昨日紹介した「注文をまちがえる料理店」の話、 注文をまちがえずに持ってくると、ちょっと残念な気持ちもあったというお客さん。
【女性客】注文どおりでした!ほっとしたけれど、ちょっとザンネンな気も・・・(笑)
昨年の演劇ワークショップ、本番前日のリハーサル、みんなの「生きる」を蹴散らす「むっつり大王」をやっつけるべくショーへーさんはいつもお母さんに電話するように電話口で
♩おひさま〜が りんごの〜 はっぱをとおして ひ〜かる〜♩
と、やさしい歌を歌う予定でした。みんなそのつもりで待っていたのですが、ショーへーさんが歌ったのは、なんと、やっつけるべく「むっつり大王」の暗い歌でした。
♪ つかれ〜た つかれ〜た すっかり つかれ〜た… ♪
みんな「どっひゃ~」って崩れ落ちそうになりましたね、あの時は。誰もが明日の本番、どうなっちゃうのか、マジに心配しました。
ショーへーさんはオウム返しの返事の多い方で、明日はおひさまの歌を歌って下さい、というと、
「はい、わかりました」
と、まじめに返事をするのですが、どこまでわかったのかは当日にならないとわかりません。
そして本番当日、みんなドキドキしながらショーへーさんの歌を待っていました。
「もしもし、お母さん、今日は ♪ おひさま〜が りんごの…」
と、予定通りの歌をちゃんと歌ったのです。本来喜ぶべきことなのですが、「注文をまちがえる料理店」のお客さんのように、なぜか、ちょっと残念な気もしたのです。
あの場にいた人は感想にこんなことを書いていました。
あのキラメキは あそこにいたみんながキュッと感じたのではないでしょうか?リハで感じた、あのキラメキ、又感じたかったな。「どうなっちゃうの?」「誰がどこに導くの?」「じゃあみんな、どこに導かれて行っちゃおうか?」どこに流れつくか、ぷかぷかの醍醐味、見たかった、見せたかったな。
あの「キラメキ」こそが、彼らと一緒にいる理由だと思います。間違いをそんなふうに楽しめる感覚、余裕こそ、大事にしたいと思うのです。
物事は予定されたものから外れたときこそ、わくわくするような、緊張感あふれる新しい物語がはじまります。そういったものをどこまで楽しめるか、ですね。
「注文をまちがえる料理店」のお客さんも、多分、まちがえることで生まれるわくわくするような、新しい物語を待っていたのだと思います。
そしてその物語に「誰もがいまよりもちょっと呼吸のしやすい世界の姿」があるような気がするのです。ハンバーグの注文が「餃子になっちゃったけど、別にいいよね」って。
演劇ワークショップの記録映画、6月17日(土)みどりアートパークで上映します。わくわくするような物語がよく見えます。