近所の方から素敵な話を伺いました。
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【ツジさんと鶴さんのおはなし】
先日、こどもたちとぷかぷかパン屋さんに行きました。
『あ!今日はツジさんいたよ!』
こどもたちがお店をのぞいて、うれしそうに走っていきました。
こどもたちも私も、ツジさんが外販でいらっしゃらないときは、とてもがっかりするのです。
お店に飛び込んでいったこどもたちはまず、パンを選ぶ前に、ツジさんを囲んでニコニコ。
ツジさんは、いつものように
『マダガスカル クロアチア ・・・』
国名を言いながら、てきぱきと働かれていました。
店内には、他にお客様がいらして、
コーヒーを飲んでおられました。
『スペイン マドリード ・・・』
ツジさんの国名のおしゃべりの中、先ほどのコーヒーのお客様と私は、目が何度もあいます。
その表情から 私がツジさんのおしゃべりに驚いているか、すこし心配されているのかな、と思いました。
そのとき、コーヒーのお客さまが
スタッフの鶴さんに声をかけられました
『(・・・)訓練した方がいいんじゃない?』
全部は聞こえてこなかったので不確かなのですが、
『訓練』
という言葉は、まっすぐ聞こえてきて、
おもいっきり反応してしまい、
思わず、
『訓練してほしくないです!わたしたち、ツジさんが大好きなんです。会いに来ているんです。訓練・・・してほしくない。』
と、口をはさんでいました。
久しぶりに聞いた『訓練』という言葉に、ちょっとカチンときたのです。
そうしたら、
スタッフの鶴さんは、
何も動じずに、こうおっしゃったのです。
『ツジさんにおしゃべりをやめて。と言うのは、ツジさんに息を止めて、ということと、同じことなんです。』
『訓練は無理です。』
『それに、ツジさんの声は、とてもいい声だから、α波というのかしらね、聞いていて、とても気持ちがいいんですよ』
『お客様からクレームもありませんよ』
コーヒーのお客さまが、お話されることに鶴さんは、丁寧に応えています。
そのあと、コーヒーのお客さまは、ツジさんにもお話をされていました。
ツジさんは、『はい!』と元気いっぱいの返事。
『はい!』(そのとおりです!)
(もう、その話は、おわりです!)
そんな風に聞こえました。
コーヒーのお客さまはもう、何も言われませんでした。
そのやりとりの様子を、こどもたちは、じっと見つめ、じっと聞いていました。
レジに行くと、
ツジさんはいつもよりも はりきった感じで
『760円です!』
トレーの上のパンの代金をあっという間に計算して教えてくれました。
そして、ツジさんは
すこし、笑ったお顔で、言われました。
『チキルーム✨』
『はい、魅惑のチキルームですよね。』
ツジさんが歌う魅惑のチキルーム。
大好きです。
ツジさんがぷかぷかマルシェで披露された歌声。
ツジさんの生きている世界は、
『魅惑のチキルーム』みたいに
陽気で楽しくて、
みんながしあわせな世界なんだなあって
感動したことを思い出しました。
胸がいっぱいになりながら、
こどもたちとぷかぷかパン屋さんを出て
空を見上げました。
ぷかぷかのご近所に暮らせていることに
誇りを感じました。
そして、胸がいっぱいになるほどの幸せを感じました。
人は誰でもそのままで生きていてよくて
誰からも「訓練」されることなんて必要なくて
きもちよく生きているその姿は、
みんなの幸せにつながっている
鶴さんの言葉
ツジさん、とっても嬉しかっただろうなあ
コーヒーのお客さまもいいパスをしてくれて、すごいタイミングにお店にいることができて
ほんとうにラッキーだなあって思います
ぷかぷかさん
ここに居てくださることが
私たちの幸せです
ツジさんが歌う
魅惑のチキルームが、いま、わたしの頭の中を流れています。
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社会はこうやって、少しずつ少しずつ変わっていくのだろうと思います。
近所の方と、スタッフと、ツジさんの対応がすばらしいですね。
ぷかぷかが街の中にあることで、どんなことが起こるのか、そのことが社会の中でどんな意味を持つのかがよく見えます。
「障がいのある人たちは社会に適合できるように訓練した方がいい」という考えが、社会の中で圧倒的な力を持つひとつの「文化」だとすれば、近所の方とスタッフ、ツジさんの対応から見えてくるのは、「訓練なんかしなくていい」という、もう一つの新しい「文化」だと思います。「文化」といっていいほどの、人の新しい生き方の提案。
「人は誰でもそのままで生きていていい」という文化。
「それぞれがきもちよく生きているその姿は、みんなの幸せにつながっている」という文化。
ぷかぷかは今、それをこの街で創り出しているのだと思います。