ボーイング社が助成金応募団体を募集していたので、エントリーすることにしました。
支援金額がなんと7万ドル〜10万ドルだそうで、ドルで銀行口座に振り込まれるそうです。7万ドルって、いったいいくらなんだと思いながら、でも、なんだかすごい!とわくわくしながら書きました。なんかね、夢があっていいじゃないですか。
プロジェクトの概要
1,目的及びゴール
就労支援施設「ぷかぷか」(パン屋、お惣菜屋、カフェ、アートスタジオ)で働く障がいのある人たちと地域の人たちが一緒に6ヶ月かけて演劇ワークショップ(芝居作り)を行い、できあがった芝居を大きなホールの舞台で発表する。
2,社会のニーズにどのように貢献できるか
2016年7月相模原で重度の障害者19名が殺されるという悲惨な事件が起きた。容疑者は「障害者はいない方がいい」「生きていても意味がない」などと言った。これは容疑者だけの言葉ではなく、社会の多くの人は「障害者はなんとなくいや」「障害者は生産性が低い」「障害者は社会の負担」と考えていて、容疑者と同じようなイメージを障害者に対して持っている。何よりも容疑者はこの社会で生まれ、容疑者の発想はこの社会が育んでいる。だから事件は容疑者の特異性だけの問題ではすまない。社会の何が病んでいるのか、私たちはどうすればいいのか、社会全体で考えていかねばならない問題だと思う。
事件の衝撃が大きすぎて、みんな何をやっていいのかわからないような状態だったと思う。本プロジェクトは、そういった社会のニーズに応えるものとして位置づけられる。
いろんな人がいることが社会の豊かさだとすれば、障害者を排除する社会はその豊かさを失っていく。お互い息苦しい、窮屈な社会になっていくだろう。
そんな中で私たちは「障害者はいた方がいい」「生きている意味がある」と言い続けるだけでなく、みんながそう思えるような事実を作り続けようと思っている。今回の芝居作りもそういった思いの延長線上にある。演劇ワークショップは誰かが台本を書いてそれをみんなでやるような芝居ではない。どこまでも障がいのある人たちと地域の人たちが一緒になって、みんなで創り上げていく芝居。それは障がいのある人が一緒だからこそできる楽しい芝居になる。
一緒に演劇ワークショップをやるとわかるのだが、芝居作りの場において彼らはもう「あれができない、これができない、役に立たない人たち」ではない。彼らがいなければ、芝居作りが成り立たないほどの存在。障がいのある人に向かって「あなたにいて欲しい」「あなたが必要」と素直に思える関係が自然にできる。
障がいのある人たちは「あれができない、これができない」とマイナス評価ばかりが多いのだが、そんな彼らと一緒に新しい芝居を起こすというクリエイティブな関係ができる。しかもそこから生み出されるものは障がいのある人たちを排除しない、社会の幅を広げ、豊かにする「新しい文化」といっていいほどのものだ。
彼らといっしょに創り上げる芝居には、そういった要素がすべて含まれている。芝居を見て一人でも多くの人が「障害者はいた方がいい」「生きている意味がある」というメッセージに共感してくれればと思っている。
本プロジェクトは、相模原障害者殺傷事件を生むような病んだ社会の中で私たちはどうしたらいいのかという重い問いに対するひとつの具体的な回答になると思う。抽象的な、評論家のような無責任な答えではなく、確実に実行できる具体的な回答になる。
3,プロジェクトによる効果及び評価方法
相模原障害者殺傷事件については優生思想云々といった大きな話が語られることが多いが、大事なことは病んだ社会が確実に変わっていくことだと思う。そのためには目の前の一人が変わることをすることが大事。障がいのある人たちと地域の人たちによる演劇ワークショップは、それに参加した人はもちろん、できあがった芝居を見た人も変わっていく。演劇ワークショップは芝居を作っていく過程をすべてホームページ上にアップしている。それを見る人も加えると、相当な数の人がいろんな新しい発見をしている。
http://pukapuka-pan.xsrv.jp/index.php?みんなでワークショップ
演劇ワークショップに参加した「ぷかぷか」のお客さんが、地域の中で目の前の一人を変えることをしていると神奈川新聞で紹介された。
《…そんな大家さんがこの1,2年で始めたことがある。バスの車内や駅で「ぷかぷか」のメンバーに出会ったときのあいさつだ。
「『セノーさん、こんにちは』とか、『テラちゃん、お疲れ』とか。あいさつで自分とメンバーみんなとの関係性を示すことで、怖い存在じゃなくて、人としてつきあえるんだよ、と周囲にわかってもらえたらな、って」
少しずつ、目の前のその一人から少しずつ…。日々の暮らしの中で大家さん自身が変わり、周囲もまた変えようとしている。》
http://pukapuka-pan.hatenablog.com/entry/2017/04/25/152019
ワークショップ参加者の感想
●何にハマったかというと、それはやっぱり、ぷかぷかの皆さんの超個性的で魅力あるキャラクターであり、その皆さんとせつさんぱっつんさんあみちゃんさん、デフパペの方々と一緒に演劇を創作する自由な空気の場でした。
●自分の中に、ぷかぷかの皆さんとの演劇ワークショップで創った自由な空気の場が出来たので、いつも大事に持ち歩こうとおもいます。そうしていつでも、障がいのある人たちとも一緒に生きて行った方が楽しいよ!と発信していこうとおもいました。
●それまでにも障害のある方のパフォーマンスをテレビで見たことはありました。しかしながら僕はそういった映像を見るときどこか居心地の悪さを感じていました。どういう風に見たらよいか分からずとまどってしまうのです。
しかし今回、生で彼らのパフォーマンスを見たとき全く違う印象を受けました。
「なんてカッコいいんだ!」
素直にそう思ったのです。軽い嫉妬すら感じるほどに。その時、彼らを「障害者」として見ていなかったのです。ただ人間が生きることの「凄み」のようなものを感じていました。
身体を大きく揺らしながら朗々と「愛の讃歌」を歌う辻さん、見事な太鼓を披露してくれたアラジン大ちゃん、自分の壁を自分で壊す姿をありありと見せてくれたはっぱオールスターズ、電動車イスの上で身をよじらせながら魂の叫びのようなシャウトを聞かせてくれたラブエロピース。
その後、ぷかぷかメンバーさん達と舞台に立つ上での大きな励みになりました。そしてこの先、自分自身生きていく上での勇気を貰ったようにも思います。
彼らが自由に伸びやかに生きられる社会は、きっと「健常者」とよばれる人にとっても生きやすい社会だと思います。
●大声で発声したり歌ったり、夢中になって体を動かし、意見を出し合ったり、一つの事が出来上がっていく凄さだったり、お菓子やお弁当を食べながら皆んなで過ごす休憩時間だったり。本当に充実した時間でした。
何時間も一緒に過ごすと、今まで知らなかったぷかぷかさんを知る事もできました。
子供が大好きなぷかぷかさん。暴走するぷかぷかさんに対して、それを止めようとするぷかぷかさん。娘が泣いていたら(原因は親の私)、「俺じゃないよ」「俺は泣かしてないよ」と心配するぷかぷかさん。「午後も頑張ろう」とそっと私に宣言してくれたぷかぷかさん。静かに出来ない娘に対して注意するぷかぷかさん。
「娘にとっていい体験になれば」と思い参加したのに、私が真剣になり夢中になり、また、知らなかったぷかぷかさんの側面を愛おしく感じたり。
本番の次の日、乗っていたバスの窓から、野菜をせっとと運ぶスタッフとぷかぷかさんを見つけ、「今日もこの街を耕してくれてるんだ」と、この日常の風景にもまた私は自然と笑顔になっていました。》
芝居の発表は「表現の市場」という表現活動を行う障害者グループの発表の舞台の中で行った。その舞台を見た人の感想
●さて、いよいよ「セロ弾きのゴーシュ」が始まった。すごい人数だったけど、どの人もこの瞬間を楽しみにしていたんだろうなという“気”が伝わる。何人かからは、「成功させたいの!」という想いも伝わる。「表現の市場」なのだから、この“伝わる”ということは重要だと思う。舞台に立っている人だけが楽しくて満足というのでは、ちょっと残念だ。表現するからには、やっぱり何か伝えるんだと思う。
ワークショップの事は私には知る由もないけれど、のびのびと舞台に出ているぷかぷかさんたちから、とても自由さを感じた。ピアノの方がこれまた楽しそうに弾いていて、それに合わせて歌うぷかぷかさんたちから、人生は楽しまなくちゃね!と言われたような気がした。
高崎さんが出てきた場面では、舞台の上のぷかぷかさんからも、客席にいるぷかぷかさんからも、熱いまなざしがあったように思う。みんながみんなといることが大好きで、ここに今日もみんなでいれて嬉しい!と高崎さんにメッセージを送っているようだった。
舞台の最後に高崎さんが真面目に「障がい者と社会」の話をした。その時に、「あ、そうだ、今日はそうゆう舞台を観に来たんだった」と私は思い出した。観ている最中、何か特別な特異なものを観ているような感覚は全然なかった。最初のソワソワした居心地の悪い感じは、もうどこにもなかった。本当に楽しい週末を私は過ごせたし、この舞台を観に来て良かったと思う。なにより、自分自身にまだまだ素直な息子が「あー今日は楽しかった!」と言ってその日は寝た。
それでも、その日の夜に思ったことは、どんな人のことも特別扱いしない社会にどうしてならないんだろうか、ということ。今日の会場は温かい空気があって、和やかで、笑顔がたくさんあって幸せに満ちていた。だけど、社会はどうだろう?ひとたび電車に乗れば、ちょっと障がいの子がいると、ジロリと怪訝に見る大人がいる。障がい児を引き連れているお母さんが暗い顔でその子の後ろに立っている。その現実と「表現の市場」の幸福感の距離がまだまだかなりあることに、悲しくなる。でも、それは社会にいる大人たちの想像力の乏しさが原因かもしれない。現に私だって、今回気づいたことや、知ったことが沢山あった。またこの「表現の市場」が開催されて、私みたいな人が、一人でも二人でも増えることを望みます。私にもまだまだ知らない彼らの魅力がたくさんあるんだと思う。相手を知りたいと思う本能に、障がいもフツーの人も関係ないんじゃないかと思う。
●『表現の市場』の企画者である高崎明さんがよく口にする「障がいのある人達とは一緒に生きていった方がいい」というフレーズが浮かんできて、身体に浸みてくる。
そう、「浸みてくる」・・・このゆっくり温まるぬくもり感が実にいいのだ。
高崎さんの言葉は、昨年の津久井やまゆり園殺傷事件の容疑者の「障害者はいないほうがいい」に対応した彼独特の言い回しなのだが、それを言葉だけではなく、こんな風に実際に実感できる場を創りだしているところが彼の凄いところ。
ボクなんかは「優生思想はけしからん!」「自分の中の差別・加害者性に気づくべきだ!」とすぐにとんがった言葉を口にして、空回りばかりしてる。情けない限りなのだ。
そんな反省も込めて、ぷかぷか村の仲間たちの劇を見ていると、劇場全体が心地よい熱気に包まれているのに気づく。
●『なんて自由なんだろう』『なんだなんだ、この衝撃的なものは…』
これは率直な感想です。
『障害のある人たちと一緒に過ごしていったほうがいい』高崎さんの言葉。
私も幼少期から障害のある子と共に育ってきたこともあり、心ではわかっていたはずだったけれど、改めて高崎さんから言葉で聞いたとき、目が覚めた感覚でした。
心から楽しんでるぷかぷかさんたちのありのままの姿、輝いてい る目、自然と支え合う心、とにかくそこにいる仲間が力を合わせるときに発揮する強さに感動‼
あらじんの太鼓演奏の力強さにいきなり引き込まれ、葉っぱオールスターズのラップに涙し、デフ・パペットシアター・ひとみの人形劇に感動し、レクイエムを聴きながら、忘れてはいけない相模原事件、これから先同じような事件が繰り返し起こらないようにと心から願い、そして犠牲者の方への思いを改めて胸に。
ぷかぷかさんたち主演のセロ弾きのゴーシュには、笑いもあり、感動もあり、私たち健常者では出せない何とも言えない間や表現。ここまで味が出せるのは彼等しかいない。私も娘もその魅力にすっかり引き込まれていました。
終演した時の娘の言葉『障害のある人が本当に演奏をしたり、演劇をしていたの?誰がどんな障害を持っているかもわからなかったよ。本当に楽しかった、凄かった、カッコよかった!!』娘たちもぷかぷかさん達の魅力に自然と気付かされていました。
障害のある人は何もできないという勝手な人間社会の思い込み、そういう大人が増えれば当然、子どもたちは、当たり前にそう思い込んでしまう。
『自分らしく生きていこう』と言ってもらえてる気がして、帰り道、心が軽くなる感じでした。
表現の市場の映像
http://pukapuka-pan.hatenablog.com/entry/2017/02/03/162939
4,他の組織ではなく当団体がプロジェクトを行う意義及びその貢献について
「ぷかぷか」は代表の高崎が養護学校の教員時代に障がいのある子ども達に惚れ込み、退職後もずっと一緒に生きていきたいと始めたもの。だから、日々「障がいのある人たちとは一緒に生きていった方がいいよ」というメッセージを様々な方法で発信している。一緒に生きていった方が私たちの社会が豊かになるからだ。
今回のプロジェクトは、そのメッセージが芝居という目に見える形で表現される。障がいのある人たちがいると社会が豊かになるということが実感できるような芝居を舞台にあげ、たくさんの人たちと共有できる。「ぷかぷか」が日々発信しているメッセージが、形を変えてより広く広がっていくことに今回のプロジェクトを行う意義がある。
これは先に述べた相模原事件への「ぷかぷか」のメッセージでもあり、病んだ社会を回復する試みでもある。そういう意味で大きな社会貢献といっていい。
街の中に作った「ぷかぷか」のお店は、街の人たちと障がいのある人たちとのたくさんの出会いを作ってきた。素敵な出会いのおかげで、たくさんの「ぷかぷかのファン」を作り、地域社会を豊かにしてきた。
今回のプロジェクトは、単なるお店のお客さんという関係にとどまらず、もっと踏み込んで一緒に新しいものを創り出すクリエイティブな関係を障がいのある人たちと切り結ぶもの。「あれができない、これができない」とマイナス評価ばかりの障がいのある人たちとクリエイティブな関係を作ること自体画期的なことだ。
福祉事業所がこういった形で障がいのある人たちと新しいものを創り出そうという試みは、福祉の新しい分野、歴史を切り開くものとして、とても意義あるものだと思う。今回のプロジェクトはそれを実行するものだ。
福祉の新しい歴史を切り開くという意味で、今回のプロジェクトは大きな社会貢献をしている。
5.プロジェクトの発展性(方向性及び規模の拡大、助成期間終了後も継続可能なものか)
演劇ワークショップの参加者は毎回かなり入れ替わる。参加者が変われば、ワークショップの場の雰囲気も毎回変わってくる。毎期ちがうテーマの芝居をやるので、進行役も鍛えられ、最終的にできあがる芝居もレベルがアップしていく。
マスコミもかなり注目してくれるようになり、第三期目の発表会は読売新聞、神奈川新聞が大きく報道してくれた。NHKも相模原障害者殺傷事件の取り組みで紹介してくれた。
6月には慶應義塾大学日吉キャンパスで行われる日本演劇学会全国大会で「障害者との演劇活動は何を目指すのか」というタイトルで発表を行う。
第一期と第三期の演劇ワークショップについては記録映画もでき、プロモーションビデオとあわせてあちこちで自主上映を展開していく予定。
助成金に頼らず、みんなでワークショップの試みを支える仕組みを構築する予定。よこはま夢ファンド(市民活動推進基金)と連携し、寄附金控除など税の優遇措置が受けられる仕組みの中で幅広く寄付を集める。また神奈川県独自の認定NPOの申請も行い、寄付を集めやすい環境を整える。
サービスグラントのプロボノ支援の審査が通り、企業との連携を目指す支援を受けることになった。これがうまくいけば企業からの支援が受けられる。
★ツジさんの妹とさんが早稲田大学の大学院で演劇を研究しているそうで、お母さんから今度演劇学会で「ぷかぷか」が紹介されるそうですが、ご存じですか?という問合せがありました。ワークショップ進行役の花崎さんが「障害者との演劇活動は何を目指すのか」というタイトルで研究発表するみたいです。