頭が吹き飛び、」
ガジュマルの木の精⑥ 「手が引きちぎれ」、
ガジュマルの木の精⑦ 「足がもぎ取られた。」
ガジュマルの木の精たち、下手、袖に引っ込む。
大砲、上手に設置。
兵士たち、音楽に乗って上手より登場、舞台を一周。大砲の前に立つ。
隊長 「よし、明日の朝、明るくなったら敵の村に向かって
大砲を撃つぞ。夜が明けるまで仮眠だ。」
兵士たち 「さぁ、寝よう寝よう」
音楽に乗って上手に退場。
暗転
タローとジローの家を下手側に設置。
大砲が向いている村では子どもたちがお母さんとお話ししている。
タロー 「ねぇ、お母さん。明日の朝、明るくなったら虫を
とりに行こうよ。」
ジロー 「いや、ザリガニがいい。明日は絶対にザリガニだ!」
タロー 「虫がいい!」
ジロー 「ザリガニ!」
お母さん 「わかりましたよ。じゃあ、両方行きましょう。」
タロー 「やったー!じゃあ、お母さんおやすみ!」
ジロー 「明日の朝、楽しみだなぁ。おやすみ!」
お母さん 「おやすみ!」
暗転
家、撤去。
ガジュマルの木の精たち、舞台中央に立っている。
ガジュマルの木の精① 「まずいぞ」
ガジュマルの木の精② 「あの大砲は村の方を向いている。」
ガジュマルの木の精③ 「ということは、夜が明けると大砲の弾が飛んできて、」
ガジュマルの木の精④ 「あの幸せな親子は吹き飛ばされてしまうぞ。」
ガジュマルの木の精⑤ 「ええ!? どうすればいいんだ!」
ガジュマルの木の精⑥ 「ああ、困った。」
ガジュマルの木の精⑦ 「ああ、困った。」
う〜ん、とみんな考え込む。
ガジュマルの木の精⑧ 「そうだ、おれたちの木に住んでいるキジムナーに
頼んでみよう。」
ガジュマルの木の精⑨ 「キジムナーたち。ちょっと集まってくれ。」
キジムナーたち、舞台下から駆け上がる。
ガジュマルの木の精⑩ 「相談だがなあ。」
キジムナーたち、ガジュマルの木の精のまわりに集まり、話を聞いてうなずく。
ひゅわ~んとどこかへ飛んでいく。
ガジュマルの木の精たちは、それを見送った後下手に退場。
暗転
大砲、舞台中央に設置。
ひゅわ~んとキジムナーたち飛びながら登場し、
大砲のまわりを、おまじないをかけるようにまわる。
ガジュマルの木の精たち、下手より登場。
キジムナーたちを囲むように歌う。
♪ キジムナーは やさしいこころを もっている
やさしいこころを もっている
それが はぶを 花に かえた
花に か え た
暗転
夜が明けて、兵隊たちが上手より出てくる。
隊長 「よし、あの村に向かって撃つぞ。構え」、
兵士たち、おおげさに耳をふさぐ。
隊長 「撃て!」
丸い弾がゆっくりと飛び出し、それが花に変わる
バックで花が一斉に開く。5個、6個、7個…花、花、花で埋まる。
歌が始まる。
それに合わせて、周りから花たちが舞台に集まってくる。
♪ キジムナーは やさしいこころを もっている
やさしいこころを もっている
それが 武器を 花に かえた
花に か え た
花が咲きそろったところで全員で歌。
♪ キジムナーは やさしいこころを もっている
やさしいこころを もっている
それが 武器を 花に かえた
花に か え た
一瞬暗転
フィナーレ
楽しく、思いっきり元気に踊りながら
♪ おれは きじむなー
ふるい おおきな がじゅまるのきが
おれの すみか
あかるいうちは いちにちじゅう ひるね
よるになると ひゅわ~んと どこかへ とんでゆく
ひゅわ~ん ひゅわ~んと かぜにのって とんでゆく
さあ こんやは どこへいこうか なぁ ひゅわ~~ん
おしまい!