ぷかぷかの本の原稿、ようやく書き上げ、今出版社に送ったところです。400字詰め原稿用紙約260枚です。この6年間でぷかぷかが作ってきた物語です。
前書きにはこんなことを書きました。
「ぷかぷか」は私が養護学校の教員をやっているときに、障がいのある子ども達に惚れ込んでしまい、「こんなすてきな人たちのそばに一緒にいたい、いっしょに生きていきたい」と思ったことが最初のきっかけです。養護学校を定年退職後、彼らと一緒に働く「ぷかぷか」を立ち上げて6年がたちました。
お店を運営しながら見えてきたのは、社会に合わせた彼らではなく、彼らのありのままの姿にこそ魅力があり、その魅力は仕事を進めていく上でのチカラになり、社会を変えていくチカラになる、ということです。
彼らの魅力は人を癒やし、「ぷかぷかが好き!」というファンを生み出しました。ファンが増えれば売り上げが増えます。つまり彼らの魅力は収益を生むチカラがあるのです。ぷかぷかのファンになった人は、ぷかぷかで働く障がいのある人たちに出会った人たちです。ですから、ぷかぷかのファンを増やすことは、街を耕すことになります。彼らの魅力は、社会を変えていく、社会を豊かにするチカラがあるのです。
そういったことが見えてくると、彼らはもう何かをやってあげるとか、支援するとかの対象ではありません。一緒に働く仲間であり、一緒に街を耕し、お互いが住みやすい社会を作っていく仲間です。
ぷかぷかは「障がいのある人たちのチカラ(魅力)で収益を上げ、同時に社会的課題(彼らの生きにくさ、社会における疎外)を解決する、社会を豊かにする」という今までにない新しい発想、カタチでのソーシャルビジネス、福祉事業をやっているのです。
いろんな人がいること、そのことを「いいね」ってみんなで思えること、それが地域の豊かさだと思います。いろんな人が、お互い気持ちよく暮らせる豊かな社会を、障がいのある人たちが作り出しているのです。彼らのために始めた事業が、彼ら自身が主人公になって回り始めているのです。
そしてこの本は、その記録です。
目次はこんな感じです。
第1章 ぷかぷかを立ち上げる
1−1 「養護学校でもいい」から福祉の世界へ
1−2 障がいのある人たちに惚れた
1−2−1 ゲハハ ガハハ
1−2−2 カンカンカン あたりぃ!
1−2−3 社長の方が何倍もいい顔
1−3 みんなでパン屋やろうぜ
1−4 夢の始まりーNPO法人の申請書を書く
1−5 とにかくやりたいからやるーそれが福祉起業家
1−6 あこ天然酵母で勝負する
1−7 毎日パンを作ることで社会貢献
1−8 650万円ゲット
1−9 お店を霧ヶ丘に
1−10 2000万円を超える見積書にじわっと冷や汗
第2章 パン屋を始める
2−1 商売のことを何も知らずに始めた「素人パン屋」
2−2 近隣から苦情の電話が入り、半年間は針のむしろ
2−3 この1枚の写真を撮るために4年間がんばってきた
2−4 事業は続けることが大事
2−5 プロから見れば、もう見てられない
2−6 ようやくみんなと山に
第3章 彼らがありのままの自分でいられること
3−1 気色悪くて接客マニュアルはやめた
3−2 ひとときの幸せをいただきました
3−3 ウィルスに感染したお客さんの話
3−4 見当違いの努力
3−5 彼らに社会を合わせる
第4章 ぷかぷか三軒長屋
4−1 ぷかぷか三軒長屋は街に必要な場所
4−2 カフェベーカリーぷかぷか
4−3 おひさまの台所
4−4 アート屋わんど
第5章 福祉事業所でもビジネスでやった方が得!
5−1 知的障がいの人には単純作業が向いている?
5−2 一大決心で飛び込んだぷかぷか
5−3 まっすぐ前を向いて生きています
5−4 人生への配慮が抜け落ちているんじゃないか
5−5 仕事の持つ意味が、ぐ〜んと豊かに
5−6 ビジネスの面白さでルンルン気分
5−7 一石六鳥のソーシャルビジネス
第6章 たくさんのつながりを作る
6−1 パン教室
6ー2 ぷかぷかしんぶん
6−3 ありがとうカード
6−4 子ども達にオペラをプレゼント
第7章 あたらしい文化を作る
7−1 地域の人たちと一緒に芝居作り
7−2 「悪意」のない人たちが「悪意」のある芝居を作る
ー第一期みんなでワークショップ「森は生きている」ぷかぷか版
7−3 心の底から楽しいって思えた舞台
7−4 げんさん、タケちゃん、じゅんちゃん
7−5 まーさんの物語
7−6 なぜ彼らといる時に、ゆるっと心地よいのか、わかった気がします。
ー第一期みんなでワークショップの記録映画を見た人たちの感想
7−7 「むっつり大王」は私たちの中に
ー第二期みんなでワークショップ「みんなの〈生きる〉」
7−8 何かができないことが新しいものを生み出した。
ー第三期みんなでワークショップ「セロ弾きのゴーシュ」ぷかぷか版
第8章 ヨッシーワールド全開「田貫湖電鉄物語」
第9章 思いつきのひとことが思ってもみない広がりを生んだ話
9−1 区民まつりでブースのデザイン
9−2 大きな絵地図を作ることに
9−3 大きな絵地図が区役所のロビーに
9−4 区長、副区長が名刺に似顔絵
9−5 人権研修会講師に「ぷかぷかさん」
第10章 「ぷかぷか」が創り出した物語
10−1 ほっとけないと思ったのは、人としてそこに立ってしまったから
10−2 赤ちゃんはお母さんを救ったのかも
10−3 ぷかぷかは明日もがんばりません
10−4 みんなでパンをかついで
10−5 迷惑を掛け合いながら人は一緒に生きているのだと思います。
10−6 「障害者はいた方がいい」という映像を作ります。
10−7 希望があるからまた書ける
10−8 その子の手が柔らかくて、あたたかいんですね
10−9 名前のない死は、悲しいです
10-10 楽しむ時間が倍に
10-12 この寝っぷりがいいよな
10-13 ぷかぷかとおんなじだよ
10-14 街を耕す
10-15 この子が大きくなったとき、こんなふうに笑顔で見つめ合える社会を
作ってくれるんだろうなと思います。
10-16 どうして彼らといっしょだとこんなに楽しいんだろうね。
10-17 しんごっちのメッセージ
10-18 人は誰でもそのままで生きていていい
10-19 未来は今よりもっと素敵に
第11章 福祉事業所を立ち上げる
11−1 事業計画
11−2 手続き
11−3 自分の生き方が問われる
11-4 根拠なんか別にない。ただ、やれると思う気持ちがあるだけだ。
だいたいこんな感じです。ぷかぷかは現在進行中なので、まだまだまとめきれない感じですが、とりあえずの中間報告、といった感じです。
あとがきにはこんなことを書きました。
ソーシャルデザインの本に「未来はもっと素敵だと思いますか?」あるいは「自分の手で、未来をもっと素敵にできると思いますか?」という問いがありました。その問いにYESと答え、ひたすら突き進んできたのが「ぷかぷか」です。
障がいのある人たちの人柄に惚れ込み、彼らといっしょに生きていきたいと思い、彼らといっしょに働く場「ぷかぷか」を街の中に作りました。
街の中に作ることでたくさんの人たちが彼らと素敵な出会いをしました。お互いの心がぽっとあたたかくなるような出会い。こんな出会いを見ていると、「未来はもっと素敵だ」と本当に思えるようになりました。
そう思える物語をこの6年間でたくさん創ってきました。この本はそのいわば中間報告です。物語はまだまだ続きます。たくさんの人が「未来はもっと素敵だ」と思えるような物語です。
年内に手直しをし、年明けには本ができるのかな、と思っていますが、ま、そううまくはいかないだろうと思っています。また報告します。