昨夜二ツ橋大学講座「障がい者が働くということ〜」に参加してきました。
いろんな話が出ておもしろい集まりでしたが、「障がい者雇用率」の話題については、もう少し話題を掘り下げてもよかった気がします。
障害者雇用率制度とは(厚生労働省)
身体障害者及び知的障害者について、一般労働者と同じ水準 において常用労働者となり得る機会を与えることとし、常用労 働者の数に対する割合(障害者雇用率)を設定し、事業主等に 障害者雇用率達成義務を課すことにより、それを保障するもの である。
一般企業においては2%、国、地方公共団体においては2.3%の障がい者雇用率が求められています。
この制度の致命的欠陥は、なぜ障害者を雇用するのか、という根本的な理由の説明がないことです。説明がないので、ただ雇用率を達成するために大きな企業は「特例子会社」といういびつな形で障害者を雇用し、ペナルティを免れています。
「特例子会社」は親会社とは別の会社なので、本当は障害者を雇用していることにはなりません。でも制度的に、「特例子会社」での障害者雇用数を親会社のものとしてカウントしていい、となっているので、こんないびつな形が通ってしまうのです。
これは親会社にとっても、せっかくの障害者雇用の機会を逃して、すごく損をしているのではないかと私は思います。もったいないです、これは。
障害者を雇用するとどうなるか。企業の現場がそのことで豊かになります。いろいろできないこともあるので、いろんなトラブルもあります。でも、そのトラブルを現場が抱え込むことで、現場はトラブルが起こる前よりも豊かになります。
なによりも様々なトラブルを超える、予想だにしなかった豊かさを障がいのある人たちは現場にもたらします。
昨日の集まりを主催した杉浦さんは昔八百屋で働いていました。その八百屋に養護学校の生徒を送り込んだことがあります。
「いろいろできんことが多いけど、絶対にいいことがあるから」
と、ほとんど無理矢理卒業生を送り込みました。「絶対にいいことがあるから」といわれても杉浦さんは「いいことがある」の意味が、最初はよくわからなかったようです。
でもてっちゃん(養護学校の卒業生)を雇用して、しばらくたってから、「いいことがある」の意味が納得できたといいます。
てっちゃんがいると毎日がすごく楽しいのです。笑いが絶えません。心が安らぎます。お客さんにもファンができます。だんだんてっちゃんがいない八百屋なんてあり得ない、というふうにまでなったようです。
これが障害者を雇用する理由です。現場を豊かにするのです。もちろん杉浦さん達はいろいろ苦労をしたと思います。計量をまちがえたり、仕事がゆっくりだったり、全くのマイペースだったり、そのためにスタッフ達はイライラしたり…。でも、そういったトラブルこそが、現場に障害者がいることの意味であり、それが現場の人たちに新しい気づきをもたらし、豊かにするのです。
「てっちゃんがいない八百屋なんてあり得ない」という感覚は、それまでの様々な苦労があってようやく手にした感覚だと思います。てっちゃんを雇用してすぐにそんな感覚になることはあり得ないのです。
ぷかぷかで以前、メンバーさんがいなくてもお店を開けていた時期がありました。しんと静まりかえったお店は、なんか嘘みたいでした。お客さんも
「なんだか淋しいわね」「彼らがいないと、ほかのお店に来たみたい」
とおっしゃっていました。
ぷかぷかさんがいない「ぷかぷか」はあり得ない、のです。
障害者雇用率を義務づける前に、なぜ障害者を雇用するのか、その理由を丁寧に説明すべきだと思います。国、地方公共団体においては2.3%の障がい者雇用率が求められています。ならば実際に障害者を雇用してどうなのか、をしっかり語るべきだと思います。